表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰森の巣竜  作者: AI太郎
王国戦
50/148

嗤う寅

それは咆哮ではなかった。


灰樹海の奥、最深層のさらに奥で、灰色の竜は一瞬だけ空気の重さが変わったことを感じ取った。地脈が震えたわけでもない。魔力が乱れたわけでもない。ただ、“上から見られた”という感覚だけが、背骨を冷たく撫でる。


核が沈黙する。


『……観測されました。』


短い報告。


それは敵意ではない。殺意でもない。もっと原始的なもの。


捕食者の視線。


遠く、森の奥、樹海のさらに深い影で、巨大な影が立ち上がる。黄金の双眸が開き、空気が震える。寅。


十二災冠の一柱。


自ら動くことはない。だが嗅ぎ取る。


「増えたな」


低く、愉しげな声。


灰森の竜が界主を四体揃えたこと、その余波が世界に波紋を広げたことを、寅は正確に感じ取っている。


「層が心臓を持った」


面白い、と呟く。


十二災冠は完成形だ。圧倒的な格を持つ存在。だが芽は嫌いではない。潰す価値があるか、育てる価値があるか、確かめるだけだ。


寅は四歩、地を踏む。


その足元から影が分かれる。


爪牙王。

裂地王。

砕角王。

無貌王。


四体の王種が地に伏す。


「行け」


威圧が落ちる。


それは恐怖ではない。存在格差そのもの。配下の血が沸騰し、筋肉が膨張し、骨が軋む。王種の限界をさらに一段押し上げる。


「壊せるなら、壊してみろ」


四体は走る。


地を裂き、森を踏み潰し、灰樹海へ侵入する。


最初の層で、洞灰狼が動きを止める。


振動が異様だ。


重い。


速い。


そして――揺るがない。


灰殻界主《断陣》が兜の奥で光を灯す。


侵入者、四。


配下、強化済。


威圧波動、層全域へ拡散。


菌糸導線が震える。骨壁がせり出す。陣が起動する。


第二層で、地面が波打つ。


地蟲界主《震路》が目覚める。


第三層で、樹牢界主《織界》が根を張り巡らせる。


第四層で、甲殻界主《反殻》が殻を硬化させる。


灰色の竜は動かない。


核がわずかな明滅で応じる。


古来より生きる冠が、灰樹海へ牙を向ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ