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灰森の巣竜  作者: AI太郎
ダンジョン誕生
39/75

灰森の竜巣へ

灰森の竜巣は、静かに待っていた。


中層へ至る通路は広く、だが緩やかに傾斜し、侵入者の重心を狂わせる角度で掘られている。影沼粘体は薄く床を覆い、光を吸い、音を鈍らせ、振動だけを竜へと届ける。鎖蛇は地中に潜み、断層蛇は目に見えぬ亀裂を仕込み、骨縫菌が天井を補強する。


灰殻騎士は広間の縁、高所へと立ち、かつての陣地構築と同じく、防衛線を想定した位置を選んでいる。


侵入者は整然としていた。


先頭はセルガルド。その背は確かに彼が英雄であることを物語っている。隣にイグレイン。杖の先に淡い光が灯る。少数精鋭の拳士たちが続き、その最後尾に、銀灰の髪を揺らす将軍エリスと、巨躯のカイがいる。


「罠が多い。だが焦るな」


セルガルドの声が響く。


「灰森の竜は中層で出る。深部は別働だ」


エリスは短く頷くだけだった。彼の視線は奥へ向いている。目的は一つ。核。


竜はそれを理解している。


深層で、アメジストの眼がわずかに細まった。侵入者の声は意味を持って届く。


「灰森の竜を押さえろ。竜巣の核を断つ」


竜は翼をわずかに広げる。背骨が熱を帯びる。自分を倒しうる存在がいる、と理解する。


中層の広間へ、侵入者が足を踏み入れた。


天井が高く、柱が多く、影が濃い空間。そこに、灰殻騎士が立っている。背に骨板、腕に鎖を巻き、空洞の中心を塞ぐように。


セルガルドの目が揺れる。


「……ルーカス?竜は?」


灰殻騎士は応えない。だがその足運びは、陣地防衛時と同じだった。高所を取り、側面を塞ぎ、侵入経路を限定する。


イグレインが息を呑む。


「戦術が……間違いなくやつのものだ」


拳士の一人が飛び出す。剛拳が灰殻騎士の鎧を打つ。重い衝撃。だが骨板が受け流す。鎖が巻き付き、拳士を引き寄せ、膝蹴りが鎧を砕く。


セルガルドが踏み込む。剣が振るわれ、骨板に火花が散る。灰殻騎士は後退せず、むしろ誘導する。鎖蛇が地面から伸び、侵入者の足を絡める。断層蛇が亀裂を走らせ、列を崩す。


「陣形を崩すな!」


セルガルドが叫ぶ。


エリスは動かない。


彼は観ている。魔力の流れ。共生種の連動。灰殻騎士が“中心”ではないことを理解する。

これはダンジョンの前哨。


カイが低く問う。


「将軍!」


「私は先に行く!」


エリスは中層の戦をセルガルドへ委ねる。


「灰森の竜がいない。おそらくより奥にいる!」


セルガルドが振り向かずに言う。


「任せろ!」


灰殻騎士が剣を受け止め、鎖を振るう。共生種が左右から迫る。影沼粘体が足場を奪う。


イグレインは杖を掲げ、詠唱を始める。魔力が走る。鎖蛇が焼け、断層蛇の亀裂が閉じる。だが焼いても焼いても、別の蛇が現れる。


竜は深層からそれを観ている。


灰殻騎士の動きに、セルガルドの癖が混じる。読み合いだ。これは個と個の戦い。


だが自分に迫る気配は、別だ。


エリスとカイ。


二つの足音が、中層を抜け、深層への通路へ向かう。


竜はゆっくりと翼を広げた。


「来い」


守る戦いが、始まる。

主人公「コアに怒られて奥に引きこもってるなんて想定外やろな。ぷーくすくす」

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