森の主
血は、森が吸いきれずに残っていた。入口付近の踏み荒らされた土、焦げた匂い、わずかに漂う人間の汗。夜半、重い足音が浅域へ近づく。
王が来た。
歩くだけで地面が沈む。鼻を上げ、空気を嗅ぐ。血と火。だがそれだけではない。地下から、意図のある振動が返ってくる。規則的で、広がる脈。森の形が変わっている。
王は前肢で地面を押す。土が柔らかく崩れる。層がずれる。違和感がある。根が傷んでいる。あの夜、浅域で対峙したものの匂いも残っている。
王は低く唸る。
あのとき、仕留めておくべきだった。
浅域で退いたのは誤りだった。重傷ではなかった。圧は足りていた。森の王として、異物を許した。それが今、形になっている。王は入口の縁を爪で削る。削られ、整えられている。人の手ではない。だが自然でもない。もう一度、強く叩く。重い衝撃が地に落ち、地下へ振動が伝わる。
巣の奥で、それを受け取る。
水がわずかに揺れ、ディープスライムが波打つ。天井のロホスライムが光を吸い、甲殻虫が壁を這う。土蛇は地中を回り、中央の広間へ集まる。巣の主は動かない。振動を読む。重い。速い。地面を緩める力もある。
完成していない。上層の一部はまだ薄い。だがやるしかない。広げた入口、緩やかな下り、中央の空隙。重さを沈め、速度を奪う。
地上で王は一歩踏み出す。入口へ影が差す。湿りの匂い、水の気配、血の残り。森の王として、確かめねばならない。
短く、吠える。
森が応える。鳥が飛び、狼が止まり、夜が震える。宣言だ。ここは自分の森だ。
地下で、背骨の付け根が強く脈打つ。
王が来る。
もう退かない。
王は入口へ踏み込み、削られた通路に巨体を通す。土が鳴り、天井がわずかに軋む。湿りが広がる。地中で土蛇が位置を変える。
地上の王と、地下の主。
戦いはすでにはじまっている。
種族名・・・土蛇種
説明 ・・・元々巣にいたけど、主人公のレベルが上がりいうことを聞くようになった。1メートルぐらいの蛇。今のところ毒は無いが、牙が通常種よりもかなり太いため首等を噛まれると少し危険。おまけ程度に地面に細く張り巡らせた専用の通路を使い、泳ぐように土中を移動する。




