テンプレ展開に期待してみた
あのムカつく木の前から消失した俺は、その直後、何かに体を打ち付ける感覚が走り、産まれて初めての気絶を体験した。
暫くして気が付いた時、俺は夜の草原のような場所に居た。
デカい月が出ているけど雲がかかっており、遠くまで十分に見渡せる程の光量はなかった。
調べてみたが、妙に髪が伸びている以外は体に異常は無く、それどころか長年の腰痛や肩こりがなくなっており、若返った様な気分でいつに無く絶好調だ。
特に腰痛は、悩みの種であった為、あんなに上から目線だったあいつに感謝しそうなくらいだ。
テンションが上がった俺は、ここが何処かより、自由に動く自分の体に嬉しさが止まらず、広い草原を色々妄想しながら歩いていた。
小説好きな俺の妄想力は逞しく、
(テンプレやったらこうゆう時は1番最初に出会う人が良い人で、その人に付いて行けば取り敢えず安全な感じやな!そーいえば人間にするみたいな事言うてたし、生まれ変わり的な?でもそれやったら赤ちゃんからやんな?若返った?まぁなんでもいいわ!)
俺のテンションは妄想も手伝ってどんどん上がっていった。天井が見えない程に。
が、
俺は後悔した。あんな奴に一瞬でも感謝した事を。‥‥‥冷静になって考えてみれば、あんな物言いをする奴が俺にいい事などしてくれる訳がないのだ。次に会う事があるかは分からないが、会ったら絶対燃やしてやる!
などと心に決めて、
前から向かってくる化物に絶望する。
『ゴャルアァアアアアアァア』
化物と俺との距離は20m程か、見た目が明らかにおかしい。植物の蔓の様な魂で4mくらいあるんじゃないか?動物なのかも怪しいが、俺のゲーム知識なら1番近いのはF○のモ○ボルだろうか?そんな事を、考えながら少しずつ後退る。が、そいつの咆哮一つで身動きが取れなくなる。生存本能が警鐘を鳴らしまくる!とにかく逃げろと。だけど竦み上がって動けないのではない、物理的に動けないのだ。
(ヤバいヤバいヤバいヤバい‼︎‼︎‼︎)
俺は何も考えられなくなっていく。化物の口が目の前でゆっくり開く。歯はないので丸呑みされるのか?
そんなことを思いながら今まさに飲み込まれる瞬間!赤い閃光が疾り化物の上半身が消え失せた。
「大丈夫か⁈‼︎」
美しい銀髪の女性が俺の手をとり立たせてくれる
「私の名はアリス。危ない所だったね?」
アリスと名乗る女性はそう言って微笑んだ。
なんて事を妄想しながら、俺は頭から化物に飲み込まれていった。
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