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第36話 エコー・ヴォイドの真実

その光景を目の当たりにしたエコー・ヴォイドの巨大な影が、初めて動揺を見せた。


「これが…真の響き合いか」


その声に、初めて恐怖が混じっていた。

完全なる無音、絶対的な静寂を目指していた存在が、響き合いの美しさに圧倒されている。

自分が否定しようとしていたものの真の価値を、初めて理解したのだった。


光の中で戦うキールたちの姿は、もはや個別の存在ではなかった。

彼らは一つの大きな調和となり、それぞれの個性を保ちながらも、完璧に響き合っていた。

三つの世界の特性が一人一人の中で融合し、これまで想像もできなかった力を発揮している。


キールの概念具現化が、仲間たちとの絆そのものを具現化する。


アリアの共鳴が、愛情という目に見えない力を実在のエネルギーとして現出させる。


リオンの加速が、希望の光速を越えた速度で敵に迫る。


ユーリの分析が、可能性という抽象概念を数式として実体化させる。


セレナの予知が、運命そのものを味方に付ける。


ヴィクターの統制が、混沌を完璧な秩序へと昇華させる。


そして何より、三つの世界の調和、平穏、多様性が、一つの巨大な響きとなって宇宙を震わせていた。


エコー・ヴォイドの影が震え始めた。

そして、ついに真実を告白する。


「私は…虚無王の絶望の結晶だった」


その告白は、戦場にいるすべての者を驚愕させた。


「完全なる孤独への恐怖から生まれた分身…虚無王の真の恐怖は破壊ではなく、誰とも響き合えない絶対的孤独だったのだ」


エコー・ヴォイドの正体が明らかになった瞬間、キールの心に深い理解が芽生えた。

敵もまた、響き合いを求めていたのだ。

しかし、その方法を知らずに、孤独の恐怖に支配されてしまったのだ。


「君もまた、響き合いたかったんだな」キールが優しく語りかける。

「でも大丈夫だ。今からでも遅くない」


キールたちの真の絆と完璧な響き合いを目の当たりにしたエコー・ヴォイドは、自分の存在の意味を理解した。


破壊ではなく、創造。

孤独ではなく、調和。

絶望ではなく、希望。


三重奏の光がエコー・ヴォイドを包み込む。それは攻撃ではなく、救済だった。

虚無の化身は、ついに真の平安を得て、美しい光の粒子となって消えていく。


しかし消滅の瞬間、その光は一直線に向かった先があった。虚無王本体が封印されている古い石棺。

エコー・ヴォイドの光の粒子が石棺に吸い込まれていく。


「虚無王本体の中で…何かが変化し始めている」


セレナの予知能力が新たな未来を感知していた。

彼女の表情には困惑と希望が混在している。

「これまでとは全く違う未来が見える…虚無王が、変わろうとしている」


その変化が意味するものは、まだ誰にも、完全にはわからなかった。

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