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5話

 

「どこに行ったのよあのバカは!」


 医務室に様子を見に戻ったマチルダであったがベッドはもぬけの殻でそこに寝ていたはずの男の姿は見えなかった


「申し訳ありませんマチルダ王女、少し目を離したすきに」


「全くなんでお父様はあんな奴を・・・」



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「あの暴力女のせいでひどい目にあった」


 カズマは隠れ家に潜んでいた。彼は王城の中で使われていない部屋を緊急逃亡用にいくつかもっているのだ


 ぐぅ~~~


「腹減ったな・・・」


 今日のランチはビーフシチューのはずだ。今日はまだ何も食べていない


(けどなー)


 あの性悪女が待ち伏せしている気がする



 ・・・・・・・・・・・・


「かかれ!」


「うわっ!なんだ!?」


 5人の騎士が食堂にやってきたカズマに飛び掛かり取り押さえた


「やっぱりきたわねカズマ、さあ行くわよ」


 騎士たちは彼を担ぎ上げたままマチルダの後ろを進んだ



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ドカッ


「痛っ!」


 床に降ろされたカズマの目の前には王、王妃、マチルダ王女とそしてカズマが苦手にしている人物がいた


「うわ!なんでリランラもいるんだよ」


 リランラ・ハルノコモレビは王の相談役でありこの国有数の魔法の使い手でもある。


 しかし一日のほとんど自分の部屋か実験室と称する所にいる魔女。王と昔からの仲であるようだが詳細は分からない。魔術に強い興味を持ち極めようとしているようだ。


 実験室にはホルマリン漬けにされた様々な生物の死体が並び怪しげな品々が溢れている。

 カズマはその部屋を見た瞬間にリランラから必要以上に距離を取っている。


 当然のごとく特殊スキル所持者でもある。その能力「未来予知」は文字通り未来を見通すことができるため、国の発展へと大きく貢献している国の超重要人物である


「カズマ、君に言い忘れてた事があってね」


(嫌な予感がする・・・怪しい)


 王がニコニコと笑みを絶やさずに話すが、こんなに強制的に連れてこられたのも、これほど静けさと緊張感が伝わってくる王と王妃を見たことも初めてだった


「そんなに大変なことでは無いんだが・・・マチルダの洗礼の儀に君も一緒に行ってもらおうかと思ってね」


「嫌だ!僕はいかないぞ」


 カズマは叫ぶように拒否した


 洗礼の儀とはジパング国の伝統ある王族の儀式で成人に達した者は古代聖堂に行き身を清める行為を言う


「古代聖堂なんて馬車で3日はかかるじゃないか冗談じゃない。なんで僕がそんな所に行かなくちゃならないんだ!美味い飯と風呂とベッドでスケジュールは一杯です」


「まあまあカズマ君、古代聖堂はとってもいい所なんだから。滝は凄く綺麗だし途中にあるお花畑にも綺麗なお花が沢山咲いているのよ」


 王妃リアンナはカズマが拒否するのを分かっていたかのように古代聖堂の魅力をカズマに語った


(滝にお花畑、全然興味ない・・・・)


「いいからついて来なさい。命令よこれは!」


「うるさい性悪!そんなところ一人で行ってこい」


 マチルダが怒鳴りつけたが彼にはまったく届かなかった


「カズマは洗礼の儀について知ってるのかい?」


「本で読みました。古代聖堂と呼ばれてはいるけどいつの時代に何の目的で作られたのか不明な建物。そこには枯れない滝があって王族が成人を迎えた年にその滝で滝行をするただの儀式。ただし古代聖堂の道中ではかなりの割合で他国の暗殺団に襲撃されている」


 部屋に重苦しい空気が漂った。他国にとってこの儀式は要人を殺害する格好のチャンスなのだ。王族の年齢は公表されていて成人となる年は誰にでもわかるので道中を見張っていれば大げさな護衛に囲まれた王族の存在はすぐに見つけることが出来るのだ


「その通りだけど一つだけ違うところがある。ただの儀式じゃあない。神から特殊スキルを与えられる可能性があるんだ」


「・・・・・・・・・・・」


「全員が与えられるわけじゃない。僕もリアンナも与えられなかった」


「それじゃあ」


「迷信じゃない」


「先々代の王はそこで特殊スキルを与えられたと記録が残っているんだそしてその時、古代聖堂に同行したのは落とし子様」


「・・・・・・・・」


「本当はカズマには同行してもらわなくてもいいと思っていたんだけどリアンナは一緒に行ったほうがいいと言ってるんだ」


「え!お母さんが決めたの?」


「そうなの。なんかぜーーーったい一緒に行ってもらったほうがいいなと思って」


 王妃リアンナ。初級の回復魔法をいくつか使えるだけで魔法にも武にも全く才が無く特殊スキルも持っていないが人の心を癒す人間性と抜群の勘の鋭さを持っている。その正確さは「未来予知」の使い手であるリランラも舌を巻く


「でも過去に何人もの王族が殺されてるじゃないですか」


 王クロードはその武で、王妃リアンナはその勘で難を逃れているが事実命を落としている者も少なくないのだ。カズマは有り余る時間で王城にある書物を読むことを日課にしているのでそれを知っていたが落とし子に関する書物は読むことを認められていなかったので、先ほどの王の発言は初めて聞く情報だった


「だからこそリランラに来てもらった」


「この洗礼の儀でマチルダ王女が死ぬという未来は出ていない」


 リランラの眼が怪しく光りカズマの背筋は寒くなった。すべてを見通すその眼は魔女そのものだと思った


「ほらね大丈夫でしょカズマ君」


「安心しなさいカズマ。リランラの未来予知は外れない」


(なんか嘘くさいな。それなら何故こんなにも緊張感があるんだ?)


「襲われないとは言ってないよなリランラ?」


「ギクッ!」


「それに前に僕の未来は予知できないって言ってたよな?だとすれば僕が死なないという未来も出てないはずだよなリランラ?」


「ギクギクッ!!」


(やっぱりだ襲われることは確定してるんだ)


「嫌だ!!絶対行かないぞ僕は!!!」


 カズマは逃げ出した

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