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31話 マリーはもう一冊と会う(前編)



 ザクッザクッと複数の人間が雪を踏み進む音が、静かな冬の森で響く。

 大量の白い吐息を生みながら、大自然の中を進むのは四人の大人と五人の子供達だ。


 大人は元冒険者の四人組。毎度おなじみ交換所店長のマジルさんと、その奥さんであるヤンキー獣人のカシーナさん。そして残るは村長とその奥さんのマゼットさんだ。


 村長の名前はイズディスさん。彼のことを一言で表すならば『幸薄い』だ。

 栄養の足りないツクシみたいに背の高いヒョロガリおじさんである。私がエルフパンチをしたら風圧だけで隣村まで飛んでいきそうな印象だ。


「ははは、僕なんかじゃマリー君には敵わないよ……」


 そう笑いながら一挙動ごとにプルプル震えてる虚弱おじさんだが、彼こそがニョーデル村の最高権力者である。見た目と権力って決して一致するものじゃないんだね。


 そんなツッコミを考えていると巨乳奥様のマゼットさんが間のびした声を上げる。


「皆は勝手に動いたらだめよぉ」

「「はい、マゼット先生」」


 綺麗に返事をしたのは私とローズ、シールとサリーちゃんの女子四人。あとおまけでワットがいる。


「誰がおまけだ!」


 心の声にまで突っ込んでくる忙しいもやしである。





 今日の魔法の勉強は、森での課外授業である。

 テーマは『パーティを組んだ時の魔法使いの役割』だ。その為に私達子供組は元冒険者パーティに付いて行き、現場を見学することになった。発案者はマゼットさんね。


 ちょうど村の近くでとある魔物が目撃されていて、村長たちが討伐に行く予定だったらしい。

 その魔物自体は大した脅威ではないが放置すると数が増えて、春になると畑が荒らされるそうだ。つまりノリ的には簡単な害獣駆除ね。


 サリーちゃんは危ないから駄目かと思ったが、すんなり参加となった。

 意外なことに太鼓判を押したのは二人の奥様たちだ。


「あたし達のボスが一緒なら問題ないさ」

「そうねぇ、マリーちゃんと一緒なら大丈夫ね」


 ローズのお母さんといい、私って母親世代に妙に信頼されてるね。


 大役は任された。

 マリーベルは主婦層の支持が厚いよ!





 特にシールは学ぶことがいっぱいみたい。母親とマジルさんに色々と教えてもらいながら歩いている。魔物に気付かれにくい歩き方や周囲の探索のコツを伝授されているそうだ。移動の仕方ひとつでも注意すれば色々な発見があるらしい。冒険者って奥が深いね。


 そして意外なことにサリーちゃんもその話を真剣に聞いていた。


「うふふ、ねじ込みに行く為には必要なことですから」


 誰に何をねじ込みに行くつもりなのかな?

 どこか歪に光る瞳で笑顔を浮かべるサリーちゃんにちょっぴり背筋が凍ったよ。


 こりゃまずいと思って、シールに視線で助けを求める。すると彼女はコクンと強く頷いてサリーちゃんの元へ向かった。


 さすが私の右腕、頼りになる!


 ――と思ったらシールさんったら誇らしげな声でやってくれた。


「問題ない。世界中のどこだろうと私がサリーを連れて行く」

「さすがはお姉さま! 素敵ですわ」

「だから心置きなくねじ込めばいい」

「はい、お心遣いに感謝いたします!」


 へへへ、ケモミミさんったら思いっきり幼女の背中を押してるよね。


 感激に頬を赤く染めて「お姉さま、だーい好き!」と抱きつくサリーちゃん。シールも無表情なままだけど上機嫌に尻尾が揺れているよ。


 微笑ましい。微笑ましいけれど何か違うよね!


 でもローズはそれを眺めて「良かったわね、マリー」と微笑んでいるんだ。

 うーん、私がおかしいのかな? ま、いっか。深く考えるのはよそう。


 厄介な問題は先送り。

 マリーベルは問題を棚上げするよ!






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短編をupしました。暇つぶしにどうぞご覧下さい!
マリーベルと同じくギャグ要素多めの作品になります。
↓↓↓↓↓↓
異世界に転移した俺はカップめんで百万人を救う旅をする

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