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「……永倉はどうなってるわけ?」
北大路はついでといった感じで聞いた。
「生きてんの?」
「昨日の夕方まではね」
「……佐和子さんは?」
端野はあいまいな表情のまま、視界の端で壁にかかっている時計を見た。正確かどうか不明ではあるが、短針は零時を回っており、端野の体感と近い時を指していた。
双二郎の兄の自宅に四人を送り出したはいいものの、状況が分からないこの段階で迎えに行くべきかどうか端野は迷っていた。難しい状況の中心は間違いなく永倉であり、しかし、こちらから連絡を取るあてがないのである。
「こんだけトラブル抱えて、金にもならないことまだやる気なわけ?」
端野はフンと鼻を鳴らすと、あいまいな笑みを浮かべた。
「……昨日の夕方までは」
「東京湾に沈んでもいいけど、俺の名刺返してからね?」
他人事のように北大路が言った。