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第29話 二つの世界の絆

カコフォニクスが元の姿に戻った瞬間、音の世界全体に変化が起きた。


空の紫色はより深く鮮やかになり、まるで夕暮れの空に無数の星がきらめいているようだった。

結晶でできた地面は内部から柔らかな光を放ち、足音に合わせて美しいメロディーを響かせる。

神殿の天井に浮かんでいた楽器たちも、今度は真の調和を奏で始めた。

風さえも音楽を運んでいる。


遠くから聞こえてくるのは、音の世界に住む無数の生き物たちが喜びを歌う声だった。


「あなたたちのおかげで、私たちの世界が救われました」

ハルモニアが深く頭を下げた。


その美しい顔には、安堵と感謝の涙が光っている。

「何かお礼を…私たちにできることがあれば、何でも言ってください」


キールが首を振った。

「お礼はいらない。でも、もし可能なら…」

彼は神殿の美しい景色を見回しながら、慎重に言葉を選んだ。


「この世界と俺たちの世界を繋ぐ、永続的な道を作れないだろうか?一時的な扉ではなく、いつでも行き来できるような」

アリアが続けた。

「お互いに学び合えることがたくさんありそうです。音の力と創造の力、共感の力と調和の力…きっと素晴らしいものが生まれるはず」


カコフォニクス―今は穏やかな音楽の賢者の姿をしている―が深く頷いた。


『それは素晴らしい提案ですね。音の力と、あなたたちの創造の力を組み合わせれば…これまでにない新しい魔法が生まれるかもしれません』


セレナが目を輝かせ、予知の力を働かせる。

「私の予知でも見えます」

彼女の声は興奮に満ちていた。

「二つの世界が協力することで、さらに大きな脅威から守られる未来が…複数の世界が手を取り合う、美しいビジョンが見えます」


ヴィクターが興味深そうに身を乗り出した。

「さらに大きな脅威?虚無王のことか?」


ハルモニアの表情が一瞬曇った。

「実は…虚無王は、この世界にも分身を送り込もうとしていたのです」

彼女の声が小さくなる。

「でも、音の力は虚無の力と根本的に相性が悪いので、今まで侵入することができませんでした。音は『存在』の象徴ですから、『無』とは対極にあるのです」


ユーリが計算機を取り出し、複雑な数式を入力し始める。

「なるほど…つまり、音の世界の力を借りることができれば、虚無王への対策がさらに強化される可能性があるということですね。音の障壁を張れば、虚無の侵食を防げるかもしれません」


リオンが嬉しそうに笑った。

「新しい仲間と新しい冒険か。楽しくなりそうだね!」


キールとアリアが再び手を繋いだ。

今度は、これまでで最も重要な創造を行うために。


【エンボディメント】と【レゾナンス】の力が融合し、今度は音の世界の住人たちの力も加わった。

ハルモニアとカコフォニクスが美しいハーモニーを奏で、それがキールとアリアの創造力を導いていく。

空中に現れたのは、これまでとは比較にならないほど美しい門だった。

レガリア学院の魔法と音の世界のメロディーが完璧に調和した、虹色に輝く巨大なアーチ。


その表面には両世界の文字で「永遠の調和」という言葉が刻まれている。

門の向こうに、レガリア学院の見慣れた風景が見えた。


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