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灰森の巣竜  作者: AI太郎
ダンジョン誕生
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逆共振

それは、かすかな変化から始まった。


封鎖杭の先端石が、かすかに震えた。夜の静寂の中ではわからないほどの微振動。だが三本が同時に鳴いた瞬間、地中で何かが弾けた。


術者が顔を上げる。


「……団長」


銀線が一瞬だけ強く光り、そのまま暗く沈む。固定は続いている。だが“押さえつけられていたもの”が別方向へ逃げた。


地下では、核が静かに告げる。


『逆流、発生。偏位成功』


杭は折れていない。破壊もされていない。ただ、力の逃げ場が変わった。


灰森外縁、農村寄りの浅域。地面がわずかに脈打つ。獣たちが一斉に沈黙した。


最初に変わったのは狼だった。


灰角狼の背骨が軋む。毛が逆立ち、四肢が伸びる。骨格が拡張し、牙が露出する。喉から漏れる声は、遠吠えではない。呻きだ。


群れの一頭が地面に伏せ、震え、そして立ち上がる。


眼光が濃くなる。


灰王狼。


群れの他の狼がそれを見て、追随するように体を変質させる。完全な進化ではない。強引に引き伸ばされた骨が悲鳴を上げている。それでも力は増している。


森のさらに外では、緑角鹿が倒れた。角が軋み、枝分かれする。淡い光が角を走り、空気を震わせる。立ち上がった賢緑鹿が、無意識に角を振るうと、衝撃が波となって広がった。


ゴブリンはもっと醜かった。


浅域の洞に潜んでいたグリーンゴブリンが、突然地面を叩き始める。瞳が黒く染まり、皮膚が濃く変色する。牙が伸び、笑い声が途切れ途切れに響く。


ブラックゴブリン。


理性が削られ、衝動だけが肥大する。だが筋力は増し、動きは速い。


農村の犬が吠えた。家畜が暴れ、子どもが泣く。最初の灰王狼が柵を飛び越える。牙が肉に届く音は、夜を引き裂いた。


陣地では、杭の光が再び揺れる。


「魔力濃度が上がっています!」


術者の声が張り詰める。


ルーカスは森を睨む。遠く、赤い光が瞬く。火ではない。眼だ。


「陣を維持しろ。浅域の異変だ」


彼の判断は正しい。森内部ではない。だがそれが問題だった。


灰森外縁のさらに外。農村三つのうち一つが、わずかな時間で沈黙した。灰王狼が柵を破り、賢緑鹿が衝撃波で家屋を倒し、ブラックゴブリンが人影を追う。


叫びが夜を満たす。


オルカの見張り塔で鐘が鳴る。異常は伝わる。


領主館でセルガルドが立ち上がる。


「報告を」


「浅域三地点、魔物暴走。規模不明。狼、鹿、ゴブリンを確認」


イグレインの顔色が変わる。


「封鎖杭の影響が外へ逃げた……」


「止められるか」


「杭は壊れていない。だが再調整には時間が必要です」


セルガルドは即断する。


「騎士団第二隊を農村へ。冒険者にも依頼を出せ。騎士団は動かすな。陣地は維持」


命令は的確だ。愚かではない。だが同時多発だ。


地下では、核が静かに告げる。


『外縁魔力、飽和。二次波、準備完了』


巣の主は翼をわずかに動かす。


暴走した魔物の一部が、森へ向きを変えた。圧に引かれるように、より濃い魔力を求めて。


灰王狼の一群が、境界へ走る。


賢緑鹿が森の暗がりへ消える。


ブラックゴブリンが笑いながら奥へ進む。


地下で、鎖蛇がゆっくりと体をほどいた。


『流入個体、選別を開始します』


灰森は、飲み込む準備を整えていた。

やっていることの簡単な補足・・・元々ダンジョン勢はダンジョン(森)を拡げるために魔力を森の外に発していました。しかしそのせいで、近隣の村や町に魔物が増える。オルカ勢はそれを抑えるために封鎖杭を使用して魔力が外に漏れないようにしていたのです。そのためコアは魔力のリソースを外への拡張ではなく、魔物の暴走に向けました。ちなみにこの魔物達はまだ支配下にはない野生の魔物達のみを標的にしています。

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