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番外編 農業ギルド 「筋肉野菜の扱いを巡る会議」

王都・農業ギルド本部。

石造りの重厚な会議室には、王国中から集められた農業関係者が着席していた。


農業ギルド長。

穀物管理官。

市場監査官。

料理人代表。

家畜飼育主任。


全員、表情は硬い。


机の中央には、白布をかけられた“何か”が置かれていた。


ギルド長が咳払いをする。


「……本日の議題は一つ」

「“筋肉野菜”の取り扱いについてだ」


布が外される。


そこにあったのは――

仁王立ちの大根だった。



「まず、現状報告を」


市場監査官が立ち上がる。


「王都市場に流通した筋肉野菜ですが……問題が多発しています」

「包丁が通らない」

「煮ても柔らかくならない」

「切断面が異常に美しい」


料理人代表が深刻な顔で頷く。


「下処理に三倍の時間がかかります」

「スープにすると、妙にコクが出るのですが……」

「鍋の中で、野菜が沈まない」


会議室がざわついた。



次に家畜飼育主任。


「家畜の飼料として与えたところ……」

「牛が、翌日から肩回りが発達しました」


「……何ですと?」


「鶏が、羽ばたく前に屈伸をします」

「豚が、柵を押してきます」


沈黙。


ギルド長が額を押さえた。


「……農業の範疇を超えている……」



穀物管理官が慎重に発言する。


「しかし、収穫量と栄養価は、従来品の数倍です」

「少量で腹持ちがよく、満腹感が異常に長い」


「問題は……」


市場監査官が続ける。


「食後、無意識に背筋が伸びるという苦情が……」


全員、黙って頷いた。

誰も笑わない。



ギルド長は深く息を吸い、結論を出す。


「よろしい」

「筋肉野菜は――」


全員が固唾を呑む。


「特殊作物『強健系農産物』として分類する」


「用途は限定」

「流通量は管理」

「調理には、専用器具を開発する」


「……では、勇者タケスケ・ウチト殿には?」


ギルド長は、遠い目をした。


「……畑仕事の際は……」

「加減をお願いする」



会議終了後。


議事録の最後には、こう記された。


――筋肉野菜は、確かに優れている。

――だが、農業は筋肉だけで成り立つものではない。

――今のところは。


その日、農業ギルドは新たな教訓を得た。


「筋肉は、作物にも伝播する」


誰も、異議を唱えなかった。

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