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筋5 山賊討伐 その筋肉、まだ使える

冒険者ギルドに、新たな依頼が貼り出された。


――街道沿いに出没する山賊団の討伐。

――被害多数。説得困難。

――可能であれば、生存者を確保。


掲示板の前で、神官が小さく息を呑む。


「……今度は、人相手です」

「戦闘になる可能性が……」


「問題ない」


竹助は依頼書を見つめ、静かに言った。


「筋肉で、語ればいい」



山賊の根城は、岩山に囲まれた砦跡だった。

荒れた焚き火。乱雑な武器。

鍛えられていない身体。


「止まれ! ここは――」


見張りの山賊が叫ぶ前に、竹助は一歩踏み出した。


「その肩」


低い声。


「使い方が、間違っている」


「……は?」



山賊たちが武器を構える。


「囲め!」

「殺せ!」


突撃。


だが――


竹助は、殴らなかった。



最初の男の剣を、指二本で止める。

次の男の斧を、上腕で受ける。

三人目の突進を、腹筋で受け止める。


「な……何だこいつ……!」


「力の入れ方が、雑だ」


竹助は、山賊の腕を取り、軽く捻る。


「ほら。肘は、こうだ」


ドサッ


山賊が崩れ落ちる。



数分後。


地面に座らされ、山賊たちは全員無力化されていた。

誰一人、重傷はいない。


ただ――

全員、息が上がっている。


「はぁ……はぁ……」

「な、何を……した……」


竹助は彼らを見下ろし、静かに言った。


「筋肉が、泣いている」


沈黙。


「お前たちは、力がある」

「だが、使い方を知らない」


山賊の頭目が、震えながら聞く。


「……殺さないのか……?」


「殺す理由がない」


即答。


「鍛え直せばいい」



竹助は、地面に石を並べた。


「まず、腕立てだ」

「回数は――」


山賊たちが身構える。


「……出来るところまで」


「……え?」



最初は、三回。

次は、五回

10回、20回、30回…。

最後は、誰も動けなくなった。


だが。


「……まだ、動ける……」


頭目が、震える腕で床を押す。


「ほう」


竹助は、初めて少しだけ、満足そうに頷いた。


「その根性は、悪くない」



日が暮れる頃。


山賊たちは、焚き火を囲んでいた。

武器は置かれ、代わりに――


「……これが、正しいスクワット……」


「背中……真っ直ぐ……」


「効いてる……効いてるぞ……!」


全員、真剣だった。


神官は、呆然とその光景を見つめる。


「……討伐とは……」


「更生だ」


竹助は言った。


「筋肉は、人を正直にする」



翌日。


山賊団は解散した。

代わりに生まれたのは――


街道警備・自主筋肉団。


ギルドへの報告書には、こう記された。


――戦闘なし。

――死者なし。

――筋肉、増量。


ギルドマスターは、報告書を読み、静かに呟いた。


「……討伐の定義を、見直す必要があるな……」



別れ際。


元山賊の頭目が、深く頭を下げた。


「……俺たち……生まれて初めて……」

「自分の身体を……信じられました……」


竹助は、背を向けて言った。


「忘れるな」


「筋肉は、裏切らない」


そして、最後に一言。


「プロテインが足りなくなったら……」

「ギルドを通せ」


誰も、笑わなかった。


その日――

最も危険だった山賊団は、最も安全な存在になった。


筋肉によって。

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