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永倉探偵事務所  作者:
27/43

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「双二郎、明日、富士山に行こう」

「うん……は?」

 半分眠りかけていたため、双二郎は一旦聞き流してしまった。

 眉をあげてのっそりと無理やり瞼を持ち上げてみると、JJは旅行の日程でも組んでいるように、楽しげな様子である。

 双二郎は今が瞼を下ろす機だとばかりに目を閉じた。

「………いってらっしゃい」

「僕、日本じゃ運転できないし」

「車壊れてるから、どのみち無理じゃね……?」

 彼の頓珍漢はいつものことなので、双二郎は能動的な聞き流し体制に入ることに決めこんだ。

 JJはスマホを握ったまま柔らかな声で言った。

「きーちゃんの車、借りなよ」

「兄貴の車がいくらすると思ってるんだ。傷の一つで、俺は破産するわ。きっと、新宿か上野からハイウェイバスが出てるだろ? 一人で行けよ。俺は仕事中」

 めんどくさい気持ちを込めて双二郎が応えたが、JJは食い下がった。

「富士山の周り、少しまわりたいし。世界遺産になって、きれいになったんだって」

「台風が日本を出てってからにしろ」

「台風だから、いいんだけど」

 普段にない食い下がり方に、双二郎は片眉をあげた。

「……なんで?」

「ん?」

「なんで急に富士山?」

「世界遺産登録されたから」

「それ、だいぶ前だろ」

「富士山麓は、世界遺産登録のために、だいぶ様子が変わったんだって」

「なんで台風?」

「台風が来たのは僕のせいじゃないよ」

「行くと、なにかあるわけ?」

「なにもないと思うよ?」

「観光?」

「観光するの? いいけど、仕事はちゃんとしたほうがいいよ?」

 JJが真剣な顔で諭してきた。

 何だかわからないが負けた気がして、双二郎は沈黙した。

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