02話 マリーは一歩目で躓く
少し短めです。
これから私とローズの姉妹としての生活が始まる。
まずはお母さんに言われたいくつかのことを二人で行動に移すのだ。
その最初の一歩目のはずだったんだけど――
はっきりいうと状況は最悪だ。
朝食が終わった瞬間にローズがお腹を抱えて倒れたのだ。
大量の汗を掻いて顔色は青、赤、黄とみるみる変わっていくし、体温も異常に上がって湯気が出そうなぐらい熱いんだよ!
「ど、どうしよう。どうしよう!」
動揺する私の前でローズは胃から色々とリバースしてた。
まずいよ、まずいよ。美少女のゲロゲーロはユグドラシル的にはご褒美でも、状況的には緊急事態だよ!
「だから食べちゃ駄目って言ったのに。お姉ちゃんの食いしん坊!」
「いけると思ったの……。マリーも凄く美味しそうに食べてたから」
こうなった原因はローズのつまみ食いだ。
ヒト族の食べ物は全部瓦礫の下だったから、朝ごはんは私が常備してるおやつ袋の中身を食べることになったのだけれど――
そこで私は大森林で見つけた虹色のバナナを出したんだ。
この果物はローズも今まで知らなかったみたい。初めての食材に興味しんしんだったけど、さすがに何かわからないものを食べるのは危ないよ。
エルフとヒト族は胃袋の強度が違うもん。
だからローズには以前『コーカン』したことのある金のリンゴを渡したんだ。
私は普通に食べたよ?
ユグドラシルの知識によるとエルフの激ウマグルメだったからね。
でもそれがまずかった。
もちろん味的な意味じゃない。
私は忘れてたんだ。
お姉ちゃんは横領常習犯だって。
私があまりにも美味しそうに食べる姿に我慢できなくなってローズは七色のバナナを食べちゃったんだ。
人が余所見した一瞬の隙に一房を丸々だよ?
「完食への迷いが無さ過ぎてビックリだよ」
「お母さんと約束したの。絶対にお残しはしないって」
「ここでお母さんの名前を出すのはずるいよ!」
叱り辛いからやめて!
その後、午前中はずっと看病をしていたんだけど一向にローズが回復する気配は無かった。
徐々に弱っていくローズを見ていると、お母さんの時のことを思い出して私はわんわんと泣いてしまった。
「誰かお姉ちゃんを助けて」
ローズがいなくなってしまうなんて絶対に嫌だ。
大切な人の手を握りしめながら私は願った。
「お願いだから、お姉ちゃんを元気にする方法を教えて」
そんな私の必死の祈りに答えたのは『誰か』ではなく『攻略本』だった。
瓦礫に立てかけた神様のプレゼントがその瞬間、白く美しい輝きを放ったのだ。