初デート
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朝になりケータイがなった。
…もう起きる時間か?…そう思いケータイを取った。
昨日かけたアラームではなく美咲からのメールだった。
《タクちゃんおはようー。朝だよ!起きてー!今日は初デートだね!!楽しみっ!9時にコンビニで待ってるね!》
朝からハイテンションのメールが届いた。オレはアラームをかけた時間まで二度寝をしようか迷ったが、ギリギリになってはいけないと支度をする事にした。
デートかぁ…着て行く服も少し考えた。でも、結局Tシャツにデニムを合わせたいつもの格好になった。
まだ暑いかな…9月に入ったばかりで外ではセミがうるさく鳴いていた。
支度が終わり早めに家を出て車を走らせた。最近は誰もこの車に乗せていなかったから、車内は少し散らかっている。いらない荷物を後部座席に投げ込んだ。とりあえず助手席は大丈夫だ。
ちょっと早めにコンビニに着いた。
ふとコンビニの中をみると美咲らしき人がいた。一度しか会っていないからなんとなくしか覚えていない。
向こうも気付いたのか、こっちに向かって歩いてくる。
『おはようー。タクちゃん!!今日はよろしくお願いしますっ!』
やっぱり美咲だった。
今日スカート姿で可愛かった。美咲は車に乗って、持っていたカバンを膝の上に置きシートベルトをしめた。そしてコンビニで買ってくれていたジュースを渡してくれた。
『迎えに来てくれてありがとう!』
近くにいる美咲に少しドキッとした。
水族館までは車で片道2時間ぐらいの所を選んだ。ドライブに行きたがっていた美咲の要望に応えた。
車の中でも美咲は元気いっぱいでいろんな話しをした。会話はどんどん盛り上がり楽しかった。話しの中で美咲は結構ドジだという事が分かった。笑える話しがいっぱいあった。
2時間のドライブも美咲と一緒だとあっという間に経ち、すぐに目的地に着いた。
ここの水族館はまあまあ大きくて、色んなショーがしていると有名だった。
水族館の入場口はお客さんの数は少なかったが、中に入ると意外と多くてびっくりした。日曜日だし人が多いのは覚悟していた。家族連れも多かったがカップルも目立っていた。
中に入ってすぐの所に大きな水槽が見えた。
美咲は水槽の中の魚を見つけると一直線に歩いて行き、『タクちゃん、これスゴイよー!』と言いながら喜んでいた。勝手に進んで行く美咲を見て、迷子になるといけないと思いオレは美咲の手をギュッと握った。
美咲は驚きながらこっちを振り返った。びっくりした顔の美咲はすぐ笑顔になり『ありがとうー!嬉しい。』と繋いだ手を見た。
美咲に初めて触れた瞬間だった。
その後も2人は手を繋ぎながら館内を歩き色んな魚を見た。美咲はデジカメで写真を撮ったりワイワイはしゃいでいたが繋いだ手は離さなかった。
この水族館の目玉であるショーは、あまりの人の多さに見る事が出来そうになかった。しかし美咲は人が多くて全く見えないショーの会場から出ようとしない。
『ショーは残念だったな。こんなに多かったら見れないよ。また今度来ればイイじゃん。』
オレはそう言って繋いでいる手を引いた。
すると突然、美咲がオレの手から離れた。下を向いて悲しそうにしている。
『嫌…』
子どもがタダをこねるみたいに美咲が言った。
『今度って…
美咲達には今度は無いもん!!
今見なきゃ…次は無いもん…』
泣きそうな顔でこっちを見た。
オレはそんなつもりで言ったんじゃなかった。何も考えずに言った事を反省した。
オレはふと横をみるとお土産売り場が目に入って来た。
『ゴメン…。
やっぱり…こんだけ人が多かったらショーは見れないかもなぁ…
でもショーは見れないけど、ここに来た記念にぬいぐるみでもお土産に買って帰るかぁ!?ペアでもいいよ!!』
また美咲の手を取り、繋ぎ直した。
悲しそうな顔をしていた美咲はチラッとショーの方を見て諦めたのか、またオレの方を向いて笑顔になった。
『うん!!!ぬいぐるみ買いに行くー!!』
元気な美咲に戻った。
そっか…この恋は1ヶ月の約束だもんな…
今度は…無い…かぁ…
美咲の言葉が頭から離れなかった。
お土産売り場に行くと美咲はどのぬいぐるみにしようか散々迷っていた。何個もぬいぐるみを手に取っては戻しての繰り返しだった。
そんな美咲を見ていると可愛くて仕方がなかった。
結局、ショーが見れなかったイルカのぬいぐるみに決めていた。なぜそれに決めたか聞くと、“幸せになれるイルカ”というキャッチフレーズを見て選んだと言う。
オレはイルカのぬいぐるみを2つ手に取ってレジに並んだ。お土産売り場も少し混んでいた。美咲はレジの横にあるキーホルダーを見ている。レジ待ちの間、オレは後ろにもいっぱい人が並んできたから、先に美咲を店の外に出してゆったりしたスペースで待つように言った。
少し待ち順番が来ると、さっき美咲が見てたキーホルダーも一緒に入れてもらった。美咲の喜ぶ顔想像出来た。
会計はすぐに終わり、オレは急いで美咲の所に行った。
水族館は広くて結構歩いた。
お昼も過ぎお腹も空いてきたから、併設しているレストランで昼ご飯を食べる事にした。
メニューを見て、美咲はすぐに決めた。オレは優柔不断でなかなか決めれないから美咲が2番目に食べたい物を選んでもらってそれを注文した。
料理が運ばれてくると、美咲の皿の上には魚のフライ。そしてオレの皿の上にはエビフライが乗っていた。
さっきまで元気に泳ぎまくっていた魚達がが衣にくるまれて出てきた。
オレは美咲と目が合うと笑ってしまった。
『何でこれにしたの?こいつら、さっき見たよね??』
笑ながら言った。
『だって、メニューの中で1番食べたかったから!!』
美咲も笑ながら応えた。
流石、美咲だな。と思いながら料理を口に運んだ。料理はとても美味しかった。目の前には笑顔で口いっぱいに頬張っている美咲がいる。きっと美咲と一緒だから美味しいんだろうなぁと思った。
帰りは少し遠回りをして帰った。帰りの車の中も美咲は元気にいっぱいで、今度のデートプランを考えていた。
『来週は~、動物園行きたい!!!美咲、動物触れんけど!!!』
『動物嫌いなの?』
『うん…ちょっと苦手ー』
そんな会話をしながら来週のデートプランが決まった。美咲は何であまり好きでもない動物園に行きたがるのか分からなかった。
美咲は実家に住んでいるから、早めに帰らないといけない。そう言う所はやっぱり子どもで可愛かった。
20時頃、朝迎えに行ったコンビニまで帰ってきた。隅の方に車を止め、もう少しだけ美咲と話しをした。今日はずっと一緒にいたのに、まだそばにいたかった。
オレは今日買ったぬいぐるみを思い出し、美咲に渡した。美咲はすぐに袋から開けると嬉しそうに手に取っていた。そして底のほうから小さいキーホルダーを見つけるとびっくりした顔でオレを見て、今日1番の笑顔で喜んでいた。
美咲の笑顔は本当に可愛い。
『タクちゃん。今日は本当にありがとう!!めっちゃ楽しかったよー!!カッコ良いタクちゃんとデートが出来て、美咲は幸せだなぁー!来週も楽しもうねっ!!』
車から出ようとした時に、振り返って美咲が言った。
『オレも楽しかったよ。ありがとう。』
素直な気持ちを伝えた。
『タクちゃん…
美咲とタクちゃんって今はカップルだよねぇ?だったら…帰る前にちょっとだけ…キスしてもイイ?』
美咲はいつも突然言ってくる。ちょっと照れているようだった。
『うん…』
オレはそう言うと美咲をそっと引き寄せキスをした。美咲の唇はとても柔らかかった。目をつむると、一瞬時間が止まったような気がした。
そしてまた目を開けると、目の前には可愛い美咲がいてとても嬉しそうにこっちを見ていた。
『ありがとうーーー!タクちゃん大好きだよ!じゃあ、美咲は帰るね!バイバーイ』
美咲は笑顔で車から降りた。何度も振り返りながら美咲は家に帰って行った。
オレは美咲の後ろ姿が見えなくなるなるのを確認して、自宅へ車を走らせた。
家に着くといつものようにソファーでゴロゴロした。するとケータイが鳴り美咲からメールが届いた。
《タクちゃんー!今日は運転お疲れ様です。明日からまたお仕事だねぇー。頑張れる??今日は早く寝て疲れを取ってね!今日は本当にありがとうーーー!!おやすみっ》
オレは返信しようと思っていたが、疲れてそのまま寝てしまった。
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