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18話 マリーは縛りプレイを始める



 隣のラーズ村までは歩いて半日かかる。おまけに季節は冬、道には雪も積もっている。今は吹雪が止み、空に晴れ間が広がっているが、足下は相変わらずの雪化粧だ。



 けど、それって私には関係ないよね? 



 どんな悪路であろうとも我が脚力が全てをねじ伏せる。いつでもどこでも目的地へと強行突破。通った後にはぺんぺん草すら残りません! それがマリーベルツアーです。




 なので私は大籠に子供二人を乗せて隣村へ激走中である。 


 一人は道案内をすると名乗り出たリッツ。妹のサリーは危ないので留守番だ。

 リッツにはシルキー製のフード付きマントを渡して防御面も完璧だ。


 もう一人は我が麗しの姫、ローズ。「私はマリーのお姉ちゃんで副店長だから」と主張を譲らなかった結果だ。まあ私も一緒に行く気まんまんだったけどね。

 もちろんローズもシルキーの服を着ている。私とお揃いのダッフルコートだ。



 今回、シールは留守番だ。マジルさんの許可が出なかったのもあるけれど――


「行っても邪魔にしかならない。だから……今はそれ以外を頑張る」


 本人からそう宣言された。ラーズ村は建物や食料が駄目になっているはずだから、ニョーデル村から救援物資を持って行くそうだ。シールはそちらを手伝うらしい。

 せっかく助かっても、村が滅茶苦茶のままだと皆凍え死んじゃうもんね。


「後から必ずボスとローズに追いつく」


 シールはそう言って、ユグドラシルの聖剣を握っていた。




 

 村長とマジルさんから許可を得た際、シルキーの存在が非常に大きかった。


「わっちの完全版・・・の服に守られていれば石化は無効化できますの」


 完全版とは私の魔力を大量に含んだ服、つまりローズ達が着ている服のことだ。


「そもそも石化というのは物理的に存在する毒ではなく、石化の属性を持った魔力が体内に侵入するから起こる現象なのです。その石化の魔力に負けると肉体は石の属性へと染まりますが、逆に勝る力を持つならば効果を弾き返すことができますの。 

 要は体内を舞台にした魔力と魔力のガチンコ勝負。ならば常軌を逸したマスターの魔力がその辺の熊公に負けるなんて絶対にあり得ませんの!」


 シルキーにあっさりと断言され、マジルさん達は戸惑いつつも首を縦に振ってくれた。 


「いいか、嬢ちゃん。絶対に無理すんなよ!」


 最後に何度も念を押されたけどさ……


 残念ながら、一日店長はもう木苺を食うことしか頭にないよ!






 

 現地にはあっという間に到着した。ペコロン茶三杯飲む程度の時間かな?

 あまりに早く到着したせいで、リッツは目玉が飛び出るぐらい驚いてたね。


 ラーズ村はニョーデル村より規模が一回り小さいようだ。家の数は五、六十件ほど。開拓されている敷地面積もそこそこみたい。何件かの家は粉々になっていたけれど、予想よりは壊れていないかな?

 これならニョーデル村から救援物資が届けば、すぐに元の生活へ戻れそうだ。



 いざ村に入ると、中では石にされた者達が溢れ返っていた。人間だけではなく家畜も石になっているみたい。村が完全に静寂に包まれていて、凄く不気味だね。


 しばらく進むと突然、リッツが私の籠から飛び出した。


「父ちゃん、母ちゃん!」


 そこにあったのは一組の男女の石像だ。彼の父親と母親らしい。石になってしまった両親に縋りつくと、リッツは大粒の涙をぽろぽろと零し続けていた。


 ローズも息を呑み、その光景を前に籠の淵をギュッと握っている。私もお母さんのことを思い出しちゃったよ……。



 あの時の私はお母さんに何もしてあげることが出来なかった。

 けど、今度は違う。私の力で皆を――


「大変、神様の像がっ!?」


 ローズの叫び声で、私は思考を中断する。

 声が示すのは、リッツのいる場所より更に奥の広場――


 その中心にあったのは粉々に砕けた神様の像だった。





 これはマジルさんが予想していた最悪のパターンの一つである。

 像は破壊されても元に戻る不思議な物だ。ただしそれには一日ほど時間が必要らしい。

 そして破壊されていた場合、復活するまで魔物除けの機能は失われているのだ。


 故にこうなる(・・・・)可能性が高くなる――


「うわぁ、最悪」


 その結果が家屋の影から現れて、私は心底嫌な声をあげた。

 そこにいたのは見上げるほど巨大な熊の魔物、ゴルゴベアードだ。

 



 状況を確認しよう。




 周囲は壊しちゃいけない石像だらけ、割れたら死んじゃうもんね。

 多分、家の中にも石化した人はいるから建物にも気を使わないと駄目だ。


 あれ? もしかしてここでエルフパンチしたら、いろいろ吹っ飛ぶ可能性大じゃない?


「ねー、お姉ちゃん……」

「その通りよ、マリー」


 ローズも神妙な顔で頷いてたよ。

 さすがマリーベル専用ご意見番。言葉にしなくても通じ合ってるね!


 つまり私は物を壊さないように気を配りながら戦わなきゃいけないのかぁー

 もちろん、このくっそ狭い村の中でね!


 ……………………


 …………


 ……


 参ったね。

 マリーベルは縛りプレイを始めるよ!







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短編をupしました。暇つぶしにどうぞご覧下さい!
マリーベルと同じくギャグ要素多めの作品になります。
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異世界に転移した俺はカップめんで百万人を救う旅をする

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