65話 マリーは楽園を作る(前編)
短めです。みんなのリアクション回
皆がいつまでも「ありがたやー」と拝み続けるので、私はぷんぷん怒って止めさせる。
エルフが珍しいからお祈りするなんてナンセンスだよね!
「そんなことより、ほら見てよ。ついに出来たんだ」
私はマジルさん一家の元へ駆け寄ると、儀式で生み出したアイテムをかざした。
完成した新アイテムの正体は、指揮棒サイズの魔法の杖だ。
持ち手の部分はユグドラシルの葉と同じ緑色。太さは包丁と同じぐらいかな。試しにローズも握ってたけど、手になじむ柄らしいよ。
緑の持ち手より先、茶色の木製部分はとっても面白い。なんとエルフの耳の形をしているんだ。遠目から見ると木製のナイフを構えているように見えるが、近寄ると三角に尖った可愛い耳長デザインにほっこりする。まるで手からエルフ耳が生えているみたいで、とってもキュートなんだ。
これぞ聖樹の加護を受けた『ユグドラシル装備シリーズ』の一つ。
攻略本が私に教えてくれた面白アイテムだ。
【名 称】
ユグドラシルの聖杖
【概 要】
ユグドラシルの加護を持つ聖なる杖。装備した魔法使いに様々な恩恵を与える。
魔法攻撃力UP・属性効果UP・命中率UP・持続時間延長・最大MP増加・消費MP減少・所得経験値UP・詠唱速度上昇・魔力操作の補助・etc
杖に宿る加護の数やステータス上昇率は、術者の魔力レベルに依存する。
又、使用を続けて杖のレベルが上がると、様々なオマケ機能が利用可能。
ユグドラシルの聖杖を見たみんなは、期待通りのリアクションをしてくれた。
「マジか、マジでか!? こ、こいつはやべえ……!?」
マジルさんはブッシャーとお漏らし大放出。うん、目標達成だね!
「んんんっ、これやばい! 確実に赤色」
美少女のお漏らしも見事に超危険判定。エルフのオムツが全てを消し去っているが、ズボンの中は大洪水だ。
「「こりゃ、とんでもねえシロモノだ!」」
これはシールの兄二人と姉の反応。ラシータ達も間違いなく漏らしてるね。
親一人、息子二人、娘二人。合計五人が私を囲んで垂れ流し。
立てたフラグを見事に回収。
マリーベルはお漏らしに包囲されてるよ!
サリーちゃんは両目から濁流の如く涙を流していた。
「うえええ、マリー様。わたくし、わたくしはぁぁぁー」
儀式にいたく感動したらしい。「マリー様は最高の主様ですわぁー」とサリーちゃんはひたすら号泣していたよ。とりあえず木苺を両手に構えるのはやめて!
「「うぉぉーん、感動じまじだ。マリー様!!」」
この暑苦しい号泣はラーズ村の皆ね。
いつの間にか、マリー様呼びがラーズ村で定着しているよ!?
そして全員で木苺を構えるのはやめい。
逆にゴプララとワットはとても静かだった。
ピタっと密着して、二人はいつまでも空を見上げていたんだ。仲良いね。
「とっても綺麗な光景だったゴプゥ」
「ああ、でも……ゴプララの方が綺麗だぜ?」
「ギャギャ、ワットくぅーん」
そして大量のハートマークが空へ飛んでいった。
私の儀式より、あっちの方が凄くね?
あ、ゴプリダが血を吐いて倒れたよ。
ピカピカと派手に光ったせいかな?
みんなはまだ夢の中にいるような顔をしているよ。
子供達は「凄い、凄い」と大はしゃぎ。早速、儀式ごっこに夢中である。
大人達はずっとポカーンと固まっていた。村長なんて燃え尽きたように真っ白になっているよ。ん? あれって心臓止まってない?
マゼットさんは周辺に飛び散った祝福の凄さがわかるみたい。瞳からツツーッと一筋の涙を流し、「ついに始まるのね。世界を変える彼女達の伝説が……」と天を見上げているから間違いないね。
「「ギャギャギャ、綺麗ゴプ! 凄いゴプ!」」
儀式の美しさに一番喜んでいたのは綺麗好きのゴプリン族だ。
「ギャギャ、安心して住める上に綺麗」
「この村は素晴らしいゴプ」
「ここはゴプリン族にとっての楽園ゴプ!」
そうして彼等は次々と感想を口にする。
私はそんなゴプリン族に向けて、ニヤリと口角を吊り上げた。
「まだまだ。本当の楽園はこれからだよ!」
そう、私の考えた『コーカン』はユグドラシルの聖杖のある機能を使うことで始まるのだ。
未だ夢見心地なみんなを連れて、私は目的地へと向かった。




