表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/31

27筋 筋肉は裏切らない

最終衝突・臨界**

次の一撃は、

音を置き去りにした。

――ドン。

拳が触れた瞬間、

衝撃は爆発しなかった。

拡散した。

衝撃波は、

波紋のように世界を走り、

触れた場所すべてに

“理解”を残していく。

「……あ」

王都の一角で、

酒場の主人が呟く。

「……この配置……」 「……無駄が多い……」

机がどかされ、

椅子が並べ直される。

壁には、

即席の看板。

【王都第一筋力鍛錬所】

――ジムが、誕生した。

誰が指示したわけでもない。

誰が設計したわけでもない。

それなのに。

「胸の日と背中の日、分けよう」

「脚は……」 「……逃げるな」

自然と、

メニューが組まれる。

――辺境の村。

畑の横で、

農夫たちが集まる。

「耕す前に、

まずスクワットだ」

「腰、落とせ」

「可動域、全部使え」

鍬の代わりに、

自重トレーニング。

作物は、

育つ前から、

たくましくなった。

――学園都市。

魔法学の講義が、

中断される。

教授が、

黒板に書く。

【魔力効率=姿勢×筋発火】

学生たちは、

詠唱前に、

フォームチェックを始める。

「その詠唱、

体幹抜けてる」

「魔法、

腰で撃て」

――戦場。

魔王オーマと竹助。

五撃目。

――ドン。

この衝撃で、

全世界のフォームが、揃った。

腕立て伏せは、

深く。

スクワットは、

膝が前に出ない。

懸垂は、

反動禁止。

誰も教えていないのに、

誰も間違えない。

参謀ボウサンは、

膝をつく。

「……文明が……」

「……筋肉基準で……」 「……再構築されている……」

魔王オーマは、

息を吐く。

「……竹助……」

「……これは……」 「……戦いか?」

竹助は、

拳を下ろし、

静かに答える。

「……いいや」

「……共有だ」

六撃目。

――ドォン!!

世界中で、

掛け声が揃う。

「――ワン」

「――ツー」

「――スリー」

それはもう、

合いの手ではない。

文明の拍動だ。

魔王の、

超筋肉が、

震える。

限界ではない。

――完成してしまった。

魔王オーマは、

悟る。

「……なるほど……」

「……勝ち負けでは……」 「……なかったか……」

竹助は、

一歩、

前に出る。

最後の一撃。

――拳ではない。

手を、差し出す。

魔王オーマは、

その手を見る。

攻撃ではない。

防御でもない。

握手だ。

一瞬、

迷う。

だが――

笑う。

「……いい筋肉だ……」

「……お前もな……」

二人の手が、

重なる。

――ドン。

音は、

小さい。

だが、

結果は――

最大だった。

衝撃は、

外へではなく、

内へ向かって広がる。

そして――

バンッ!!

一斉に。

冒険者の鎧が、

弾け飛ぶ。

神官の法衣が、

消し飛ぶ。

トロールの装備が、

木っ端微塵になる。

元盗賊の服が、

なぜか一番派手に飛ぶ。

魔王軍の魔族も、

人間も、

全員――

全裸。

静寂。

風が、

吹き抜ける。

誰かが、

ぽつりと呟く。

「……あ」

「……やっぱり……」 「……こうなるよな……」

笑いが、

起こる。

最初は、

小さく。

やがて、

大きく。

世界中で、

笑いが起きる。

なぜなら。

誰も、

恥じていなかった。

筋肉が、

あったからだ。

魔王オーマは、

深く、

頭を下げる。

「……竹助……」

「……私は……」 「……負けた……」

竹助は、

首を振る。

「……いいや」

「……分かち合っただけだ」

二人は、

並んで、

空を見上げる。

筋肉で包まれた世界。

だが――

筋肉が、

支配していない世界。

人々は、

それぞれの場所で、

それぞれの筋肉を、

鍛え始める。

魔王と竹助も、

並んで、

スクワットを始めた。

「……次は……」 「……どこを……」

「……脚だな」

「……同意だ」

こうして。

筋肉は、

世界を救った。

だが、

君臨しなかった。

――筋肉は、

裏切らない。

竹助内人の筋肉の旅は、

まだ、続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ