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64話 マリーは儀式を行う



 必要な材料は全て集まり、ゴプリダも依頼した物を完成させた。

 私もローズと練習を行い、我等ペコロン姉妹は今夜ある儀式に望む。


 太陽はすでに沈み、本来ならば眠りにつくはずの時間。

 雲ひとつない澄んだ夜空に、まんまるな満月と数多の星達が爛々と輝く中、ニョーデル村の中央広場は昼以上の活気で賑わっていた。


「エルフの姉ちゃんのスッゲー魔法が見れるって本当?!」

「話によると、とんでもないことが起こるらしいぞ」

「マリーちゃん、ハァハァ。ちびっこエルフ、ハァハァ」

「ローズちゃん、ハァハァ。ロリ巨乳お姉ちゃん、ハァハァ」

「アナコンダから奪った変態の葉っぱが材料という噂は本当なのか?」

「変態の葉ではないユグドラシルの葉だ。そして我は勇者アナンダだ!」

「「ギャギャ、楽しみゴプ、楽しみゴプ!」」


 うん、何だか変なのも混じっているね。あとでエルフパンチだ。


 今回の儀式の件を聞きつけて、ラーズ村からも多数の見学者が来訪している。

 いや、むしろラーズ村の全員が来ているんじゃないかな?

 おかげで広場の人口密度がえらいことになってるよ!


 群がる人ごみを見つめながら、仕掛け人サリーちゃんは「くふふ」と笑っている。


「うちの村の方々はマリー様が関わっていると知れば、喜んでやってきますわ。それに今後の為にも(・・・・・・)宣伝は大事ですから、少々張り切らせて頂きました」


 宿がないこの地で一泊する為に、ラーズ村の全員がテントをご持参らしい。ラーズ村って本当にアグレッシブな村だよね。そんな村で育ったサリーちゃんは「ゴプリン族移住の資金にしますわ」と、しっかり見学料まで回収している商魂の逞しさ。


 将来を見据え、誰よりも先んじて行動する攻めが極意のラーズ魂。

 それを脈々と受け継ぐ幼女サリー。

 マリーベルはその背中に痺れたよ!








 ニョーデル村の住民とゴプリン族、そしてラーズ村の面々が集まる広場では、私とローズの登場を皆が待ち望んでいる。演出はもちろんサリーちゃんの案。 


 焦らしに焦らした後に、さあ私とローズの登場だ。

 姉妹で仲良く手を繋いで、私達はゆっくりと広場の中央へ歩を進めていく。


「お、来たぞ」

「うわぁ、綺麗……」

「マジかよ……か、可愛い……」


 私達が着ているのは、今回の為に用意したシルキー製の儀式服だ。

 天使の羽のような純白のインナーを着込み、上からヒラヒラとした法衣を重ね着している。厚手の法衣には葉の模様のような金の刺繍が刻まれ、月明かりが反射する姿は本物の神の使いのような神聖さに満ちているんだ。


 特にローズの美しさは思わず息を飲むほどだ。まるで絵本の聖女様みたいに綺麗な上に、ピタッと体に貼り付くような服だから、体のラインが浮き彫りになってエッロいんだぁ。


 ふへへ、マリーベルは何度もチラ見しちゃうよ!


「マスター、邪な気持ちは厳禁なのです。絶対に、ぜーったいに、お気をつけ下さいの」

「わかってるよ。しつこいなぁ」


 浮かれる私の頭を、シルキーがペチペチと叩く。

 手のひらサイズの妖精は、今日もお目付け役として私の頭の上に待機である。


「これから行う術は魔力のコントロールが要。なので細心の注意を払って下さいの。マスターのとんでも魔力でこの術が暴走する=この村の消滅と言っても過言ではないのです」

「大丈夫だよ。だってお姉ちゃんが一緒だもん」


 するとローズは優しく微笑み、繋いだ手のひらへ力を込める。


「お姉ちゃんがいれば絶対に成功するよ」

「私もマリーと一緒なら、何でも出来そうな気がするわ」

「へへっ、じゃあ一緒だね!」

「ふふっ、二人とも一緒ね」


 私とローズが中央に到達すると、ガヤガヤと騒がしい広場に静寂が訪れた。

 全員の視線が私達ペコロン姉妹に集中しているのを感じるよ。

 ぬふふ、みんなローズのエッロい姿に見とれてるな?


 人垣の最前列にはマジルさん一家の姿もあるね。


「ほぉー、なかなか似合ってるじゃねーか」

「ボス、ローズ。頑張って」


 マジルさんは感心した声を上げ、シールは拳を握って応援してくれた。

 私は小さく手を振って、二人に答えたんだ。


「見ててよ。お漏らしが止まらなくなるぐらい凄いやつを作ってみせるからさ!」


 同時にシールの兄と姉が、キュッと股間を押さえて震えてた。

 安心してよ。どれだけ漏らしてもエルフのオムツが守ってくれるさ。

 でも口には出さない。君らがオムツ履いているのは秘密だもんね。

 マリーベルは個人情報を守るよ!








 さあ、お膳立ては整った。

 大勢の人たちの視線が集まる中、私は攻略本で覚えた新魔法を発動する。


「いっくよー、『エルフの祭壇』」


 ぼふん!


 大量の煙が噴出し、その中から現れたのは赤に白の水玉模様の巨大なキノコ。

 ただし柄の部分は極端に太く短いため、傘が地面スレスレの位置にある不自然な物体だ。傘の形は半球形。だけど頭頂部は一口齧られたように平らになっていて、キノコというよりも巨大な舞台に近い。


 私は傘の平らな空間へ辿り着くと、皆の方へ振り返り、ババッと両手を天にかざした。


「それじゃあ、始めるよ!」


 同時に、にょきにょき! と短かったキノコの柄の部分が成長を始める。


 キノコの丈が伸び、私とローズの位置がどんどん高くなっていく不思議な光景に、村人は「信じられん……」と驚愕の声を漏らしていた。周囲の家より少し高い位置でキノコの成長が止まると、私は口をぽかーんと開ける皆の顔を見下した。


 ぬふふ、驚いてる驚いてる。

 でも本当に凄いのはこれからさ!


 攻略本の与えてくれた新たな魔法それは――




【魔法名】

 エルフチャンター


【種 別】

 種族魔法《エルフ族》


【概 要】

 魔道具『エルフの祭壇』を召喚し、特定の儀式を行うことで対象に『ユグドラシルの加護』を与える付与系魔法エンチャントマジック。加護を受けた土地や人物、道具は聖樹の加護により様々な効果を発揮する。

 付与される効果の内容は、唱える祝詞や奉納する魔力量により変化。また儀式の際、非常に難易度の高い魔力操作を要求するケースもあるので、くれぐれも注意すること。





 この巨大キノコ。もとい祭壇の中央にはエルフの練金壺を設置。

 アイテム作成魔法(ミミナガアルケミスト)の壺の中には、すでにとあるマジックアイテムの材料を投入済みだ。今から私とローズは魔力奉納の儀式を行い、このマジックアイテムに『ユグドラシルの加護』を授けるのさ。




 私はローズと一緒に祝詞を唱え、エルフの祭壇に魔力の奉納を開始する。この作業はパートごとに異なった量の魔力を注ぐ為、力の強弱がとっても難しいんだ。


 だからお目付け役のシルキーが私を誘導してくれている。


「ああ、多い! 多いのですマスター。むむ、次は少ない……。ひえっ、今度は多すぎですの。ぎえぇぇぇー、もう駄目なのです。この村はお終いですのぉぉぉー!!」


 うるさいなぁ。全然集中できないよ!

 そんな時、ローズが頼もしい笑みを浮かべた。


「大丈夫よ。シルキーさん、私に任せて」


 そしてローズは私の魔力に歩調を合わせ、ゆっくりと力を導いた。

 この感覚は、かつてナナカラーバナルでローズが死に掛けた時に、魔力を吸い出したときと同じだ。あの時とは逆。今度はローズが私の魔力を調整しているのだ。


 その鮮やかな手際に、シルキーも「素晴らしいですの」と感嘆のため息をつく。


「同じ属性を持つ者は、魔力操作の補助者として最適。確かにその通りなのですが、まさかマスターがそのことをご存知だとは思いませんでしたの」

「マゼットさんの授業で習ったんだ。ワットとゴプララもやってたよ」


 ははーんと感心すると、シルキーはやっと黙ってくれたよ。

 





 よし、私もようやく儀式に集中だ。


 私は黄金の魔力を身にまとい、戦闘モードへと突入する。

 魔力的に繋がっていたせいか、ローズも同じ光に覆われていたよ。

 一瞬、ピクンと身悶えていたけれど、すぐに「問題ないわ」とウインクをくれたんだ。


「さあ、いよいよ仕上げよ。マリー」

「うん。いっくよー。お姉ちゃん!」


 そして私達を中心に強烈な光が輝き、巨大な魔法陣が幾重も空へ刻まれる。

 何百という陣が天を覆い尽すと、まるで昼のような輝きが世界を包む。


「「いっけー!!」」


 二人で最後の魔力を奉納すると、舞台から黄金の柱が立ち上り、満月の輝く夜空へ一筋の閃光が突き刺さる。

 同時に天にうごめく魔法陣達が、花火のように次々と鮮やかに弾けていく。


 そして天へと轟いた巨大な黄金の魔力は――



 ゆらゆら、ゆらゆら。



 光の胞子となり、まるで雪のようにニョーデル村へと降り注いだ。


 ニョーデル村とゴプリン族。二つの集団が一つになることを、まるで祝福するような天からの贈り物。その神秘的な光景に、皆が息をすることを忘れて魅入っている。


 ちょっと魔力が多かったかな?


 余った魔力のせいで、この辺一帯にユグドラシルの加護が与えられたみたい。

 まあ、儀式自体は成功だから別にいいよね。むしろ作物が豊作になったり、健康で丈夫な体になったりと良い事尽くめのはずだ。


「はあ、オマケの祝福がこれだけ大規模になるなんて……。本当にマスターの魔力はとんでもありませんの……」


 なんかシルキーが頭を抱えているけど、些細なことだよね。

 そんなことより、お目当てのアイテムだ。


「やった。完成だ……!」


 私はエルフの錬金壺へ駆け寄ると、あるものを握り締めた。

 それは錬金壺でマジックアイテム化し、今の儀式でユグドラシルの加護を与えたもの。

 ニョーデル村とゴプリン族を繋ぐ、とある『コーカン』を行うキーアイテムが完成したのだ。


「出来たよ、みんなー!」


 私はすぐにキノコ舞台を元のサイズに戻した。

 早くマジルさん一家の反応も見たいしね! 


 そしてみんなの下へ駆け寄ったんだけど――



 何故か皆は座り込んで私を拝んでた。やめい!




















挿絵(By みてみん)

衣の妖精シルキー

イラスト提供:シーさん


ファンアートを頂きました。

素敵なイラストを本当にありがとうございます!

なんと、シーさんからファンアートを頂きました。

とってもかわいいシルキーの絵。

正直、作者の想像力を超えた素晴らしい出来なのです!


『11話マリーは魔法を覚える』にて掲載します(^W^)

しばらくは今話にも掲載します。一週間ぐらいかな?


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短編をupしました。暇つぶしにどうぞご覧下さい!
マリーベルと同じくギャグ要素多めの作品になります。
↓↓↓↓↓↓
異世界に転移した俺はカップめんで百万人を救う旅をする

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