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01話 マリーは全裸で捨てられる

序盤は生まれたてのため口調が固いですが、徐々にはマリー節で話が進みます。


どうぞマリーとローズの冒険をお楽しみ下さい!










 豊富な魔力を持ち、自然を愛する森の民『エルフ族』


 彼等はとても温厚な性格で、世間からは『平和を愛する者』と呼ばれる崇高な種族である。



 だが、それは大きな間違いだ。



 その正体はただの『引きこもり』

 彼らは他者と関わることを極端に嫌い、大森林の奥地で細々と暮らしている。


 淡白な性格に質素な生活。

 変化を嫌い、足並みを揃えない者はとことん迫害する。そんな心根の狭い偏屈どもの集団。

 他種族の何倍もある寿命を、無駄にタラタラと浪費するだけのつまらない生き物。


 それがエルフ族の真の姿。

 そしてそんな彼らだったから――




 だから私は生まれた瞬間に捨てられた。




 エルフには親という概念がない。

 なぜならエルフの子供は、里にある世聖樹ユグドラシルから生まれるからだ。


 仕組みは簡単。

 愛し合いつがいとなった夫婦は子供を授かると、まず最初にその種を聖樹へと捧げる。

 すると聖樹ユグドラシルは何十年という時をかけ、エルフの種に人格と魔力を与えるのだ。


 そして完成した種はやがて実となり、新しいエルフの子として生れ落ちる。



 唯一、親と呼べるものは聖樹ユグドラシル。

 そこから生まれた同胞は皆が兄弟であり、家族である。


 人格と共に、ある程度の知識や言葉も聖樹から与えられているので、エルフには子育など存在しない。

 普通のエルフは、生まれると同時に大人たちの祝福を受け、そのまま里で引きこもり生活を始めるのだ。



 それが聖樹から与えられた正しい知識。

 だから私もそうなると思っていたのにー―


 現実で私を待っていたのは『祝福』ではなく、『呪い』だった。



「この化け物め!」



 生まれて最初に見たのは、何十人というエルフ達から向けられた暗く冷たい拒絶の瞳。


 原因は私に宿った異常なほどに強大な魔力だ。

 出る杭を叩き、足並みを揃えぬものを異端と呼ぶ。そんな彼らにとって、私の存在は視界に入れるのも耐えがたいものだったらしい。



 ユグドラシルの中で成長しているといっても、生まれた当時の見た目は二、三歳ぐらいのただのプニプニした幼女。


 おまけに一糸もまとわない全裸。


 彼らはそんな私を、生まれた五分後には里からほっぽり出した。



 場所は辺境の地にある大森林。

 ユグドラシルから与えられた私の名前はマリーベル。


 その人生は『エルフ』『幼女』『全裸』という、なかなか危険な状況から始まった。













 はい、というわけで全裸幼女エルフのマリーベルです!


 生まれた瞬間から自我があるエルフって凄いね。おかげで追い出されても、問題無くやっていけてるよ。


 というか、当時は捨てられてから即行でエルフの里に舞い戻ったのだ。



 なぜかって?

 もちろん嫌がらせに決まってるじゃん。

 生まれてすぐの女の子を全裸で放り出す輩へ、天罰を与えるのだ。



「エルフども許すまじ。マリーベルは復讐するよ!」



 そして辿り着いた里の入り口には、なんか敵が侵入できないように結界が張ってあった。

 薄い光の壁の向こうで、族長のおっさんが「ざまあ!」と高笑いしていたよ。


「はははっ、貴様のような化け物が侵入できぬよう、エルフの里には強固な結界が施してあ――」

「なんか見えない壁があるや……えいっ!」


 バリン。適当に殴ったら光の壁は簡単に砕け散った。


「ば、馬鹿な、エルフ族最高の結界がぁー!?」

「大げさな。ただちょっと光って眩しいだけじゃん」


「「そんなわけあるかぁー!!」」


 族長は大口を開けたまま気絶して、里のエルフ達は阿鼻叫喚としてたけど知ったこっちゃないよ。


「とりあえず服よこせ。ひゃっはー!」


 てなわけで、襲い掛かるエルフ達を片っ端から必殺エルフパンチ(命名)で瞬殺して、服を剥ぎ取って回ったのだ。


 私を追い出した族長のおっさんは、全裸で樹から吊るしたよ。 

「もうお嫁にいけない」って気持ち悪いこと言ってたけど正義は我にあり。



「あー、面白かった。マリーベルは満足したよ!」

「くそっ、化け物め。よくも……よくも……」

「先に私を仲間はずれにしたのはそっちじゃん」

「うるさい! 覚えていろ。いつか必ず貴様を討伐してやる」

「やれるもんならやってみなよ。じゃーねー」



 こうして生まれて一時間もしないうちに私は復讐を果たし、里中から大量の衣類を強奪して、再び外の世界へ飛び出したのだった。







 この件でわかったけど、私は他のエルフと比べて、かなり強いみたい。


 まず筋力は小指一本で大人10人を吹っ飛ばせるほどだった。

 試しに、大木にデコピンしてみたら……


 ドゴン! バキッ、ボキボキボキ!


 一撃でへし折れた上に、後ろにあった他の木も風圧だけでぶっ飛んでいった。

 あ、この大木は族長の家だったぽい。「わ、私の家がぁー!」って泣いてるや。ざまあだね!



 次に魔力も凄いみたい。ちょっと開放してみようか。

 ぶわっと私が抑えていた魔力を放出すると――

 

「「ひ、ひゃあ! ご、ご、ごめんなさい。許して下さい!」」


 途端に里中のエルフ達がガタガタと震え出して、いろいろと漏らすレベルだった。


 おまけに体はエルフ達に魔法や剣で攻撃されても、傷一つ付かない頑丈な仕様である。 

 すげえ私。見た目は幼女だけど中身はマジで凄まじい。



 おかげで、この大森林の中でも逞しく生活できたんだけどね。


 生活のコツは、襲ってくる魔物をとりあえずエルフパンチすること。それだけ。

 大自然は実力主義だからね!



 エルフの食糧事情は、ユグドラシルの知識にあったから食べるものは無問題。

 衣類も里中から奪って回ったので余裕でクリア。多少サイズが違っても縛ったり、破ったりすればいくらでも使える。

 住処はその日に気に入った木の上で寝れば事足りる。まさに完璧な衣食住。


 森を駆け回って魔物を小突いて遊んだり、時々エルフの里を襲撃して大人たちを全裸で樹から吊るしたり、と趣味も充実。



 んー、でも何か物足りない気がするんだ。

 ユグドラシルの知識でも、その原因はわからない。


「……なんだかつまんないなぁ」


 最近、そうやって一人でぼやくのが日課になりつつある。

 そんなジレンマを抱える野生児です。



 その虚しさを埋めるためにやりたい放題、奪いたい放題な生活を過ごすうちに五年の月日が流れ――


 ある日、私は彼女と運命の出会いを果たすのであった。








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短編をupしました。暇つぶしにどうぞご覧下さい!
マリーベルと同じくギャグ要素多めの作品になります。
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異世界に転移した俺はカップめんで百万人を救う旅をする

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