道連れ
中央の広間の縁で、王は踏み込みの重さを確かめていた。沈む。支えは薄い。落とすつもりだと理解する。巣の主は縁の向こうで低く構え、土蛇が地中を巡る。空隙は王のために用意された。
王は鼻を鳴らす。退けば森はさらに削られる。あの夜の誤りを、今度は繰り返さない。落とそうというのなら、落ちてやる。
一歩、強く踏み出す。床が割れる。ひびが走り、中央が崩れ始める。巣の主はそれを合図に、縁から退き、土蛇が広間へ噛みつく準備を整える。沈んだ王を囲み、集中するはずだった。
だが王は落ちながら、前肢を大きく振り上げる。爪が地面を抉り、魔力が流れる。踏み込む瞬間に層を緩めるあの力を、今度は広く、深く使う。床だけでなく、縁まで軟らかく崩す。
空隙が一気に拡がる。
巣の主の足場も沈む。ディープスライムの水面が裂け、ロホスライムが天井から剥がれる。甲殻虫が崩壊とともに落ちる。土蛇が地中で進路を失う。
王は自らの重さでさらに押し広げる。落下の衝撃が下層を打ち、通路が鳴る。支柱にした百足の殻が軋み、土が雪崩のように流れる。
巣の主は空中で体勢を変え、壁へ爪を立てる。落ちきらない。だが王は止まらない。落ちながら前肢を振るい、崩れを拡大する。穴は王だけを呑まない。
下層に叩きつけられた衝撃が広間を揺らす。水が溢れ、ディープスライムが広がる。土蛇が一匹、岩に潰される。ロホスライムが剥がれ、光がわずかに差す。
王は立ち上がる。傷は増えているが、目は濁らない。周囲の地形は変わった。狭いはずの巣は、今や広い裂け目になっている。囲むつもりだった形は崩れ、戦場は平坦に近づいた。
巣の主も立つ。背骨の付け根が強く脈打つ。想定外だ。落とすつもりが、落とされた。だが王もまた無傷ではない。肩に裂け目が走り、血が滴る。
互いに距離を測る。今度は罠ではない。力と力だ。
王は低く唸る。後悔はここで終わらせる。巣の主は爪を立てる。学ぶ。次は広げさせない。
崩れた広間の中央で、二つの影が向き合う。
策は破れた。だが、終わってはいない。




