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03話 マリーは神に感謝する



 ローズとの交流が始まって三年の月日が流れた。


 毎日のように一緒にいるおかげで、言葉の『コーカン』もたくさん出来たんだ。

 最近では二人の遊びも充実し、交換した人形で女の子らしい遊びもすれば、川で魚を捕ったり、やんちゃに木登りをする日もあるよ。



 そうそう、こんなこともあった。

 頬を上気させたローズが、ワックワクな顔で私にお願いをしたんだ。


「ねえ、マリー。一度、大森林を冒険してみたいわ!」

「冒険するの? いいけど、ローズ足遅いじゃん」


 大森林はめちゃくちゃ広いからね。

 子供のローズの足では、とてもじゃないけど回りきれないよ。


「私がおんぶして走り回ろうか?」

「ふふふ、ちゃーんと準備してきたんだから」


 ジャーン! とローズは大きめの背負い籠を差し出した。


 その答えはつまり――

 私が籠を背負って、その中にローズをインするのだ!


「さあ、二人で冒険に行きましょう!」

「ローズ、凄い! ローズ、凄い!」


 天才か。これなら一緒にいろんな所へ行けるじゃん。


 しかも適当な木の上で暮らす私にとっては、大森林の全てが家。

 つまりこれは友達を初めて自宅に招くってことなのさ。

 

 どうしよう。嬉しすぎてニコニコが止まらないよ。

 ちゃんとローズの期待に応えるんだ。


 もちろん全速力でね。

 マリーベルは張り切るよ!




 そして私は籠にローズを入れて、大森林を大爆走。

 襲い来る魔物達(時々エルフ)をばったばったとなぎ倒し、伝家の宝刀エルフパンチで道中の安全も完璧なマリーベルツアーにローズも大喜び。


「ギャー死ぬぅ!!」「もう駄目ー!!」「お母さーんっ!!」「うっ、揺れが激しくて吐きそう……」ってノリノリで叫んでたよ。満足してくれてよかったね。


「――っうぷ。ご、ごめんマリー……もうダメぇ……」


 最後は甘酸っぱくて生ぬるい吐しゃ物がローズから出てきて、私はゲーロゲロを頭から引っかぶった。

 ユグドラシルの知識的にはご褒美らしいから、今回のツアー代として『コーカン』だね。


「ううう、エルフって……エルフって……」


 ローズも泣いて喜んでくれてるみたい。


 大成功だ。

 マリーベルは接待を覚えたよ!






 現在、ローズは十一歳。最初に出会った頃より随分と背も大きくなって、ちょっと早いけど成長期に入ったそうだ。なんと胸もばっちり膨らんできた。


 ローズは凄いんだよ。

 十一歳なのにおっぱいがもう掴めるほどあるの。


 ふっくらとしつつも張りを残したおっぱいは、布の服の上からでもわかるぐらいの存在感を持っていて、足場の悪い大森林を歩くと上下にたゆんたゆん揺れるんだ。


 好奇心に屈して思わず手を伸ばしたら、手が吸い付くような感触に病みつきになったよ。服の上からなのに!

 

 おまけにローズはとっても甘くて良いにおいがして……。


 こんな凄いのユグドラシルは教えてくれなかった。

 教えてくれなかったよ!


 聖樹の知識を凌駕するローズのおっぱいは、まさに神秘の存在だ。



「ローズ、凄い! ローズ、凄い!」



 そんな感じで一心不乱に揉みしだきまくったら、口利いてくれなくなった。


 しばらくは顔を合わせても真っ赤な顔して「マリーは女の子……マリーは友達……」って、ぶつぶつ呟いて目を逸らすの!


 ローズは相当おかんむりみたい。


 大失敗だ。

 マリーベルは自重を覚えたよ!





 ちなみに私は三歳差の八歳。彼女に比べたら些細かもしれないが一応、成長している。

 一番変わったのは髪だろうか。ローズがたまに手入れしてくれるので、全体が整えられて野生児ではなく『女の子』っぽい感じになった。手足もそれなりには伸びてきたよ。


 え? 胸?

 八歳に何を求めてんの! 




 ローズが住んでいるのは、大森林の入り口付近にある集落だ。

 家は数件しかなくて、村と呼ぶのも微妙なラインらしいけど一応、自給自足はなりたっているらしい。


 少々、ワケアリな人たちが集まっているため、地図にも乗ってないとのこと。

 ちなみに、ローズの場合は親が駆け落ちしてここに来たんだって。


 周りは大人ばっかりで、ローズも遊び相手がいなかったみたい。

 初めて会った日も、暇で暇でしょうがないから大森林にグルメを求めてやってきたらしい。


「グッジョブ、食い意地だよ!」


 あ、しまったつい声に出してたっぽい。

 目の前で、お弁当の骨付きお肉を頬張ってるローズがフリーズしちゃったよ。


 こりゃいかん、と思って大森林の奥地にあった金ぴかのリンゴを山のように積み上げてみた。


「そそそ、それってもしかしてオーゴンポロンゴ?! かつて偶然手に入った物が一度だけ国王様へ献上され、大絶賛を受けたという激レア果実だぁー!!」


 ピカピカで綺麗だから取ってきたんだけど、なんか予想以上に喜ばれたっぽい。


 とにかく食の探求者ローズの注意を見事に誘導したよ。


 大金星だ。

 マリーベルはご機嫌取りを覚えたよ!












 私は三年でかなりヒト族語を扱えるようになった。

 文脈もたどたどしさが抜けて、今やジェスチャー抜きでローズといっぱいおしゃべりできるのだ。

 言葉の雨あられで毎日がとってもハッピーだね。



「ねえ、マリー。なんだか最近、よくマリーの肘があたしの胸に当たるんだけど気のせいかな?」

「……。」

「黙り込まないで。お願いだから何か言って!」



 プクーっと頬を膨らませるローズも可愛いね!

 でもね、私も気になってたことがあるんだ。だから訊いちゃうことにするよ。


 気になることもお互いに『コーカン』だ。



「ねー、ローズ。いつも私のおやつ袋の減りが早いんだけどなんでか知ってる?」

「……。」

「会話のキャッチボールって難しいね!」


 ちなみに痴漢マリーは確信犯で、横領ローズは常習犯だ。


 今日も大切なことを学んだね。

 マリーベルはトークレベルが上がったよ!










 ローズはよく外の世界や大好きな物語の話を、私にしてくれるんだ。


 ユグドラシルの微妙な知識と大森林しか知らない私は、彼女が大げさに語るお話が、まるで夢の世界の出来事のようでいつも夢中で聞き入っているよ。


「お父さんが教えてくれたんだけど、マリーの使うエルフ語って元々は私達みんなの故郷の言葉かもしれないんだって」

「みんなの故郷? エルフ族も、ヒト族も、みんな一緒の場所なの?」

「うん、あそこのことよ!」


 私の頭を優しく撫でると、ローズは空を指差した。

 その先にはとある青い星が爛々と輝き、私達を見下ろしていた。



「あれは地球って言うのよ。私達はみーんなあそこから来たんだって」




 それは長寿であるエルフ族でさえ知ることの出来ない、遥か昔の物語であった。


 かつて地球という場所では、良い神様の元で全ての種族が平和に暮らす楽園があったそうだ。美味しいものを食べて、いっぱい遊んで、安心して眠ることができる夢の場所。


 けれどある日、突然現れた悪い神様に楽園は汚され、地球は人間が生きていけない世界になってしまった。その汚れを浄化するにはとてもとても長い時間が必要だったんだ。


 このままだと人間達が皆死んでしまう。


 人間達が大好きな良い神様は、地球から大地を切り取ってこのノアを作り、皆を助けてくれたんだ。


 だから私達が見上げる今の地球には陸が無い。

 森の緑も、土の茶色も見当たらない真っ青なのっぺらぼうなのだ。


 いつかこの地に神から選ばれた真なる王が現れ、長い時をかけて浄化された地球とノアの大地を再び一つに戻し、人類を故郷へと導いてくれる……というのがヒト族の寝物語として有名らしい。



「いつか皆で一緒に地球へ行けるといいわね」

「皆……? マリーも一緒に行っていいの?」

「どうして? 当たり前じゃない」


 ローズの『皆』に私は当然のように含まれている。それが嬉しくて私は彼女に抱きついた。


「……うん! 絶対にローズと一緒に行くよ」


 気持ちを抑えきれずに、自慢のエルフ耳がローズの胸の中でピコピコと激しく動き回る。

 この胸の心地良さは、決しておっぱいに顔を埋めたからではない。



「地球には一体どんな食材が私達を待っているのかなぁ」と明後日の空想にふけるのその顔を見上げながら、私は良い神様にローズと出会えたことを感謝した。












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短編をupしました。暇つぶしにどうぞご覧下さい!
マリーベルと同じくギャグ要素多めの作品になります。
↓↓↓↓↓↓
異世界に転移した俺はカップめんで百万人を救う旅をする

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