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第25話 異世界への扉

「確かに聞こえました」リオンが剣の柄を握りしめながら言う。

「女性の声で、とても苦しそうでした」

ユーリも魔導具の解析結果を見つめながら頷く。


「音声パターンを分析した限り、向こう側から発せられた声で間違いありません。しかも、ただの助けを求める声ではなく...何か切迫した状況にあるようです」


しかし、グレイソン研究員の表情は重く、慎重そのものだった。

長年の研究経験が、未知への軽率な行動に警告を発している。


「諸君、気持ちは理解できるが、未知の異界への侵入は想像以上に危険です。まずは無人探査機を送り込んで詳細な環境調査を行い、安全性を確認してから─」

「でも」

アリアが研究員の言葉を遮る。

彼女の瞳には強い意志の光が宿っていた。


「誰かが苦しんでいるのが分かるのに、調査だけで時間を費やしている間に手遅れになってしまうかもしれません。私たちには力があります。それを困っている人のために使わないで、何のための力でしょうか」


セレナが目を閉じ、深く集中し始める。

【プロフェシー】の能力を最大限に発動させ、向こう側の世界で起こりうる未来を探ろうとしているのだ。

彼女の周りに淡い光の粒子が舞い始め、空気中に魔力の波紋が広がっていく。

しばらくして、セレナがゆっくりと目を開いた。


「見えました。向こう側に行っても、私たちに致命的な危険は...ありません。むしろ、私たちの力がそこで必要とされています」

彼女の声には確信があった。


「ただし」

彼女の表情が少し曇る。

「帰ってくる時に、私たちの中で何か大きな変化が起こります。それが良いものか悪いものかは...まだ見えません」


ヴィクターが大きく息を吸い、決断を下す。

彼の瞳には迷いがなかった。

「行くぞ。ただし条件がある」


彼は仲間たちを見回しながら続ける。

「全員で行動し、常に互いを確認し合う。何か危険を感じたら、即座に撤退する。誰か一人でも反対したら、その時点で作戦中止だ。いいな?」


全員が頷く。


チーム結成以来培ってきた絆と信頼が、この瞬間に試されようとしていた。

六人は手を繋いだ。

キールが先頭に立ち、亀裂へと向かう。


光る扉の向こう側から吹く風が、彼らの髪と服を揺らしている。


「みんな、準備はいいか?」キールが振り返ると、全員が力強く頷いた。

「行こう」


六人は手を握り合ったまま、光の亀裂をくぐり抜けた。


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