11、主人公?
「アルテミア様、起きてください」
「うん~~ふわぁ。あ、ユリスおはよう」
「おはようございます。男の子が起きました」
ユリスが指を指すほうに眼を向けてみると、確かに起きて、ユリスが渡したであろう
水筒の中身を飲みながら、こちらの様子をうかがっている。
さらに周りを見回して見ると、だいぶ日が暮れてきていることもわかる。どうやら
結構な時間寝ていたようだ。
「さてと、まずは自己紹介をしましょう。いつまでも男の子呼びはめんどくさいわ。
アルテミアよ。よろしく、この子はスラ子よ」
「ユリスと申します。見ての通り、メイドをやっております」
「あなたの、お名前は?」
「え、えと、研磨 研です。助けてくれて、ありがとう」
「研磨君ね、珍しい名前ね」
「そうですね、この辺では見ない名前の付け方です。黒髪に黒目というのも珍しいです」
(研磨ですって?! 明らかに日本人じゃない。転生っていう様子じゃないわね。
おそらく転移かしら?)
「黒髪に黒目って珍しいんですか?」
「あまりこの辺では見ませんね。私の故郷にはちらほらいましたけど。
それに、大昔にいた悪の魔王を倒した勇者も黒髪に黒目だったと聞きます」
(とりあえず、色々聞いてみましょう。話はそれからね・・・魔王と勇者ているのね)
「研磨君、なんであんな森の中に倒れていたの?」
「え・・・と、実は俺、この世界の人間じゃないんです」
「ふ~~ん」
「えぇぇぇぇぇぇーーー」
「あれ? アルテミアさんあまり驚いていませんね」
「あら、これでも驚いて居るわよ」
「そうですか・・」
(なんか落ち込んでるし、もうちょっと驚いてあげたほうがよかったかな?)
「まあそんなことはいいです」
「立ち直りが早いですね」
「それで? これからどうするの? 帰る家がないんでしょ?」
「近くの町の宿にでも、泊まろうかと・・・」
「お金は? あったとしても、その年で一人じゃ借りられるところなんてないわよ」
「うっ・・・」
「仕方ないわね。家で、学園に入るまでお手伝いとして、雇ってあげるわ」
「アルテミア様いいんですか? 勝手に決めて。陛下にご相談しなくていいんですか?」
「大丈夫でしょ。なんだかんだ私には甘いし、放ってはおけないでしょ」
「ユリス様、おそらく大丈夫だと思います。悪意は感じられません」
「ほら、スラ子もこう言ってるわよ」
「そうですか・・・」
「というわけで、お家に帰るとしますか」
「ありがとうございます。お世話になります」
≪王都城門前≫
「アルテミア様、お帰りなさいませ。初めての森はいかがでしたか?」
「そうね、そんなに深いところには行かなかったから。でも浅い所にいる
魔物は弱かったわ。楽勝ね」
(この人は、門番をしている兵士を束ねている、門番長のモンバーさんよ。
灰色の髪に茶色の目を持つすらりとした人ね。私が出掛けると知って、わざわざ
出てきてくれたみたい)
「そうですか、それは良かった。おや? その後ろに連れている男の子は? 今朝は
いませんでしたよね?」
「森で倒れているところを拾ったの。聞いてみたところ、記憶があやふやみたいでね。
名前と、このあたりに住んでいたのではないことぐらいしか、わからなかったの」
「そうですか。ボク、アルテミア様から聞かれたかもしれないけど、カードは持っているか?」
「カードですか?・・・待ってません」
「そういうことだから、発行してあげてほしいの」
「わかりました。ボク、名前は?」
「研磨 研です」
「よしわかった。発行には時間がかかるから・・・シュバン城に届ければいいよな」
「ええ、お願いします」
「え? 城?」
「さーー行くわよ」
「アルテミアさん、カードって何ですか?」
「? カード? そうか知らないのよね。カードはね、身分証明書みたいなものよ。
大体生まれた日に合わせて造られるの。これがないと基本、大きな町や都市に入れない。
であってるよね」
あっているとは思うが、一応ユリスに聞いてみる。
「ええ、大体あっています。カードにもいろいろ種類がある、というのも付け加えれば
完璧でしょう。カードの種類については、またにしましょう。そろそろ着きます」
「そうだ。アルテミアさんの家ってどこにあるの?」
「ついたわ。ここよ」
ドドーン
「えっと、もしかして、このお城が、アルテミアさんの家?」
「そうよ」
「ええええええええええええええ」
というわけで執務室だよー。
「お父様、ただいま」
「お帰り、テミア。おや? その後ろの子はだれだい?」
「かくかく しかじか」
「まるまる、さんかく・・・なるほど、つまり森で拾った研磨君を、行くところがないから
連れてきた、と。そして雇ってほしい、と」
「お願いします。頑張って働きます」
「ふむ。ほかならぬテミアの頼みだ。私も悪意は感じられんしな、よかろう。
学園に行くまで、雇ってやろう」
「ありがとうございます。頑張って働きます!!」
「よかったわね」
「アルテミアさんもありがとうございます。あ、王女様なんですよね、
様付けしたほうがいいですか?」
「いいわそのままで。堅苦しいのはあまり好きじゃないの。
そうだ。お祝に、鑑定してあげるわ」
【鑑定】
~~~~~~
名前;研磨 研
種族;人間
歳;4歳
レベル;2
HP;2
才能値;50
筋力;2
魔力;300
精神力;40
≪固有能力》
研磨
主人公補正
<称号>
転移者
主人公
【研磨】
ありとあらゆるものを、磨く能力
【主人公補正】
言語理解 幸運 など
~~~~~
(主人公補正って、私だったら絶対主人公なんてなりたくないわね)
「こんなもんね」
「ほう。まるで、昔話に出てくる勇者のようだな」
「ひとまず、執事長を呼ぼう」
チリン~
そう言いながら、手元にあるハンドベルを鳴らす。
するとどこからともなく、ホントに何もないところから、執事服を着こなした
ベールと同じぐらいの歳の男が現れる。
「セルト、あれほど城内で空間魔法を使うなと言ったじゃないか」
「いち早く陛下のもとに駆けつけるためです」
「まあいい。今日から雇うことになった、研磨だ。案内してやってくれ。テミアはどうする?」
「私は、お風呂に入ってくるわ。覗かないでね」
「変なこと言ってないで、早く行きなさい」
「はーい。ユリス行くわよ」
(その後のことは詳しくは知らないわ。さ~て、お風呂、お風呂♪)
研磨君の視点のはなしも書く予定です、
少しあくかもしれませんが、気長にお待ちください




