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筋4 ランクで筋肉は測れない

王都冒険者ギルド。

剣と魔法を生業とする者たちが集う、実力主義の殿堂。


掲示板には、整然とランク分けされた依頼書が並んでいる。

Fから始まり、E、D、C、B、A――

そして最上位、S。


そこへ、場違いなほど落ち着いた男が入ってきた。


竹助内人。

その後ろに、神殿の神官が付き従っている。


「え、ええと……こちらが冒険者ギルドです」

「本日は、勇者様をご紹介に……」


受付嬢は書類を見て、首を傾げた。


「勇者様なんですね!

何ランクなんですか?」


神官が口を開こうとした瞬間――


ゴォォォン!!


外が、赤く染まった。



「山火事だ!!」


誰かが叫ぶ。


王都近郊の山が燃えている。

強風。延焼。最悪の条件。


「水魔法部隊、出るぞ!」

「風魔法で延焼を止めろ!」

「Bランク以上、現地へ!」


冒険者たちは即座に動いた。

統率の取れた、プロの動き。


神官は青ざめる。


「ゆ、勇者様……これは……!」


「問題ない」


竹助は外へ出た。



現地。

炎は獣のように山肌を舐め、黒煙が空を覆っている。


水魔法が飛ぶ。

蒸気が上がる。

だが、火勢は衰えない。


「くそ……魔力が足りない!」

「まだ奥が……!」


その時。


竹助が、前に出た。


「……?」


冒険者たちが一斉に見る。


「下がれ」


低く、静かな声。


「風向きは、理解した」


竹助は、足を踏み込む。

腰を落とし、背筋を伸ばす。


正拳突き。


ただ、それだけだった。



――ドンッ!!!!


音が、遅れて来た。


拳から放たれたのは、熱を押し潰す拳圧。

空気そのものが叩きつけられ、炎を真正面から殴り飛ばす。


火が――消えた。


一瞬で。


燃焼に必要な酸素が、根こそぎ吹き飛ばされたのだ。


「……え?」


「……今の……何だ?」


残ったのは、静寂と、焦げた地面だけ。


竹助は拳を下ろす。


「鎮火完了。

やはり筋肉こそ至高」



誰も動けなかった。


やがて、神官が震える声で言った。


「ゆ、勇者様……」

「今のは……魔法、ですか……?」


「違う」


即答。


「筋肉だ」


冒険者たちの価値観が、音を立てて崩れた。



ギルドに戻る。


報告を受けたギルドマスターは、深刻な顔で腕を組んでいた。


「……状況は理解した」

「勇者殿の実力は……規格外だ」


「では、ランクは?」


受付嬢が問う。


沈黙。


ギルドマスターは、ゆっくりと首を振った。


「……付けられん」


「Sランク、以上では?」


「違う」


彼は、重く言った。


「……筋肉だ」


ざわめき。


「この男は、依頼を受ける側ではない」

「依頼そのものを消す存在だ」


神官は小さく呟いた。


「……神殿でも、同じ結論でした……」



ギルドマスターは、竹助を見て頭を下げた。


「勇者タケスケ・ウチト殿」

「当ギルドでは、貴方を――」


一瞬、言葉を探し。


「**特別ランク筋肉**として登録します」


「構わん」


竹助は頷いた。


「必要とあらば、呼べ」


神官が小声で聞く。


「……報酬は、どうされますか?」


竹助は、真顔で答えた。


「プロテイン」


その場にいた全員が、真剣に頷いた。


誰も、笑わなかった。


こうして冒険者ギルドは知る。


――この世界において、

――ランク制度は、筋肉の前では無力であると。


掲示板の最上段。

Sランク依頼のさらに上に、新たな札が貼られた。


《対応不可:筋肉案件》

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