番外編⑦ 主義刹那によるパチンコ攻略法?『月代に零へ還る』
月末。
振り返らなくてもいいが振り返ることがある。戦績だ。
1日、マイナス〇万円。
7日、マイナス〇万円。
8日、プラス5000円。
11日、マイナス〇万円。
15日、プラス10000円。
17日、プラス20000円。
23日、マイナス〇万円。
27日、マイナス〇万円…………
…………ん~、あといつ打ったっけか。仕事帰りに打ってたときもあったようななかったような…………ちょい打ちのときは詳しく覚えてないんだよなぁ…………スロットはやってなくて、ほとんどパチンコだったことは記憶にあるんだが。
『——刹那、罠を張ってください』
「んぁ? ほいほーい」
ボイスチャット越しに銀髪の魔女、シルバの声による指示。
淀みなくコントローラーを操作して目の前の竜が嵌るように落とし穴を仕掛ける。一昔……いや、もうちょい前のハンティングアクションゲームに付き合っている最中である。
『今じゃ! かかれぇーい!』
黒髪の魔王のアバターである大剣を担いだ女性キャラが竜の頭をぶった切る。俺は俺で遠方から狙撃を繰り返してダメージを稼ぐ。
『遅いですよ刹那、怯まなかったら失敗していました』
「収支計算してたもんでな」
『ほぇ~刹那さんって収支つけてるんですかぁ?』
ハンマーを担いだ聖女のアバターであるおっさんが魔王を避けつつ竜の頭へ追撃を加える。
「んぁ? 俺だって勝ち負けくらいつけてるわぃ」
『だぁっはっは、トータルなら買っとるじゃろ?』
それはそう。
トータルでは勝っているはず。しかし直近の負け分というのはどうやっても頭に残るのだ。勝った時の記憶が鮮明な分、負けた時の記憶が少ないからどうやって負けたか覚えてないけどな!
『無駄口叩いていないで攻撃してください』
「お前なぁ、深夜に狩ろうなんてつってもう同じ奴30回目だぞ。雑談でもしてなきゃおかしくなっちまうわ」
『30回程度で音を上げるとは…………弟子としてまだまだですね』
血気盛んに双剣で立ち回る魔女のアバターは依然勢いが衰えない。というより、同じクエストで同じ動きをしているので気持ちが悪い。ホントにこいつ異世界の魔女か?
「大体お前らは収支つけてないのかよ」
『最後に勝っていれば問題ないぞぃ』
さすが魔王、まさにトータル理論。
『わたしはきっちりつけていますぅ』
「意外ぃ……で、聖女様は勝ってんの?」
『…………あ! 足引きずってますぅ!』
さらっと流されたが、やはり聖女には闇を感じる。
『逃がさないでください。移動されると1分のロスです』
「1分のロスはともかく、お師匠は収支つけてんのかよ」
『愚問ですね、偉大なる研究に費用はつきものです』
…………俺といる時、割と勝っているようで実際あんまり勝ってないんだよなシルバ。ちょいプラス……くらいなのか?
『1つの勝負毎に一喜一憂していても仕方ありません。そこは魔王の言う通り、最後に勝っていれば問題ないのですから』
『うむ!』
『その通りですぅ、元気出してくださぁい』
クエストクリアと共にそれぞれが俺を励ます。
…………いや、落ち込んでいるわけじゃないんだが? 月末って色々振り返らない? って話なんだが? トータルで勝ってるが?
――なにより、今月はもう終わりだ。
0:00、月が変わる合図。
それはすべてのパチンカスに等しく魔法が発動する時――――
あえて名前を付けるなら、『月夜に零へ還る』……だ!
「うっし、月も変わったし収支リセットだ! 明日誰か打ちに行く奴いるか?」
『もち! 我はいくぞぃ』
『わたしも行きますぅ!』
行かない訳ないか。
「師匠はどうするよ」
『無論行きます。今月もまだ試すべき魔法が控えているので』
月が変わっても、パチンカスは変わらない。
今月は今月の戦いが始まる。先月の負けなど引きずっていられないのだ。
『その前にもう1回だけクエストに行きましょう、まったく玉が出ません』
「もぅ目ぇ疲れたぞ…………!」
結局深夜3時まで付き合う羽目になったが、翌日そこそこ勝てたので許すとした。
◇ ◇ ◇
参考機種:なし
一狩り行く台ならMH4のパチンコは好きでしたね。




