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7筋 魔王軍、動く

魔王城・最深部。

黒曜石の玉座に座す者――

魔王オーマ。


世界最強。

あらゆる魔法体系を極め、破壊と支配を思うままにしてきた存在。


その前に、巨大な水晶が浮かんでいる。

戦場を映す、監視用魔導水晶。


映像の中。

切り込み隊長ポウセンが、拳一つで地形を消し飛ばす勇者を前に――

武器を下ろし、帰郷を宣言していた。


水晶が、静かに暗転する。



沈黙。


魔王オーマは、しばらく動かなかった。

怒りもない。焦りもない。


ただ――


「……これ」


低い声。


「無理じゃね?」


魔族たちが、凍りつく。



「拳圧で、山が消える」

「魔法反応、なし」

「分身は高速移動」

「攻撃は寸止め」


オーマは指を組み、冷静に分析する。


「……勝ち筋が、見えん」


魔族の一人が恐る恐る言う。


「で、ですが魔王様……」

「魔法で遠距離から……」


「無理だ」


即答。


「距離を取れば詰めてくる」

「拘束すれば耐えられる」

「即死魔法? 効かんだろ」


誰も、反論できなかった。



オーマは、静かに立ち上がる。


「方針変更だ」


空気が張り詰める。


「勇者タケスケ・ウチトは――」

「討伐対象ではない」


ざわめき。


「では……?」


オーマは、真剣な顔で言った。


「対策は、筋肉しかない」



参謀席から、一人の男が進み出る。


魔王軍参謀・ボウサン。

知略担当。

冷静沈着。眼鏡をかけている(伊達)。


「……承知しました」


誰よりも真面目な顔だった。


「まず、勇者の筋肉は魔法的強化ではありません」

「純粋な肉体運用」

「つまり――」


ボウサンは、黒板に文字を書く。


《負荷・回復・栄養》


「鍛錬理論です」


魔王オーマは、頷いた。


「続けろ」



「既存の魔王軍訓練は、戦闘前提であり」

「筋肥大を目的としていません」

「根本的に、甘い」


ざわ……。


「よって、提案します」


ボウサンは、資料をめくる。


「全軍に――」

「筋トレを導入」


沈黙。


魔族たちの顔が引きつる。


「ま、魔王軍が……?」

「スクワット……?」


「必要です」


ボウサンは一切ぶれない。


「勇者は、筋肉で世界法則を上書きしています」

「ならば我々も、筋肉で対抗すべきです」



オーマは、腕を組み、考え込む。


「……筋トレか」


「はい」


「地獄の訓練になるぞ」


「承知しています」


オーマは、ふっと笑った。


「面白い」


そして宣言する。


「本日より――」

「魔王軍、筋肉改革期に入る」



その日。


魔王軍施設に、新たな掲示が貼られた。


――朝礼前、腕立て百回。

――魔力行使前、スクワット五十回。

――詠唱は、プランク中に行うこと。


悲鳴が、各地で上がった。



玉座の間にて。


オーマは、水晶の前で独り呟く。


「勇者よ……」


「お前が現れなければ」

「俺は、最強のままだった」


そして、小さく続けた。


「……だが」


「筋肉を鍛えるのも、悪くない」


遠く離れた場所で。

くしゃみをする者が一人。


「……プロテインが、足りていないな」


竹助は、今日も鍛えていた。

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