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39話 マリーは外で遊ぶ(前編)



 私達が橋渡し役になってからいくつかわかったことがある。


 まずはイズディス村長がゴプリン族を見つけることができなかった理由だ。


 常に周囲を警戒しながら生きてきたゴプリン族は人の気配にかなり敏感なのだ。  

 少しでも異変があれば身を隠すのが癖になっているらしい。 


 例えば雑草がガサガサッと風に揺れたら――。 


「「ギャギャギャ、急いで隠れるゴプ!」」


 こんな感じですぐに強制かくれんぼ状態になるのだ。

 村長のことも頭ではわかっているけど、染み付いた習慣には逆らえないらしい。


 さらに厄介なのがゴプリン族の使う種族魔法である。


 それは長い石柱を召喚してその後ろに隠れると術者の姿が発見されにくくなるという代物だ。子供でも使える魔法で、今までゴプリン族が生き残ってきた要因でもある。


 試しにゴプリダが自慢げに魔法を実演してくれた。


「これが、外敵から身を隠す魔法。『かくれん棒』ゴプ」

「へー、ゴプリンではこの石柱のことをかくれん棒っていうのか」

「エルフでは何と呼ぶゴプ?」

「ユグドラシル的には電信柱だね」


 魔力差のせいか私には効かないみたいだ。

 電柱の後ろで頭かくして尻隠さず状態のゴプリンがいっぱいいるようにしか見えない。


 代わりにローズ達はいきなりゴプリン達がいなくなったから驚いているみたいだ。

 ばっちり認識できなくなっている。 


 そしてなるほど……

 私の疑問もこれで解消したよ。


「最近たまにゴプララが電柱の影からワットを見てたけど、あれは敵から隠れてたんだね」

「ギャギャ!? そ、そ、そ、その話、詳しく教えるゴプ!!」


 父親ゴプリダは何故か激しく動揺し始めた。

 理由はわからないが、電柱へ隠れるのを体験させてもらうのと『コーカン』に全部ゲロっておいたよ。


 ゴプリダは「だ、駄目ゴプ。娘はまだ誰にもやらないゴプ」とか呟いてたけど、なんでだろ?


 しかし この種族魔法『かくれん棒』は面白い性能だね。


「もしかしてゴプリン族の攻略本があれば、明日からかくれんぼで有利になれる……?」

「ギャギャ、さすがにそれが理由で殺されるのは勘弁して欲しいゴプ」


 ゴプリダがちょっぴり慌てた様子で私から距離を取った。


 おっと、危ない危ない。

 マリーベルは心がぐらついたよ!



 でもこんなに便利な魔法があったのに、何で最初に会った時は使わなかったんだろう。

 皆、私が現れても隠れようとせずにずっと固まっていたよね?


「……オマエはいい奴だが、もう少し自分の異常さも理解した方が良いゴプ」


 なんでもゴプリン族は私の魔力を前にして死を覚悟していたらしい。

 どうりでゴプリダと握手した瞬間に全員がホッとしていたわけだよ!


 くそう、どいつもこいつも絶世の美少女を捕まえて酷いもんだ。


 しかし不満がる私にゴプリダは呆れ顔を向けていた。


「だがゴプは聞いたぞ。オマエが魔力の威圧だけで村の獣人族を降伏させたと」


 ……お互い含んだものは水に流して仲直りしよっか。


 所詮、過去は過去。

 マリーベルは今を生きるよ!





 ゴプリダが「オマエ、お調子者ゴプ」と半眼で呟いているのは置いておいて、ゴプリン族についてわかったことはもう一つある。


 それは綺麗好き過ぎる(・・・)ということだ。


 ゴプリン族はエルフ族と同じで冷たいのが平気らしい。

 だから冬の川でも平気で飛び込む。


 少しでも泥が跳ねれば、次の瞬間に川へ洗濯に。


 狩りで獲物の返り血が付いたら、次の瞬間に川へ洗濯に。


 ご飯を食べている最中に肉汁が付着したら、次の瞬間に川へ洗濯に。


「「ギャギャ、汚い、汚い!!」」


 こんな感じで彼らは目を離したらいつの間にか川へダイブしている。


 何度かゴプリン族の子供たちと遊んでいるけれど、みんな汚れるのを嫌がって外で遊びたがらないのだ。だから家で石を磨くのがゴプリン族の遊びらしい。

 外に出ても川に飛び込むのを繰り返すだけだしね。


 でもこのままだと村との交流どころか、私が個人的に遊ぶのもままならないよ?


「さすがに石磨きには飽きてきたしなぁ」


 最初はどれだけピカピカに磨き上げるかを競うのも面白かったけれど、さすがに毎回それは飽きるよね。

 ぶっちゃけ私はもっと皆と色々な遊びをしたいのだ。


 すると娘のゴプララがおずおずと私に提案した。


「ゴプゥが一緒にマリーベル達と外に行くゴプゥ」

「ゴプララが?」

「そう、ゴプゥが率先して遊べばきっと皆もマリーベルと外に行きたくなるゴプゥ」


 族長の娘だから頑張ると彼女は両手で握りこぶしを作ってみせた。

 そんな彼女の考えに一番最初に同意したのはワットだ。


「いいんじゃないか? もし体が汚れたら俺たちですぐ拭いてやれば問題ないだろ」

「あ、ありがとうゴプゥ……」

「べ、別にお前のためじゃねーよ!? 親父の手伝いで仕方なくやってるだけだ」


 同じ長の子供同士わかりあう部分もあるみたいだ。


 二人は潤んだ瞳でずーっと見つめあっていたよ。仲良いね!


 なんだかゴプリダが「ギャギャ!?」と気が動転していたり、サリーちゃんが「ロマンスですわー!」とはしゃいでいたけどよくわからないや。


 でもゴプララの提案が有難いものなのはわかったよ!

 彼女の決意にローズ達も「私達もフォローするわ」と頷いてくれた。


 そして何より村との連絡役以前に、私は遊び人なのだ。


 だからレッツエンジョイ。

 マリーベルはお外で遊ぶよ!







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短編をupしました。暇つぶしにどうぞご覧下さい!
マリーベルと同じくギャグ要素多めの作品になります。
↓↓↓↓↓↓
異世界に転移した俺はカップめんで百万人を救う旅をする

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