3話
「助けてーーーーーー!!!!」
城中に響き渡ったその声に王国騎士団のエレムは王女の傍を離れた己を呪った。国中が祝賀ムードであり王城の中という事で仮眠をとろうとしていた王女を一人で行かせてしまったのだ
(王女様どうかご無事で)
「あそこだ!」
パーティーが行われているホールからほど近い部屋から途轍もない戦闘音と煙が漏れていた
部屋に飛び込んだエレムが見たものは逃げ惑うオークを追いかけまわす王女の姿だった。先ほどまでの気品あふれる姿とは一変して目を吊り上げ素足となり右手に炎を左手に氷を纏い顔を真っ赤に高揚させている
「どうやって忍び込みやがった!この豚野郎!!」
その言葉は気品の欠片もなくスラム街を思い起こさせた
「ぎゃー助けてー!」
よく見たらオークではなくカズマだ。いつも食って寝ているだけの役立たずなのに王直属の配下という意味不明の男だ
「痛っ!」
「くたばりやがれ!豚野郎!!!」
椅子に足を取られ倒れたカズマに左右の魔法を食らわせようとしたその時、懐かしいあの声が届いた
「止めなさいマチルダ。それはオークじゃなく人間だよ」
あっけにとられていた人々が振り返るとそこにはこの国の人間が敬愛してやまない王がいた
史上最高の王との呼び声が高い賢人にして武人でもあるクロード王である
「えっ!お父様」
その炎と氷が喉元に到達する直前で止まり王女は我に返った
「お前が留学している時に私直属の配下になったカズマだ。人間だよ少しだけオークに似ているがね」
周りの者たちは笑ったり脱力したりで場の雰囲気は一気に和んだ。
マチルダは我に返り今の自分の姿が王女としての振る舞いに相応しくないものであることを思い出した
「そうだったのですね。私勘違いしてしまいましたわゴメンナサイカズマさん」
王女マチルダは顔を取り繕い気品ある王女として倒れているカズマへ手を差し出した
「うるせーブス!!このブス!!!ブス!!!」
「・・・・・・・・誰がブスだ!!やっぱりぶっ殺してやる!!!」
「ぎゃー助けてー」
王女は再び鬼の形相となりカズマを追いかけた