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【Epilogue】

『佳純、明後日だけどさあ』

「あ、どうなった?」

 大学の友人からの電話。

 普段の連絡はほぼメッセージアプリだが、声を聞いて話したほうがいいこともあるので電話も大切な手段だ。


『いや、ギリギリまでごめん! やっと新しいバイトの子来たから。明後日はちゃんと空けられたわ。先週から休みなしだもん、いくら夏休みだからって勘弁してよって感じ』

「そっか、よかったね。いま割とどこも人手不足だから、簡単に辞めて変わる子多いらしいけど」

 苦労話は聞かされていたので、口先だけではない慰めの言葉が出た。


『辞めるにしてもいきなりシフト無視して、店長が連絡したら『あ、辞めますー』って、他のバイトのことも考えてほしいよね〜』

「それはほんとにそう思う!」

 仲の良い友人グループでの遊びの約束を確認し、スマートフォンの通話をオフにする。

 ふと顔を上げると、自室の窓の向こうにはすっかり夜の帳が下りた東の空が広がっていた。

 ひときわ輝くあの星がベガ。そしてその斜め下……。


 二人で空を見上げて夏の大三角を教わったあの日、帰宅してから調べて知った。

 アルタイルが牽牛(けんぎゅう)、……つまり彦星だということを。

 七夕はもう一か月も前に過ぎた。離れていて会えなくとも、博己は彦星とは違う。

 いや、たとえ彦星だとしても、彼の織姫は佳純ではなかった。ただそれだけのことだ。

 白馬になんて乗っていなくてもいいから、佳純の『たった一人』をこちらから探しに行かないと。


 そう、今電話を掛けて来た友人に紹介を頼んでもいい。交友関係が広い上に責任感も強い彼女なら、安心して話を持ち掛けられる。

 女友達との関わりもとても楽しく大切だ。しかし、……それだけでは何かが足りない気持ちも日々強くなっていた。

 かけがえのないパートナー。愛と信頼を預けられる人。

 願わくば、一緒に星空を眺めて笑みを交わせる相手。


 佳純だけの彦星(・・)になり得る誰かを。


 ──今のあたしはもう、博己(お兄ちゃん)の織姫になりたいんじゃない。ただ、お兄ちゃんとかおりさんみたいに「愛し合える人」とめぐり逢いたい。


 本心からそう思える佳純は、ようやく義兄への『想い』を振り切れた、……過去にできたのかもしれない。


 これから歩む道の先に、きっと佳純に掴める()がある。


                             ~END~


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