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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

アイソレーション2

作者: 孝之

どこかの薄汚れた、密室。電灯は今にも消えそうなほど、ちかちかしている。椅子に男が眠っている。男は目が覚めると、助けを求めた。「助けてくれ!」椅子に固定され身動きができない。周りを見ると禍々しい凶器が、男に向かって牙を向けている。それらに恐れ慄いていると、傍にあるテーブルに置いてある不気味なウサギの人形が不気味な言葉を告げ始めた。「やあ、ビリー。お前は今まで、ギャングの一員として様々な悪事を働いてきた。窃盗、麻薬密売、殺人、強姦・・・ 今日お前は、その凶器たちと戦えるか。右の注射器は、お前の目に突き刺さる仕組みになっているが、死ぬことはない。しかし左の拳銃は、お前の喉を貫き即死する。痛みを乗り越え、悪事から更生するか、或いは地獄で孤独を味わうか。3分やる。好きなほうを選べ。」人形が止まった。「クソ野郎!出てきやがれ!」ビリーは叫びまくるが、声は誰にも届かない。取りつけられた注射器を握って、自身の目に向けるが刺す事ができない。残り60秒。ビリーは拳銃を喉に突っ込み、打ち抜いた。血が壁に吹き飛ぶ。だがこれは新たな忌まわしい事件の始まりに過ぎなかった。場所は変わって、警察署。少し筋肉質な40代ほどの刑事が、いらいらしながら仕事をしていた。彼は、デビッド・コリンズという男。正義感が強いあまり、武器を持った犯人は即射殺するというダーティーハリーのような刑事だ。部下からは、「ダーティーデビッド」などと陰で言われている。彼は、殺人課をやめさせられ、デスクワークばかりにうんざりしていた。今日の仕事を終え、帰宅するといきなり電話が鳴った。くだらない押し売りだろうと思った彼は、電話に出て怒鳴った。「くだらん押し売りならいらんぞ!」しかし、電話の主は同僚のメアリー・ハリス刑事だった。「なんだ、お前か。押し売り業者かと思ったよ。何?事件!?すぐに向かう。」現場に着くと制服警官らが遺体の写真を撮影していた。ハリスも遺体を調べていた。遺体を見たコリンズが言う。「こいつ、俺が追ってたギャングの野郎だ。アホな奴だ。」「あなたのそういう言い方、どうにかならないの?被害者は、ビリー・ホーキンス。この大掛かりな装置の構造からして、敵対ギャングの仕業ではなさそうよ。」ハリスが遺体にライトを当てながら言う。コリンズは、ウサギの人形を手に取り推測する。「ラビットキラーだな・・・ハリス、これが証拠じゃねえか・・・」そう言ったコリンズの持った人形をハリスが取り上げ、「鑑識に回すわ」といって持っていった。彼女が去っていくのを見て、独り言を言う。「やっぱり、俺にはこういうのは合わないね。」 ある日の朝、平凡な普通の家で金髪の男がベッドに横たわっていた。彼は、ジェス・サザーランド。2年前、妻を亡くして以来、無気力な日々を送っていた。外科医の仕事も辞め、今は小さな会社で働いている。スーツに着替えた彼は、今日もいつものように洗面台の鏡に向かって独り言を言う。「さて、行ってくるか・・・」通勤カバンを持って出ようとすると、寝室から不審な音が聞こえた。恐る恐る近づき、カーテンを開けるといきなり何者かに襲われた。目が覚めると、廃墟のような場所にいた。しかし、ただの廃墟ではなく見覚えがあった。「ここは・・・私が働いていた病院?」周りを見回すと、他にも自分のように男女が倒れていた。すぐ近くにいた筋肉質な若者を起こすと彼はパニック状態だった。「どこだ?ここは!?あんたは誰だ!?」ジェスは必死に彼を落ち着かせる。「私はジェス・サザーランド。落ち着け!君の名は?」若者は少し怯えた目をして言った。「フランクだ・・・」フランクは、名乗ると叫び始めた。「助けてくれ!」その声で他の男女が目を覚ました。大柄な黒人の男ケネス、派手な格好をした女エリン、スーツ姿の中年の男マリック、背の高いアジア系男性キム、小柄な少女ローラ。ケネスがジェスとフランクに聞いてきた。「おい、ここはいったいどこなんだ!?」「私が働いていた病院だ。」ジェスが説明する。「はぁ!?あんたが働いてた?俺たちを連れてきたのはあんたか!?」「違う!私は知らない!私も君たちと同じで、ここで目覚めた。」ジェスがそう言っても、ケネスは納得していなかった。エリンが口をはさんできた。「なんでもいいわ。どっちにしても面倒なことに巻き込まれたに違いないから。」そう言いつつドアを叩く。「誰か居ないの!?」「誰にも聞こえないさ。誘拐事件だよ。」マリックが不吉なことを言った。ジェスがみんなをまとめる。「よし、考えてみよう!なぜ、ここに連れてこられたか。奴らの目的が・・・」そう言いかけたとき、診察室から声が聞こえた。ジェスとフランクが、警戒しながらドアを開ける。すると、ベッドの傍で女性が震えていた。「君、大丈夫か?名前は?」ジェスが彼女の肩を叩いて聞く。「アリソン・・・」そう名乗った彼女は、他の男女を押しのけデスクを物色し始めた。気になってじっと見ているジェスたち。アリソンは、引き出しからウサギの人形を取り出した。「これを聞けば、全てわかる!」テープを再生した。「ようこそ、よく来てくれた。なぜ連れてこられたかわからないだろう?お前たちは全員、罪を背負って生きてきた。今日、お前たちはそれぞれの部屋で儀式を受けてもらう。よく覚えていろ、お前たちには共通点がある。もし失敗すれば、死しかない。自分のことだけを考えて行動しようとするな。協力しろ。儀式に成功して、生き延びるか。それとも、失敗して孤独を味わうか。決断しろ。」テープはここで終わっていた。全員がざわざわと言い始める。「なんのことだ!?」「儀式ってなんだ!?なぜ、それの場所がわかった!?答えろ!」ケネスが突っかかる。「前にも、されたから・・・」アリソンが答える。「誰に!?」「ラビットキラーよ・・・」「ラビットキラー?」ケネスは知らなかったようだ。エリンが口走る。「新聞を読んでないの?連続殺人鬼よ!」全員の顔が不安に包まれる。「最悪だ!えらいのに捕まったぞ!」マリックが上着を叩きつけ、叫んだ。ウサギの人形の背中に文字が刻まれていた。「ドアの暗証番号999は使うな」と書かれていた。「何だ?これは。」ケネスがアリソンから取り上げ、呼んだ。「使うぞ。」ケネスとマリックがドアに向かった。「でも、使うなと・・・」アリソンが注意するが、暗証番号を入れているマリックが言い返した。「ここでぐずぐずしてても始まらんよ?どうせ冗談だろう。」最後の9を入力した次の瞬間、天井に仕掛けられた拳銃が作動して、彼の頭を打ち抜いた。悲鳴をあげる男女たち。「どうなってるんだ!?脳みそが吹っ飛んだぞ!」ケネスが叫びだす。「協力しろってのは、こういうことを起こさせないためなんだろうな・・・そうしないと、みんな死ぬって・・・」フランクがつぶやく。「彼のルールに逆らってはダメなのよ!わかったでしょ・・・」アリソンがケネスに言うと、彼はうなずいてうろうろしはじめた。そのころ、警察では殺人現場にあった拳銃に犯人のアジトと思われる場所の所在地が刻まれていた。警察は、SWAT部隊を導入。ダニー・ベネット隊長が率いる。出発前にベネットがコリンズに言う。「久しぶりにお前と仕事ができるぜ。「ダーティコリンズ」さんよ!」昔から仲が良かったコリンズは、渋い微笑みで「その名はよしてくれ、お前に言われると照れくさいよ!」と、返した。現場に到着すると、ベネットが隊員たちに作戦の内容を指示する。「建物内に突入し、犯人を確保する。もし、爆発物などを発見した場合、爆発物処理班を要請するように。以上。」SWAT部隊が順々に突入していく。クリアリングをしつつ、奥へ進むとホルマリン漬けにされた何かが陳列されていた。その最深部に男が座っていた。犯人のローマンだ。「動くな!」隊員が武器を所持していないか確認する。「武器は所持していないようです。」隊員がベネットに報告する。コリンズは、ローマンの顔を見て、言った。「よう、わざと捕まるなんて間抜けな奴だな。」ローマンは確保されても臆することなくこんなことを言い出した。「コリンズ刑事、よく来てくれた。君が育てていた刑事がこのモニターにいる。」ローマンは、後ろの棚からモニターを取り出した。そのモニターには、アリソンとその他数名の男女が儀式に挑んでいた。「アリソン!」コリンズは驚愕した。「彼女を助けたいのなら、私とここにいろ。もし、助けたくないのなら私を逮捕しろ。」ローマンは静かに言った。コリンズは机に手をつき、ローマンに聞いた。「何をしたいんだ?」すると、ローマンは答える。「取調べ室で話す感覚で、ここで私と話すんだ。彼女らの儀式が終わるまで。」その言葉を聞いたコリンズは沈黙する。横からハリスが言う。「奴の言う事に従いましょう。アリソンが危ないわ。」それを聞いたコリンズは頷いて、ローマンと対面する。「名を言ってなかったな。私はローマン。」ローマンが名前を言うとコリンズも答えた。「ラビットキラーじゃないんだな。」「まさか。その名前はマスコミがつけた仮の名前だ。」ローマンが言うと、コリンズは頷きつつ彼に質問をぶつけた。「なあ、ひとつ聞くが、なんで俺の名前を知ってるんだ?」「有名だからね、テレビでも出てた。武装した犯人は即射殺。正義感が強いあまり後先のことを考えない、汚れ刑事。」ローマンがそういうとコリンズはいらいらとした声で言った。「お前のような殺人鬼に言われる筋合いはない。」「私は殺してない。彼らが選んだ結果だ。」ローマンは否定した。「殺してるようなもんだろ。罪の無い人を苦しめ、死に至らしめてる。」「罪の無い?本気でそう思っているのか?人は皆、罪を背負って生きている。君だって人を殺しているではないか。」ローマンはコリンズの言うことを塞ぐように一刀両断した。「相手は武器を持ってる!他の人を殺そうとしてるんだぞ!」コリンズは怒鳴った。「相手は武器を持っているだけで殺すのか?刑事としては失格だな。」「もう、いい!くだらん!」コリンズはローマンに全て受け流され、疲れた。「熱くなったら負けだぞ。」ローマンのとどめの一言を聞いて、椅子から離れてうろうろする。  そのころ、廃病院ではジェスたちが他の部屋を回っていた。ドアを開けると、テーブルにバールとウサギの人形が置かれていた。ウサギの人形には、メッセージが添えられていた。「キムへ」「キム?」ケネスがつぶやくと、「キム。俺の名前だ。」と低い声で言った。ケネスがテープを再生した。「やあ、キム。お前のおかげで助かった。お前は貧しい家で育った。窃盗、詐欺などを働いてきたな。貧しい故に金が欲しいと言うのは誰でも同じだ。そこにある井戸は地獄への入り口だ。彼らの協力を得て、井戸の途中の足場にある鍵を取って来れれば生き延びれる。しかし、全員から恨みを買って突き落とされれば、地獄で一人、孤独を味わって死ぬことになる。」テープが止まったとたん、ローラが反応する。「この男、私を誘拐したわ!間違いない!」全員から目を向けられる。キムは必死に説明する。「金が欲しかった・・・姉の治療費が・・・」フランクがキムに突っかかる。「俺たちをここに連れてきた償いをしろ!」フランクとキムの間にケネスが入ってきた。「おい、キムチ野郎!お前の都合なんて関係ねえ!俺はお前のことは助けない。」ケネスとフランク、エリン、ローラは協力しようとしない。残るジェスとアリソンはバールを持ってふたを開けた。キムがロープをつたって入っていく。途中の足場で鍵を見つけた。「鍵を見つけた!」「引き上げるぞ!」ジェスが合図する。あと少しだ。ジェスとアリソンが引き上げていくと、いきなりケネスがやってきてジェスの手からロープを離し、鍵だけをとった。井戸に落ちていくキム。フランクが叫ぶ。「ありえない・・・殺した・・・」エリンも目を背ける。ローラも同じように目を背けていた。ジェスも言葉が出ない。彼らの反応を見たケネスはバールを持ってつぶやいた。「あんな奴に助かる権利は無い。」全員部屋から退出していく。ホールに戻るとそれぞれ、黙り込んで座っている。すると、ローラが泣き出した。「なんでこんな目に合わなきゃいけないの?」ローラの傍でジェスが宥める。「ローラ、泣かないで。きっと助かるから。」彼女を宥めると、ジェスは何かに導かれるように、第2手術室に向かった。第2手術室に入ると、何か探し始めた。気になったローラが問いかけてきた。「何か探してるの?」ジェスは無視して探し続ける。「あった。」何かを見つけたようだ。「この診察表とカルテに、君たちの名前があるはずだ。」診察表には、アリソン、フランク、ケネス、エリン、ローラ、キム、マリックの名前が。「奴が言っていた共通点とは、これだったのか・・・」部屋から出て、他の者に言う。「みんな、奴が言ってた共通点がわかったぞ。」ジェスがそう言ってもケネスは「それが?」というような顔で聞いてきた。「何故あの部屋にあるとわかった?」「あの部屋は・・・私が妻の手術をしたんだ・・・」「女房の?で、死んじまったのか?」ケネスが聞くとジェスは黙り込んでしまった。そう、ジェスは自分の手術が失敗して妻を死なせてしまったのだ。そのときのトラウマで、外科医を辞めた。それ以前にも2件、手術に失敗している。ジェスの沈黙の間に、彼が落としたエリンは驚愕した。「あなた、全て隠してたのね。もういいわ。私1人で行くから。」エリンは1人で行ってしまった。そんな彼女をよそに「まぁ、どっちにしろ、そんなものは役に立たなかっただろう。」ケネスは診察表を破いた。それを見たローラはケネスを睨みつけ、怒鳴った。「さっきから愚痴ばっかり!自分も行動したら?木偶の坊さん!」それを聞いたケネスは、ローラの首を掴み、骨を折った。「やかましい小娘はいらん。」捨て台詞を吐く。「なんてことを・・・」ジェスが彼女のもとに向かい、診る。「お前たちも殺してやろうか?」ケネスがジェスを襲おうとした次の瞬間、ケネスがバールで殴られた。倒れるケネス。ケネスを殴ったのはフランクだった。「威張りやがって。この野郎・・・」フランクの眼は野獣のようだった。「フランク、君はケネスを・・・」ジェスは腰を抜かして言った。答えるフランク。「ああ、殺ったよ。邪魔だったからな。」さっきまでと様子が違う彼に戸惑うジェス。「カルテを見て思い出したよ。俺の弟が死んだのはお前のせいだ。誰が責任者か、ずっとわからなかった。復讐してやろうと思ってた。でも、すぐ目の前にいる。楽しもうぜ、先生!」バールを振りかざし、襲い掛かるフランク。アリソンが近くにあった点滴スタンドで、フランクの足を殴り油断していたフランクはバールを落として倒れる。アリソンはバールを拾って、彼の左手を殴りつけた。しかし、すぐに落ちていたメスを拾い、逃げるジェスとアリソンを追いかける。その頃、エリンは部屋に入り、ウサギの人形は無視し、「脱出の鍵」と書かれたケースに手を突っ込んだ。しかし、中には無数の注射器が入っており彼女の手はたちまち血だらけになっていく。「助けて!」ケースはデスクに固定されている為、身動きがとれない。彼女の悲鳴は誰にも届かない・・・ 一方、無造作に積み上げられた書類を見ていたコリンズは、署にあるはずの警察書類があるのに気づいた。今回の事件の被害者たちはジェスとアリソン以外は、それぞれ警察の逮捕歴がある者たちだった。コリンズはモニターの向こう側で追い詰められているかつての教え子を見てついに決断した。拳銃をホルスターから取り出し、ローマンに近づく。それをみたローマンは平然とした顔で言う。「それで私を撃つのか?」「違う。こうするよ。」そう言ったコリンズは拳銃で彼の顔面を殴った。ハリスが止めようとするが、ベネットが警察車両に戻るように指示した。「戻ろう。モニターの場所を逆探知する。」 警察の逆探知が始まった。コリンズはローマンの襟を掴むと、顔面を殴った。「私を殺しても、アリソンは助からんぞ! 汚れ刑事め!」ローマンが抵抗する。コリンズはローマンの腹を殴ると、言った。「あの場所まで連れて行け。」ローマンはついに観念したのか、隠し扉で裏口に出て用意してある車でコリンズを連れて行った。ハリスやベネットが、また部屋に戻るとコリンズとローマンがいない。「あの場所へ行ったわ・・・」ハリスがつぶやく。そのときモニターの場所が特定された。ベネットがSWAT隊員に報告する。「コリンズが奴と一緒に行ってしまった!これより捜索を開始する!」一方、目的地に着いたコリンズは、ローマンの車を降り、廃病院に突入する。建物の中に入ると死体が転がっており、血の匂いがした。そのまま、拳銃を構えて地下に進んでいく。同時刻、モニターが逆探知した場所にSWATが到着、突入するが、その場所は違う建物だった。ベネットがハリスに連絡する。「ハリス、奴にはめられた!違う建物だ!」「デビッドは・・・」ハリスが声を漏らす。 その頃、廃病院では、ジェスとアリソンがケネスが持っていた鍵を使って地下に逃げていた。奥に進んでいくと、ドアがありそのドアを開いた。ドアを開くと、この世のものとは思えない光景が広がっていた。腹と足に撃たれた痕のある腐乱死体、胸に手斧が刺さった腐乱死体。床に散らばった、「妻と娘は預かった。」と書かれた謎の手紙、日記、弾を撃ちつくした拳銃、もうひとつの手斧・・・ それにこの部屋に来たことはないはずなのに、声が聞こえてくる気がした。「やあ、エリック、ウィル、この儀式で生きるか死ぬか好きなほうを選べ。」「この手斧はドアを壊すためじゃない、殺すためのものだ・・・相手を・・・」「なあ、なぜそんなに冷静なんだ?」「主人を殺しに行く!」「エリック、落ち着け!きっと助かるから!」「頼む・・・家族のためだ・・・」「やめてくれ・・・」  しばらくすると、フランクが部屋に入ってきた。「お前たちもここでおねんねだ・・・」メスを持って襲ってくるフランク。絶体絶命のジェスは床にあった手斧でフランクの喉を切り裂いた。大量の血を流して絶命するフランク。一方、コリンズは地下通路に着いたが、アリソンはおろか他の被害者もいない。地下の出口から脱出したジェスとアリソン。停めてあった車で建物から離れる。車は廃病院からわずかに離れた湖に着いた。ジェスはなぜ、ここに連れてきたのか聞く。「警察には行かないのか?」「ジェス、あなたは奥さんを失い、無気力な日々を過ごしていたわね・・・」ジェスの質問には答えず、突然そんなことを聞いてきた。「君、まさか・・・」ジェスはその言葉を聞いて勘付いた。そう、彼女はローマンと共犯だった。「これはあなたの償いの儀式。こうなった以上、もとの生活には戻れない。私の正体を知ってしまった。あなたは手術に失敗して、奥さんを殺した。償いなさい。孤独の中で。」そう言い残すと、彼女は車から降りて去っていった。間接的とは言え、殺したのは事実だ。自分のミスで死なせてしまった。その重圧からいつも逃げてきた・・・全てを受け止めたジェスはハンドルを握り、車のアクセルを踏む・・・これまで逃げてきた重圧を水に葬るため・・・  廃病院では、コリンズが地下通路の奥の部屋に辿り着いた。ストレッチャーが無造作に置かれている。物陰から声が聞こえていた。「アリソン?」近づいていくと突然、マスクをつけた何物かに襲われた。目が覚めると、コリンズは手術台に腹を有刺鉄線で固定されていた。傍にウサギの人形が・・・再生するとアリソンの声が聞こえてきた。「お久しぶり、先生。ここまで来たのは凄いけど40分遅刻ですよ。あなた、私に遅刻は厳禁だなんて言ってたけど、先生だって人のこと言えないわ。ひどいことだって言ってきたよね?先生、優しくなかったじゃん。私は優しいローマンと会って、新しい人生を歩み始めた。あなたは、汚れ刑事として犯罪者を殺してきた。ここで痛みを乗り越えるか、」彼が見ていたモニターは40分前のもの。アリソンはジェスを湖で降ろした後、すぐに廃病院に戻り待っていたのではなく、彼がここに来る以前からここにいたのだ。ドアが開いてアリソンが現れる。「償いなさい。孤独の中で」アリソンがドアを閉める。叫ぶコリンズ。「小娘が!殺してやる!」「必ず殺してやる!」コリンズの声は誰かに届くはずも無く、ただ地下でこだまするだけだった・・・

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