2話
塵一つない豪奢なホールにその人物はいた
ライジング国第一王女マチルダ
純白のドレスに身を包んだ王女に人々は釘付けになっていた。
彼女は子供だった時の姿とは一変して美しい女性となっていた。肩まである光沢のある金髪が美しく、意思の強そうな瞳がその場の全ての人々を魅了した
広いホールの中には華やかなドレスに身を包んだ女性が大勢いたがそれを圧倒しその場にいるすべての人間が彼女に目を奪われていた
「皆様、今日は私の為に・・・」
人々はそんな王女の声を一言も聞き逃すまいと耳を傾けた
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「美味っ美味っ美味っ、このチキン最高だな皮がパリパリで肉汁が美味い。さすがに気合入ってるな」
人々が王女に見とれている隙をついて料理をかっぱらい近くの部屋でむさぼり食っているカズマの姿がそこにはあった
彼はいつも食堂か自分の部屋にいることが多いのだが、腹が減って我慢できずに煌びやかな社交場へと決死の突入をしたのだった
「うぉ!この魚のフライにかかってるソース美味っ、今度おっさんに作ってもらおう」
彼の名前は長谷川一馬。この国ではカズマと名乗っている元日本人の異世界転移者だ。餅を喉に詰まらせて死亡した彼は異世界に転生した。
無一文だった彼は賞金に目がくらんで出場した国王主催の武道大会に出場し王の眼に止まったのだ
「働かずに美味い飯が食いたい」
彼は王の配下となるに伴ってそう嘆願した。王はそれを聞き腹が捩れるほど笑った末に了承し彼は王直属の配下となった
普通の者ならば騎士への道や金や物を王へと嘆願するなかで、彼の願いは王にとってあまりにも馬鹿げたものであり、素直すぎるものであり、そしてうらやましいと感じるものだった
その結果彼は目が覚めると食堂に出かけ腹が膨れると寝るという生活を送っていた。王は国民から圧倒的な支持を受けるカリスマ性をもった人物であったため、カズマのそんな生活にも王には深い考えがあるはずと、不満をいうものは極わずかだった
その結果カズマの体は膨れ上がりまるでオークのようだと囁かれるようになってしまった
しかし彼にとってはそんなことよりも美味い飯を食う事と地球の料理を食堂の料理人に作ってもらう事にしか興味が無かった
「美味っこのリンゴのパイ美味っ酸味と甘みが最高だこれ」
「誰です!そこにいるのは!」
「え?」
「オーク!!!!」
「は?」