11話
僕の名前は伊波修也。一年前より以前の記憶がなぜか無い。
ただフラフラと歩いていると・・・・・
銀杏並木は黄色い絨毯を敷き詰め、その上を空を仰いだ人達の列が右から左、左から右へと移り変わって行く。
「あの…………ハンカチ落ちましたよ。」
紅葉のような赤色のハンカチを拾い上げ、女性に話しかけると驚いた顔をしてから、目に涙を浮かべて、
「ありがとう。」
そう言って僕に微笑んだ。この微笑みの既視感、根拠はないがこの女性が自分にとって大切な人だという直感、心配そうに僕を覗き込む顔の懐かしさ。
僕は頭痛に襲われ、その場で座り込んだ。そして、脳内に広がる今まで忘れていたことの数々。
そして最後まで忘れなかった大切な人が僕の名前を呼んでそばに来た。僕を襲った頭痛が消えていき、僕は顔をあげて紗英の顔を見て
「生まれ変わった僕は、紗英のことを愛しても良いですか?」
彼女は目に涙を溢れるくらいに浮かべて、口を手で押さえて、そして笑顔で
「はい!」と言った。
そして、僕らは笑顔で抱き合った。
Need lost memory.
(忘れなければいけない。)
But , I wasn't able to forget to have loved you.
(でも、私はあなたを忘れることができなかった。)
終