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32話 作戦開始

「シズシズは仲のいい友達っていました?」


 昼時。〈裏店〉所員はみんなで会議室の机を囲んでいた。一覚が池戸屋(いけどや)というところからカツ丼を全員分買ってきてくれたのだ。


「わたしはそもそも友達が一人もいなかったわ」

「あ、それは失礼……」

「俺は悪友どもとあちこちで悪さしてたぜ。ふははは」

「いやいや、自慢するところじゃないですよ一刀太さん。むしろかっこ悪いですからねそれ」

「だから今は反省してるぜ。森の中の神社を荒らそうとして入ってったら、でっかい鈴に妖魔が取り憑いていやがったんだよなあ。俺が襲われてるうちに他の奴らは逃げてっちまった」

「薄情な仲間ね」

「普通は逃げるもんっすよ? 奥様は小さい頃から浄魔師として育てられたんでしょ? 戦える奴はそれでいいけど、一般人は抵抗できないんだから逃げるのが正解なんす」

「そ、そう……」


 また常識外れなことを言ってしまった。


「明星さんもどこかで妖魔に襲われたのよね?」

「僕はこれでも陸軍にいたのです……。ただ、野営している時に部隊が襲われまして……。かなりの人数が殺されましたが、僕は半妖になるだけで生き延びたんです。軍からは追い出されましたけど……」

「軍隊は半妖とかに厳しそうよね」

「おっしゃるとおりです。千景様に拾ってもらえてよかった……。狙撃に自信があったので、妖力の銃弾を撃てる今の仕事は自分に合っていると感じます……」


 そういえば以前会った時の明星は狙撃銃を背負っていた。

 千景が湯飲みを置く。


「今夜はどんな敵が出てくるかわからん。だが、格闘に特化した静乃、剣術の心得がある俺、野太刀を使える一刀太、狙撃ができる明星と、これだけ特徴の違う浄魔師がそろっていれば負けることはないはずだ」

「あたくしは敵の観察を中心に立ち回りますね~」


 一覚がメガネを持ち上げる。


「私は霊力による遠距離攻撃で支援いたします」


 このメンツなら負けない。静乃も千景と同じ気持ちだった。


「ところで静乃、カツ丼はどうだ? 初めてなんだろう?」

「すごくおいしい……。世の中はわたしの知らないものだらけね」

「お前の世界は極端に狭かったんだ。どんどん経験していくといいぞ。こういうささやかなものでもな」

「……うん。ありがとう」


     ☆


 日が落ちると、〈裏店〉は行動を開始した。


「幽貴、よろしく頼む」

「お任せください」


 そこに黒い自動車がもう一台やってきた。


「ようオメーら、元気でやってんか?」


 静狩景達であった。今日はしっかり軍服である。


「兄上が来たということは、作戦に参加してくださるんですか?」

「俺しか手が空いてなかったからな。静狩家も人手不足よ」

「それでも兄上が一緒なら心強い。よろしくお願いします」

「おう。んで、俺の車に乗るのは誰だ」

「一覚と一刀太、明星の三人です」

「女子は?」

「こちらに乗ります」


 景達はさみしそうな顔をした。


 ……一覚さんたちが不憫だわ……。


 ただ車に乗るだけなのに不満を表明されるなんて。


「行きましょう、景達様」

「お願いしまっす」

「座席の隅で小さくなっています……」

「いや、気にすんな。堂々と乗ってくれ」


 景達の車に三人が乗り込んだ。静乃たちも幽貴の車に乗る。


「幽貴、ここが目標地点だ。わかるか?」

「ええ、問題ありません」

「よし、では出してくれ」

「了解」


 二台はつながって発車した。

 千景は手書きの地図をしばらく睨んでいた。

 すでにかなり暗くなっている。妖魔の活動は活発になってくる頃である。しかし民間人はあまり出歩かなくなるから行動はしやすい。


 隅田村に入ると、荒川の土手付近で止まる。


「降りよう」


 川の向こうは森になっており、その先に強力な妖魔の眠っている泉があるはずだ。


「静乃、今日はこれをかぶっておけ」

「ありがとう」


 千景から軍帽を渡された。最近の任務ではあまりつけていなかったので久しぶりだ。


「不思議といい組み合わせですよねえ。シズシズは和服と軍帽がぴったりというか」

「千景さんがくれたものだから大切にする。戦闘で破られないようにしなきゃ」


 静乃は軍帽をしっかりかぶった。


「千景様、隅田村には異変ありません」

「森の方も落ち着いてます」

「ご苦労」


 千景の横に晴月、雨月兄弟がやってきた。これで〈裏店〉の全員がそろったことになる。


「今夜は〈裏店〉の実力をとくと拝見させてもらうぜ。よろしくな」

「こちらこそ。――では始めるか」


 千景は幽貴の肩をポンと叩いた。


「だから、もう仲間を呼び出してもいいぞ、幽貴」

「え……?」

「お前が〈虚呼(うろよばい)〉に情報を流していたのを掴んだ。今も、泉に行かせないよう戦力を配置しているはずだろう? 呼んでくれ。無駄な時間はかけない方がいいと思わないか?」

「あ、あ……」


 幽貴はおびえながら下がった。それに応じるように黒装束の人間たちが出てきて〈裏店〉を包囲する。千景は指の骨を鳴らした。


「妖魔は倒す。だが、お前らが先だ」

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