表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/44

第17話 暗雲

対抗戦まで一週間となった朝、キールは不安な夢で目を覚ました。


夢の中では、再び灰色の影と対峙していた。

だが今度は一体ではなく、無数の影が湧き出し、仲間たちを飲み込んでいく——。


「大丈夫ですか?」

廊下でアリアと顔を合わせると、彼女が心配そうに声をかけてきた。


「ああ、ちょっと悪夢を見ただけだ」

「夢の内容……聞かせてもらえますか?」


アリアの【レゾナンス】が軽く発動し、キールの心の状態を読み取る。


「虚無王の影響、まだ完全には消えていないようですね」

「影響?」

「あの欠片を体内に取り込んだとき、あなたの魔力回路に微かな変化が生じました。それが夢に現れているのかもしれません」

「そうか……もう一つの欠片は俺の中に……」


二人が朝食のために食堂に向かうと、いつもより静かな雰囲気だった。

学生たちが小声で何かを話し合っている。


「何かあったのかな?」


リオンがテーブルに座ると、隣の学生が振り返った。


「昨夜、学院の地下で異常な魔力反応があったそうです」

「地下?」

「詳細は分からないけど、教官たちが緊急招集されて……」


その時、食堂の入り口にグレイソン研究員が現れた。

彼の表情は深刻で、キールたちを見つけるとすぐに駆け寄ってきた。


「君たち、すぐに私の研究室に来てください」


研究室は普段より慌ただしく、複数の教官が魔法陣の分析に追われていた。


「昨夜の件ですが……」グレイソンが重い口調で切り出す。「学院地下の封印庫で、魔力の暴走が発生しました」

「封印庫?」

「危険な魔法アイテムや禁忌の研究資料を保管している場所です。しかし問題は——」


グレイソンが机の上の報告書を指差す。


「暴走の原因となった魔力波動が、君たちが封印した虚無王のものと酷似していることです」


キールとアリアは顔を見合わせた。


「でも、虚無王は確実に封印したはずです」

「ええ、それは間違いありません。しかし……」


グレイソンは別の資料を取り出す。


「虚無王に関する古い記録を調べたところ、興味深い記述を発見しました」


資料には古代文字で何かが書かれている。


「『虚無王は一つにして多数。分身を各地に配置し、一つが倒れても他が力を引き継ぐ』……」

「つまり、他にも分身がいるということですか?」

「その可能性が高いです。そして昨夜の反応は——」


突然、研究室の魔法陣が激しく点滅した。

警報音が鳴り響き、教官たちが慌てて術式を確認する。


「地下で再び異常発生!」

「今度はより強い反応です!」


グレイソンの表情が青ざめる。

「まずい……封印庫の最深部で何かが起きている」


その時、セレナが研究室に飛び込んできた。

「グレイソン先生! 予知で見ました!」

彼女の瞳は紫色に輝き、恐怖に満ちていた。


「地下に……灰色の影が現れます! それも一体や二体ではありません!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ