第16話 チーム結成
対抗戦の話が広まると、様々な学生がキールとアリアに声をかけてきた。
「僕たちとチームを組みませんか?」
最初に申し出てきたのは、リオン・ハートだった。
「僕の【アクセラレーション】と君たちの力を組み合わせれば、きっと面白い戦術ができます」
「リオンか……」キールは考え込む。
「でも、騎士科の君が俺たちと組んで大丈夫なのか?」
「実は、僕も特別枠なんです」リオンが苦笑いを浮かべる。「学年主席の座をかけて、上級生に挑戦することになったので」
翌日、図書館で戦術を検討していると、ユーリ・ノヴァクがやってきた。
「君たち、チームメイト探してるんだって?」
「ユーリさん、どうして?」
「実は僕も参加することになってね。魔導工学科の代表として」
ユーリは厚い本を抱えている。
「君たちの能力と僕の魔導具を組み合わせれば、これまでにない戦術が可能になる」
彼が取り出したのは、複雑な回路が刻まれた金属製の腕輪だった。
「これは『共鳴増幅器』。アリア君の【レゾナンス】の効果範囲を拡大できる」
アリアが腕輪を手に取ると、微かな振動を感じた。
「すごい……魔力の流れが見えやすくなります」
「僕のタレントは【アナライズ(解析)】。対象の構造や弱点を瞬時に把握できる」
ユーリの瞳に光が宿る。
「君の【エンボディメント】で武器を作り、僕が敵の弱点を解析し、アリア君が全体をサポートし、リオン君が決定的な一撃を加える……完璧な布陣だと思わないか?」
四人でチームを組むことが決まり、本格的な訓練が始まった。
最初は連携がぎこちなかったが、日を重ねるごとに息が合うようになっていく。
キールの武器創造が速くなり、ユーリの解析が精密になり、アリアのサポート範囲が拡大し、リオンの加速技術が洗練されていく。
「いい感じね」
訓練を見学していたフィオナが声をかけてくる。
「でも、対戦相手も強敵ぞろいよ。特に三年生チームのエース、ヴィクター・シュトラウスには注意して」
「ヴィクター?」
「【ドミネート(支配)】のタレントを持つ、学院最強クラスの学生よ。魔物や人工物を意のままに操ることができる」
フィオナの表情が険しくなる。
「彼には私も苦戦させられたことがある。油断は禁物よ」
ある日の訓練後、セレナが訓練場に現れた。
「お疲れ様です」
「セレナ、どうしたんだ?」
「あなたたちの訓練を見せていただきました」彼女の瞳が紫色に光る。
「一つ、忠告があります」
「忠告?」
「対抗戦の決勝で……あなたたちは重大な選択を迫られます」
セレナの声が重くなる。
「勝利を取るか、仲間を守るか……その選択が、未来を大きく変えることになります」
「どういう意味だ?」
だがセレナは答えず、静かに去って行った。
残された四人は、不安と期待の入り混じった気持ちで顔を見合わせた。
対抗戦まであと二週間。
彼らの運命を決める戦いが、刻一刻と近づいていた——。




