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灰森の巣竜  作者: AI太郎
ダンジョン誕生
35/44

観測者達

灰森の上空に、月は出ていなかった。


それでも星はある。夜は黒く、深く、静まり返っている。


その静寂の外側で、観測は行われていた。


――酉。


それは塔ではない。巣でもない。山でもない。だが高みに在る。無数の光点が周囲を巡り、線となり、円となり、やがて幾何学を描く。


白い羽のようなものが宙に浮く。だがそれは羽ではない。光を分解する構造体だ。


「外縁、収束。陣地、消失。竜認識、拡散中」


声音は中性的。温度は低い。


酉は干渉しない。観測する。


「地核種、変異段階二。核安定。未成熟」


視線がわずかに動く。灰森の奥、ダンジョンの中心へ。


「面白い」


その言葉は感情ではない。評価だ。


――子。


暗い場所で、笑い声が小さく弾ける。


「やっぱり動いたね」


小柄な影が、盤面のような空間に駒を並べている。駒は人。駒は魔物。駒は杭。


「杭を揺らして、外へ逃がして、戻して、吸う」


笑う。


「ちゃんと“学んでる”」


子は干渉しない。ただ楽しむ。


「でもさ」


駒の一つに、王冠を乗せる。


「王都が動いたら、どうなる?」


指先が駒を弾く。駒はまだ動かない。


「楽しみだね」


――辰。


深い場所。


そこは封印でも、牢でもない。ただ、動かないだけだ。


巨大な影が、ゆっくりと呼吸している。鱗は古く、翼は畳まれ、瞼は閉じている。


だが、わずかに開く。


灰森の方角へ。


アメジスト色の光が、ほんの一瞬だけ宿る。


「……似ている」


低い声が、空間を震わせる。


「だが、まだ小さい」


瞼は再び閉じる。


干渉はしない。


観測だけ。


遠い海の向こう、マーレミア王国の王城でも、また別の観測が始まっていた。


だがそれは災冠ではない。


人間の観測。


王都が動く。


そして灰森では、ダンジョンが脈打っている。


世界は広い。


この戦いは、まだ序章にすぎない。

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