26筋 最終衝突――世界の筋肉に激震
最終衝突――世界が震える
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静寂は、
一瞬だった。
*
竹助と魔王オーマ。
二人が、
同時に、
踏み込む。
*
魔法陣は、
展開されない。
*
詠唱も、
ない。
*
あるのは――
筋肉。
*
――ドン。
*
拳と拳が、
ぶつかる。
*
それだけで。
*
空が、
割れた。
*
バリィィン――!!
*
音ではない。
衝撃そのものが、
空間を砕く。
*
衝突点から、
球状の圧が、
広がる。
*
山が、
低くなる。
*
川が、
一瞬、逆流する。
*
雲が、
真っ二つに裂ける。
*
だが、
壊れたのは、
自然だけではなかった。
*
――遠く、王都。
*
書類仕事をしていた役人が、
突然、
立ち上がる。
*
「……何だ……?」
*
「……今……」
*
彼は、
机に手をつき、
腕立て伏せを始めた。
*
理由は、
分からない。
*
だが、
体が――
そうしろと命じた。
*
――辺境の村。
*
老人が、
薪を割る手を止める。
*
「……昔は……」 「……もっと、できた……」
*
老人は、
ゆっくりと、
スクワットを始める。
*
――学園都市。
*
魔法の講義中、
学生が、
詠唱を止める。
*
「……今……」 「……筋トレじゃない……?」
*
黒板に、
チョークで書かれる。
*
【腕立て 20回】
*
教師は、
それを消さなかった。
*
――再び、戦場。
*
二撃目。
*
――ドン!!
*
今度は、
肘と肘。
*
衝撃が、
地面を走る。
*
大地が、
波打つ。
*
冒険者たちは、
踏ん張る。
*
トロールは、
本能で地面に伏せる。
*
元盗賊は、
なぜか
プランクを始める。
*
「……今のは……」 「……体幹だ……!」
*
魔王オーマの、
表情が、
歪む。
*
(……届いている……)
*
(……確かに……)
*
(……だが……)
*
「まだだッ!!」
*
魔王は、
超筋肉を、
限界まで、
収縮させる。
*
皮膚が、
裂ける寸前。
*
だが、
止まらない。
*
「――世界最強は!!」
*
「――魔王だ!!」
*
三撃目。
*
――ドォン!!!
*
今度は、
掌と掌。
*
衝撃が、
光となって、
放たれる。
*
光は、
世界を、
一周する。
*
一周する間に。
*
砂漠で、
旅人が腕立てを始め。
*
海で、
漁師が船の上でスクワットをし。
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監獄で、
囚人が鉄格子を使って懸垂を始め。
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神殿で、
神官が祈りの代わりに腹筋をする。
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「……神よ……」 「……今は……」
*
「……腹筋だ……」
*
竹助は、
拳を引く。
*
その動作だけで、
風向きが変わる。
*
「……オーマ」
*
初めて、
名前で呼んだ。
*
「……いい筋肉だ」
*
魔王オーマは、
笑った。
*
「……だろう?」
*
四撃目。
*
――ドンッ!!
*
今度は、
額と額。
*
頭突き。
*
理性を、
捨てた一撃。
*
その瞬間。
*
世界中で、
同時多発的に、筋トレが始まる。
*
誰かが、
言う。
*
「……理由は……」 「……分からないけど……」
*
「……今……」 「……やらなきゃ……」
*
子供が、
腕立て伏せを始める。
*
母親が、
横でプランクをする。
*
父親が、
なぜかデッドリフトの構えを取る。
*
世界は、
揺れていた。
*
だが、
壊れていない。
*
なぜなら。
*
筋肉が、
世界を、
支えているからだ。
*
魔王オーマの、
息が、
荒くなる。
*
超筋肉が、
限界を、
訴える。
*
だが、
止まらない。
*
竹助も、
同じだ。
*
だが、
違う点がある。
*
竹助は――
楽しそうだった。
*
「……オーマ」
*
「……まだ……」 「……いけるな?」
*
魔王は、
笑いながら、
血を吐く。
*
「……当然だ……」
*
「……筋肉が……」 「……そう言っている……」
*
二人は、
同時に、
構える。
*
次の一撃は――
*
決着を、
世界に刻む。
*
誰かが、
遠くで、
呟いた。
*
「……これ……」 「……終わったら……」
*
「……服……」 「……残ってるかな……」
*
誰も、
答えなかった。
*
なぜなら。
*
次の衝突で、
世界が、
さらに一段、
震えることを、
全員が知っていたからだ。




