表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/31

9筋 筋圧の前では、誇りも脱げる

王都冒険者ギルド。

最上位ランクの席に、一人の男が座っていた。


ザッコス。

若くしてAランクに到達した、エリート冒険者。

最新鋭の魔導装備を身に纏い、常に完璧な姿でいることを信条としている。


彼は、噂を聞いて鼻で笑った。


「筋肉? 笑わせるな」

「魔法と装備こそが、力の本質だ」



その日、ギルド訓練場に竹助が現れた。

神官が同行している。


ザッコスは、立ち上がった。


「貴様が勇者か」

「筋肉が自慢のようだな」


竹助は、落ち着いて答える。


「通りすがりの筋肉だ」


「くだらん」


ザッコスは剣を抜く。


「筋肉など、まやかし」

「俺の装備は、竜の鱗と魔導合金で作られている」

「圧力も衝撃も、完全に制御できる」


周囲の冒険者が、固唾を呑んで見守る。



「来い」


ザッコスが踏み込む。


同時に、魔力が装備を巡る。

防御結界、衝撃吸収、反動制御。


完璧な準備。


だが――


竹助は、動かない。


「……?」


ザッコスが剣を振り下ろした、その瞬間。


竹助が、一歩踏み込んだ。


殴らない。

触れない。


ただ――


筋圧。



――ボンッ!!


空気が弾けた。


次の瞬間。


「な……!?」


ザッコスの鎧が、耐えきれずに悲鳴を上げる。


胸当てが割れ、

肩当てが弾け、

魔導ベルトがちぎれる。


「ま、待て――!」


装備が、次々に――

自壊していく。



最後に残ったのは。


――ザッコス本人。


全ての装備が、筋圧に耐えられず破れ去っていた。


沈黙。


風が、通り抜ける。


「……」


誰も、笑わない。


ザッコスは、青ざめた。


「お、俺の……装備が……」


「鍛え方が、足りなかったな」


竹助は、静かに言う。


「装備も、筋肉と同じだ」

「外側だけでは、意味がない」



ザッコスは、膝をつく。


「……俺は……」

「強いと思っていた……」


「間違ってはいない」


竹助は頷く。


「だが、頼りすぎた」


彼は視線を外し、言葉を添えた。


「プロテインが足りていないのは……」

「装備の方だった」



神官が慌てて外套を差し出す。


「ど、どうぞ……!」


ザッコスはそれを受け取り、震える声で言った。


「……もう一度……」

「基礎から、鍛え直す……」


竹助は、背を向ける。


「それでいい」



その日、冒険者ギルドに新たな注意書きが追加された。


――勇者タケスケ・ウチトと対峙する際、

――装備の耐久保証は無効。


ザッコスは

「まずは自分を鍛える」と再出発した。


誰も、笑わなかった。


筋肉は、嘘をつかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ