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19筋 筋肉、最初の衝突

踏み込み。

それは、ほぼ同時だった。

次の瞬間。

――ドォンッ!!

音が、遅れて届いた。

空気が圧縮され、

衝撃波となって、

平原を舐めるように広がる。

観戦していた冒険者たちは、

全員、膝をついた。

「ぐっ……!」

「な、何が……!」

神官が、必死に結界を張る。

だが、

魔法陣は――

ミシッ

悲鳴を上げた。

「耐えられない……!」 「筋肉の衝突です!!」

二人の拳が、

真正面から――

ぶつかった。

拳と拳。

それだけ。

なのに。

バキィィィン!!

衝突点から、

白い光が走る。

魔力ではない。

聖力でもない。

筋繊維の共鳴だ。

魔王の拳は、

重い。

世界を滅ぼせる魔力を、

全て内側に溜め込んだような、

圧倒的な質量。

だが。

(……止まらない)

魔王の瞳が、

わずかに揺れる。

竹助の拳は、

軽い。

無駄がない。

だが――

抜けない。

「……っ!」

魔王が、歯を食いしばる。

拳の奥で、

筋肉が――

歓喜している。

(……そうか)

(これが……)

(“語り合い”か)

二人は、

同時に、

後退する。

一歩。

二歩。

それぞれ、

地面に深い足跡を残す。

竹助が、

肩を回す。

「……いいな」 「よく、締まってる」

魔王の眉が、

ぴくりと動く。

「……評価か?」

「事実だ」

竹助は、

即答した。

魔王は、

低く笑う。

「光栄だな」 「筋肉の勇者に、そう言われるとは」

次の瞬間。

魔王が、

消えた。

いや――

踏み込んだだけだ。

だが、速すぎた。

「来る!」

元盗賊の1人が、

本能的に叫ぶ。

魔王の拳が、

竹助の側頭部を狙う。

魔法強化なし。

ただの――

筋肉の一撃。

竹助は、

腰を落とす。

クラウチング。

そのまま、

体を捻る。

ゴッ!!

拳が、

頬をかすめる。

その風圧だけで、

後方の地面が、

抉れた。

冒険者が、

震え声で叫ぶ。

「当たってないのに……!」

竹助は、

そのまま、

肘を叩き込む。

――ドンッ!!

肘打ち。

短距離。

だが、

密度が異常。

魔王は、

腕で受ける。

ミシィッ

骨ではない。

筋肉が、鳴いた。

「……ぐっ!」

魔王が、

数歩、下がる。

観戦していた魔族が、

息を呑む。

「受けたのに……」 「魔王様が……」

魔王は、

腕を振る。

違和感を、

振り払うように。

「……なるほど」

魔王は、

呟く。

「“鍛え方”が……」 「違うな」

竹助は、

笑わない。

ただ、

真剣だ。

「魔法を、使わないのか?」

竹助が、聞く。

魔王は、

首を横に振る。

「まずは」 「筋肉で、話そう」

その返答に、

竹助の目が――

輝いた。

「そうこなくちゃな」

竹助が、

一歩踏み出す。

――いや。

反復横跳びだ。

左右。

左右。

速度が、

異常に上がる。

「……分身!?」

冒険者が叫ぶ。

違う。

目が、

追いついていないだけだ。

魔王は、

視線を動かさない。

感覚で――

捉える。

「……来た」

魔王が、

背後に拳を振るう。

ドンッ!!

空振り。

だが、

拳圧が――

竹助の残像を、

吹き飛ばす。

竹助は、

真横。

「惜しい」

次の瞬間。

腹に、拳。

――ゴォンッ!!

鈍い音。

魔王の体が、

大きく揺れる。

「魔王様ッ!!」

魔族が叫ぶ。

魔王は、

歯を食いしばりながら、

笑った。

「……いい」 「実に、いい」

そのまま。

魔王は、

竹助の腹に、拳を叩き返す。

――ズドンッ!!

竹助の体が、

後方へ――

「――止まった?」

誰かが、呟く。

竹助は、

腹筋に力を入れたまま、

微動だにしない。

「……効いた」

竹助は、

正直に言った。

「だが」 「足りない」

魔王の目が、

見開かれる。

「……ならば」

魔王は、

両拳を、

地面に叩きつける。

ドォォン!!

大地が、

隆起する。

魔法ではない。

筋肉で、叩いただけだ。

「次は」

魔王が、

ゆっくりと立ち上がる。

「少し」 「出力を、上げよう」

竹助は、

拳を握り直す。

「歓迎する」

二人の間で。

空気が――

悲鳴を上げた。

戦いは、

まだ――

始まったばかりだった。

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