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第22話 絆の力

「【ドミニオン・クラッシュ】!」


ヴィクターの最大奥義が発動された。

闘技場の壁、観客席、照明魔法陣——ありとあらゆる物質が武器となってキールたちに襲いかかる。


「これは……規模がやばすぎる」

ユーリが青ざめる。


だが、キールとアリアには恐怖はなかった。

虚無王の残滓との戦いを乗り越えた今、二人の絆はかつてないほど強固になっていた。


「行こう、アリア」

「はい、キール」


二人が手を取り合うと、新たな共鳴が始まった。

【エンボディメント】と【レゾナンス】——具現が創造に、共鳴が調和となり、力が完全に融合していく。


「【共鳴創造レゾナンス・クリエイション】!」


キールの具現創造力がアリアの共鳴調和能力と一体となり、これまでにない巨大な魔法陣が空中に展開される。


それは美しく、神々しく、そして圧倒的な力を秘めていた。


「何だ、あれは……」

観客席からどよめきが起こる。


ヴィクターも驚愕の表情を浮かべた。

「まさか、あの二人……」


巨大な光の盾が展開され、先輩の【ドミニオン・クラッシュ】を完全に受け止める。

だが、それだけでは終わらなかった。


「【反響波動エコー・ウェーブ】!」


アリアの【レゾナンス】が、ヴィクターの攻撃を解析し、その力を反転させる。

ヴィクターが支配していた物質たちが、今度はヴィクターたちに向かって襲いかかった。


「なんと……俺の力が逆用されるとは」

ヴィクターが苦笑いを浮かべる。


しかし、彼も学院最強クラスの実力者だった。

【ドミネート】を解除し、純粋な剣技で反撃に転じる。


「君たちの成長、見事だった。だが——」

ヴィクターの剣が光を纏い、凄まじい速度で二人に迫る。


「俺も全力で応えよう!」


激しい攻防戦が始まった。

キールが【エンボディメント】で武器を具現創造し、アリアが【レゾナンス】で軌道を予測し、二人でヴィクターの攻撃に対抗する。


リオンも意識を取り戻し、【アクセラレーション】でサポートに回る。

ユーリは新しい魔導具で戦術支援を行う。


四人対四人の真剣勝負。

どちらも一歩も譲らない、白熱した戦いだった。


だが、徐々にキールたちに疲労の色が見え始める。

虚無王の残滓との戦いで消耗していたのだ。


「もう限界か……」


その時、観客席からエールが聞こえてきた。

「頑張れ、一年生!」

「キール君、アリアちゃん、負けるな!」


フィオナ姉さんの声も混じっている。

「あの子たち、よくやられているわ! 最後まで諦めちゃダメよ!」


観客席の声援が、キールたちに新たな力を与えていく。


「俺たちは……一人じゃない」

キールが立ち上がる。


「仲間がいる、応援してくれる人たちがいる」


アリアも頷く。

「私たちの戦いは、私たちだけのものじゃありません」


二人が再び手を取り合うと、今度は観客席からも微かな共鳴が感じられた。

学院中の人々の想いが、【レゾナンス】を通じて二人に集まってくる。


「これは……」

ヴィクターが目を見開く。


「君たちは、みんなの希望を背負っているのか」


最後の激突が始まった。


「【絆の共鳴ボンド・レゾナンス】!」


キールとアリアの最終奥義が発動される。

それは二人だけでなく、チーム全体、そして観客席の想いすべてを込めた究極の協力技だった。


光の奔流がヴィクターのチームを包み込む。

だが、それは攻撃ではなく——包容だった。


「俺たちと一緒に、最高の試合を作り上げよう」


キールの言葉に、ヴィクターが微笑む。


「面白い後輩たちだな」


両チームが同時に最大の技を放つ。

光と光がぶつかり合い、闘技場全体が眩い輝きに包まれた。


煙が晴れると——


両チーム全員が立っていた。

疲労困憊だが、全員が満足そうな笑顔を浮かべている。


「引き分け……ですかね」

アリアが呟く。


「ああ、それが一番いい結果かもしれない」

ヴィクターが手を差し伸べる。


「いい試合だった、キール、アリア」


握手を交わす中、観客席から割れるような拍手が響いた。


勝敗はつかなかったが、誰もが認める名勝負だった。


そして、セレナの予言していた「重大な選択」——それは「勝利を取るか、仲間を守るか」ではなく、「みんなで最高の戦いを作り上げる」という第三の選択だったのだ。

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