表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/31

20筋 魔王の筋肉、理論を超える

魔王オーマは、

深く――息を吸った。

それは詠唱ではない。

魔力の収束でもない。

筋肉に、空気を送り込む呼吸。

周囲の魔族たちが、

異変に気付く。

「……魔力反応が」 「消えていく……?」

参謀ボウサンが、

目を見開く。

「いや……違う」 「消えているのではない」

「――吸われている」

魔王の体表から、

淡い光が立ち上る。

魔法の輝きだ。

だが、

術式は展開されていない。

「……まさか」

ボウサンの喉が、鳴る。

「魔法を」 「筋肉に……」

魔王は、

ゆっくりと腕を上げる。

その腕に、

魔法陣はない。

代わりに――

筋肉の隆起が、

異常なまでに強調されていく。

「魔法とは」

魔王が、語る。

「本来、外に放つものだ」

「だが」 「内に留め」 「鍛え」 「圧縮すれば……」

魔王の筋肉が、

鳴った。

ミシ、ではない。

ゴゴ……

と、低く。

「――こうなる」

瞬間。

魔王の姿が、

ブレた。

「……消えた!?」

冒険者が叫ぶ。

違う。

跳んだ。

魔王は、

一瞬で――

竹助の眼前にいる。

「速っ……!」

神官が、思わず声を上げる。

魔王の拳が、

振るわれる。

だがそれは――

ただの拳ではない。

拳の軌道に、

魔力の残光が走る。

魔法強化。

だが、

外付けではない。

筋繊維一本一本に、魔法が絡みついている。

――ドォン!!

直撃。

竹助の体が、

後方へ――

吹き飛んだ。

「竹助ッ!!」

神官が叫ぶ。

竹助は、

地面を抉りながら、

数十メートル後退する。

……だが。

「……」

ゆっくりと、

立ち上がる。

腹部に、

赤く、

拳の跡。

「……これは」

竹助が、

呟く。

「筋肉に」 「魔法を……?」

魔王は、

肩で息をしながら、

笑う。

「そうだ」

「私は」 「世界最強の魔法使いだ」

「ならば」 「その全てを」 「筋肉に、捧げてみた」

観戦していた者たちが、

言葉を失う。

「……そんな」 「理論、聞いたことが……」

ボウサンが、

震える。

「理論に」 「“捧げる”という概念は……」

「理論は」 「越えるためにある」

魔王は、

淡々と言う。

再び、踏み込む。

今度は、

地面が爆ぜた。

魔法ではない。

魔王の脚力に、

魔法が同調しただけだ。

魔王の拳。

竹助のガード。

――ガァンッ!!

衝撃。

竹助の腕が、

痺れる。

(……重い)

(さっきより……)

魔王は、

連打に入る。

一撃一撃が、

魔法級。

「はああっ!!」

ドン! ドン! ドン!

拳が、

風を裂き、

空気を潰す。

竹助は、

後退しながら、

受け続ける。

冒険者が、

叫ぶ。

「押されてる……!」

魔族が歓喜する。

「魔王様が……」 「勇者を……!」

魔王は、

感じていた。

(……届いている)

(だが……)

(まだ、足りない)

「……竹助内人」

魔王は、

拳を振るいながら、

言う。

「私は」 「お前を、越えたい」

「そのためなら」 「魔法の王であることも――」

ズン

魔王の筋肉が、

さらに――

膨張する。

魔力の光が、

筋肉の奥へ、

完全に沈み込む。

「……!?」

ボウサンが、

叫ぶ。

「魔力反応が……」 「消失……!?」

違う。

融合だ。

「お前が聖筋肉なら

――私は超筋肉だ」

魔王が、

静かに呟く。

その瞬間。

魔王の存在感が、

変わった。

圧倒的。

だが、

暴力的ではない。

純粋な“重さ”。

魔王が、

一歩踏み出す。

――ドン

それだけで、

周囲の者たちの衣が、

はためいた。

竹助は、

息を吐く。

「……来たな」

魔王は、

拳を構える。

「これが」 「今の私の、全力だ」

竹助は、

拳を握り直す。

「……面白い」

そして、

静かに言う。

「だが」

「俺の筋肉は」 「まだ」 「喜んでいる」

次の瞬間。

二人が、

同時に、踏み込んだ。

――世界は、

次の衝突に、

耐えられる準備をしていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ