始まりは突然に‥‥‥
なんとなく書いてみた初投稿作品です
あまり期待せずに生暖かく見守って頂けると幸いです
「はっ!」
立ち眩みの様な感覚、立っていられずその場にしゃがみ込んだ。
目を閉じて体と会話する。初めてではないが、何時まで経ってもこの感覚には慣れない。
25歳を過ぎた頃からだろうか、俺はもともと効率の悪い行動が嫌いで、家でもあまり体を動かさず、仕事でも必要最低限の行動しか取りたくない、そんなタイプだった。
だからと言う訳ではないが、運動不足気味で、ふと立ち上がった時に立ち眩みは頻繁にある事だった。
その度に自分で思う事だが、なら適度に運動でもすれば健康にもいいし、毎日仕事が終わったら、家でひたすら趣味の読書ばかりしていて、子供や嫁に「つまらない奴」なんて思われる事もなくなるのではないか?と。
確かに俺は効率重視で生きてきたつもりだ、だが30歳を過ぎてやっと自分の事を分かってきた。
30歳の誕生日、俺はなんの気まぐれか、自分の今までの人生を思い出して考える事にした。
結論から言えば、解った事は自分が最低の奴だって事だった‥
結局、俺は適当に理由をつけて自分のやりたい事しかやらない、ただの自己中だ。
効率を重視して行動するなら、学生の時にもっと勉強したはずだし、ましてや高校を中退するなどありえない。
ひとつの仕事が長く続かず、大抵は人間関係が嫌になって辞めてしまう。
家でもあまり子供の相手をせず、嫁に押し付けて自分は読書ばかり。
そんな自分の行動に、一々理由をつけて結局は何もしない、そんな奴に良くしてくれる人など居る訳もなく、友達等も殆どおらず、家でも冷遇されるのは当然の事だった。
まあ、だからといって俺は不幸な訳じゃない。
一応仕事はしているし、家庭も持てた。子供は今年から小学生になり、家での冷遇も自分の自己中を自覚してからは仕方ないと納得できた。
納得できたからこそ悲しくなった。
なにより、自分の今までの行動を改善しようと会話や、家事の手伝いを少ししただけで驚くほど感謝される。
会社でも後輩に少しアドバイスしたりしてただけで、いきなり役職が主任になった。
だが‥‥
今までの自分は本当に最低だったのだ。
本来であれば、会社の後輩を面倒見るのは当然だし、家事の手伝いなど当たり前だ。ましてや夫婦が会話するなど普通だ。
普通の事をして普通に感謝されるのはいい。だが、ここまで感謝されたり評価されるのは今までの自分が全て否定されている様で泣きそうになる。
もちろん、今までとのギャップがあってすごくいい事をしている様に見えるのは分かっている。
だけど別に俺自身は何も変わっていないのだ。
少し客観的に自分を見れる様に意識して、自分がすごしやすい環境作りをしようと思っただけなのだ。
家事を手伝うのも、後輩の面倒を見るのも全て自分の為!
‥‥‥結局俺はただの自己中なんだ
そう思えば思うほど、自分の居場所が見つからず、前よりも居心地の良いはずの環境に取り残されていく様な気がしていた。
幸いな事に、仕事場では基本的に1人で作業しており、部下や後輩が俺の元に何かを聞きに来る事も殆ど無くなり、今までは1番落ち着く場所だ。
別に〔仕事人間〕ってタイプではなかったが、どうやら同僚は俺の事を職人タイプの人間だと思っているらしく、上司もあまり俺に関わってくる事も無い。
今日もそんな職場で1人作業を行なっていた。
‥‥‥‥
‥‥
「‥そろそろ大丈夫かな。」
俺はゆっくり目を開ける。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥なんでやねん」
目の前には馬鹿でかい木が生えていた。