表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永倉探偵事務所  作者:
22/43

22

「おいおいー、東京湾に沈んでもいいけど、その前に俺の名刺破棄してくれよな……って、あー! おい、座るなよ! 原稿!」

 北大路は手を振り上げて声を上げた。はずみで眼鏡が額から落ちた。

 端野はあわてて立ち上がった。

「おわ!?」

「ケツ! ケツ! 原稿くっついてる!」

 端野はひょこひょこと振り返ると、濡れた尻にくっついたA4用紙を引っぺがした。

 北大路がそれを乱暴にひったくる。それから、手にしていた封筒で端野の尻を叩いた。

「まったく勘弁しろよ! 金持ってきたと思ったら、運持ってっちまうのがお前の常なんだから!」

「そんなこと言ったってさぁ」

 端野は身をすくめながらも悪びれなく言った。

「発行部数八百部に、運も未来もないっしょ」

「疫病神が何を言う」

「『十三年目! 防衛省使途不明金問題に迫る!』とか、何番煎じよ。誰が買うの?」

「お前、話聞くの? 聞かないの?」

 北大路は眼鏡を拾い上げると、再度、封筒で端野の尻を叩いた。脱力した様相で椅子に腰を下ろす。

「聞く聞くぅ」

 端野は万札を振りながら言った。

「そのために、諭吉さんにご出張願ったんですから」

 端野は北大路の机の上に、紙幣をまとめて乗せた。

 北大路は枚数を慎重に数えると、それから改めて一枚一枚透かしを確認した。

「北ちゃんそこまでする?」

「お前が諭吉と友達なわけない」

「本物でしょ?」

「……みたいだが、」

 含みを持たせる言い方をして、北大路はしぶしぶ紙幣を胸ポケットにねじ入れた。

 それから、探し当てた封筒を開け、端野に乱暴に手渡した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ