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28話 マリーは魔法を学ぶ(中編)



 いよいよ始まった魔法の授業。これから私達が学ぶのは属性魔法というものだ。


 魔力には人それぞれ特定の性質が宿っていてそれを魔力属性と呼ぶ。属性魔法というのはその魔力属性が認可条件になっている魔法のことだ。


 種族魔法との違いをマゼットさんから教えてもらったけれど、簡単に説明するとこんな感じかな?



【種族魔法】

 こっちは認可条件に「種族」の項目があるため、他種族が使用することができない魔法。

 シルキー召喚のようにあまり属性に左右されない自由度の高い魔法であることが多いそうだ。エルフルウォーターなんかは水属性が無い者でも使えるしね。

 使える人口が限定的だけれど自由度が高い。それが種族魔法だ。



【属性魔法】

 認可条件に「魔力属性」の項目がある。属性は誰にでも存在するので全種族が習得可能な魔法だ。もちろん他にも魔力量や熟練度などの認可条件もあるのですぐに全部覚えられるってわけではないけどね。

 あと炎属性なら炎魔法、水属性なら水魔法と適応属性以外の習得は出来ないそうだ。要は炎属性の人は水を出したりできないってこと。

 使える人口は多いけれど自由度は低い。それが属性魔法である。



 属性魔法には基本属性というものがあり、その種類は五つ『炎、水、風、土、雷』だ。

 あとは複数持っていると組み合わせによって派生する特殊な属性があるらしい。ゴルゴベアードの石化属性や、ポイズモグラの毒属性が良い例である。


 他にも色々と魔法の種類はあるけれど今回はこんなところかな。




「それじゃあ、皆の属性を調べるわよー」


 一通り説明を終えるとマゼットさんは綺麗な水晶玉を取り出した。これに触れると水晶の色が変化して属性がわかるのだ。ちなみに赤なら『炎の器』、青なら『水の器』というように属性を表す時は器と呼ぶそうだ。


 まずはシールが挑戦だ。すると水晶は緑色と紫色を灯し、淡く光った。


「シールちゃんは『風と雷の器』の二属性持ちねー。魔力量は多い方ではないけれど、前衛タイプの冒険者としてなら十分よ。まだ子供だからこれから増えるでしょうしね」 


 マゼットさんの言葉にシールは嬉しそうに尻尾と耳を揺らした。


「複数属性は珍しい。パーティーにも誘われやすいから冒険者としても超お得!」


 シールは夢に真っ直ぐな女の子である。よいよ、可愛いね!

 その様子をみてワットが精一杯のアピールをねじ込んでくる。


「お、俺だって『土と水の器』で二つ持ちだぞ!」

「へー」

「少しぐらい興味持てよ!?」

「マゼットさんもそうなの?」

「いいえー、私は『炎の器』の一つだけよ。ワットはお父さんに似たのねー」


 そっか、村長さんが凄いのか……って、あれ? 村長さんってどんな顔だっけ?

 何度か会っているはずなのに全然記憶にないや。


「そうなんだよ……親父は影が薄いんだよな……」


 何故かワットが落ち込んでいた。起伏の激しいもやしである。





 ワットは放置して、次はローズの属性を調べる番だ。

 するとマゼットさんが水晶を食い入るように見つめて興奮し始めた。


「嘘……。凄い、凄いわー、ローズちゃん!」


 ローズの手にある水晶の色は金ピカだった。光もかなり強烈だ。


「ローズちゃんは全属性……黄金の『王の器』よ」


 王の器? なにそれ?


「全属性の持ち主のことを昔からそう呼ぶの。国でも数えるほどしかいない貴重な魔力の持ち主よー。しかも魔力量も上位貴族並。信じられない才能だわぁ。

 王都に行ったらきっと街で引っ張りだこよ。少なくとも貴族達からの婚姻の話がわんさか……いいえー、ローズちゃんは可愛いから王子様とも結婚できちゃうかもね」


 マゼットさんも王の器に出会ったのは初めてらしい。口調はのんびりしているが発する言葉は熱を帯び、大興奮で肩を揺らしていた。


 ヨイショに弱い女の子ローズも「王宮のお肉……」と笑顔で涎をたらしているよ。


 駄目だ駄目だ、うちのお姉ちゃんは誰にも渡さないぞ! 


「ねえ、シルキー。国ってどうやって滅ぼせばいいの?」

「本当に可能だから絶対に教えませんの」


 くそう、私マスターなのに。いいさ、王子だろうとエルフパンチで解決だ。


 王族は敵。マリーベルは心に深く刻んだよ!




 でもローズの魔力って大きいのか……私はそうは感じなかったけど。


「そういえばマリーは前に『ほんの僅か』って言ってたわね。育ったのかしら?」

「うーん、前と変わらないと思うよ……」


 そんな私達に対して、シルキーが大きくて長いため息をつく。


「違いますの。マスターはまだ幼いが故に判断基準が自分の魔力しかないのです」


 言葉の意味がわからず一同は首をかしげる。もちろん私もね。

 だからシルキーは咳払いをして言い直した。 


「皆さんはその辺の砂粒のサイズを正確に把握できますの?」


 その意味を理解できたマゼットさんだけが顔色を変えて固まっていた。


 ちなみに私も当然の如く全属性。おまけに水晶が爆発して、空の彼方にキラーンと飛んで行っちゃった……ごめんなさい! 


 この時点でマゼットさんはおったまげて気絶。そしてシルキーには「当然ですの」と何故か呆れられた。主従って何なのか一度話し合いたいよね。






 マゼットさんを再起動させて、いよいよ属性魔法の習得に挑戦である!

 目指すはそれぞれ自分の魔力に合った初級の魔法だ。薪に火をつける、コップに水を入れる、風で体を仰ぐなど生活の補助程度の威力だが非常に便利で認可条件も緩いらしい。 



【初級属性魔法の認可条件】

☆体内での魔力操作を習得後、神へ祈りを捧げる。



 魔力操作。つまり体内で魔力を動かせるようになればOK。ちなみに私はもうできる。


 まずはローズが挑戦中だ。んー、とプルプル体を震わせて頑張っているよ。

 おや? 何か掴んだみたい。ローズがカッと目を見開いた。


「お腹のあたりがグルグルするの……これがきっと魔力なのね!」


 グーグー。とローズのお腹から音がしている。

 いい顔で悟っているけど、ただの腹の虫だね。とりあえず私のおやつ袋の出番である。


 ローズは魔力を動かす感覚がいまいちわからないみたい。

 何かアドバイスできることは……そうだ!


「ナナカラーバナルの時のことを思い出せばいいんだよ。お姉ちゃんの体から私が魔力を吸い出したでしょ? あの時の感じだよ」

「なるほど……そっか。あの夜のことを思い出せば――」


 プシューと蒸気を上げ、ローズは真っ赤になって固まった。


「マリーは妹……マリーは妹……」


 なんだか急にぎこちない動きになっていたけれど、ローズは魔力の感覚が掴めたみたい。その後、みるみる上達していたよ。才能あるね。


 お姉ちゃんの役に立てて大満足。マリーベルは教育に目覚めたよ!




 シールは特に問題ないみたい。割とあっさり魔力を動かしてた。

 ローズみたいな魔力操作の経験があるのかな?


「んーん、勘」


 毎度のことながら獣人族って凄いね。私の出る幕じゃなかったよ。

 あとワットも魔力の操作はもう出来るみたい。


「それは少し前に習ったからな」


 ドヤ顔は気に食わないけど、やるじゃん。ただのもやしかと思ってた。


「じゃあコレは出来る?」


 私はその場でジャンプすると、空中で魔力を解放する。魔力を放出したのは足の裏だ。

 すると噴出した魔力の勢いで、私は空中でもう一段ジャンプすることが出来た。


「な、何だそれ?!」

「ふふふ、マリーベル流二段ジャンプの術だよ」


 高い場所にある木の実をまとめてもぎ取る為に、暇つぶしで考えた技である。

 それを見ていたマゼットさんはまた気絶。シルキーは「マスター、それも非常識ですの」とため息をついてた。本気出せば二段どころじゃないんだけど言わんとこ。


「それのやり方を教えてくれよ!」

「いいよ。『コーカン』ならね」

「くそっ、足下見やがって。絶対にお前の欲しがるもの持ってきてやるからな!」


 マジルさんの元で一日店長を経て、こういうやり取りも『コーカン』の楽しみの一つだと私は学んだのだ。さて、ワットは何を持って来るのかな?


 くふふ、マリーベルは悪い笑みが止まらないよ!








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短編をupしました。暇つぶしにどうぞご覧下さい!
マリーベルと同じくギャグ要素多めの作品になります。
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異世界に転移した俺はカップめんで百万人を救う旅をする

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