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「マル暴じゃないんで」
森は機械のように繰り返した。
「森くんがそんな強情なら、いいよぉ。「美香ちゃん」に聞くから」
端野の口から天敵の名前が出た途端、森の眉根がはじめて目にみえて寄せられた。防衛省官僚の妹の名前は、警察庁官僚の森にとって呪いの呪文だった。
同時に、ここまでの情報を端野に与えたのが妹ではないことを知って、森は少し意外に感じた。端野が森に情報をねだりに来る時は、妹と天秤にかけて値切るときに限られているものだと考えていたからだ。
値切りスキルではない能力を発揮し出した端野を見て、森は軽蔑した眼差しに少しの光を忍ばせて不意目がちに視線を寄越した。
「何が必要なんです?」