表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の魔女、現代でパチンカスになる  作者: ムタムッタ
番外編(後日談)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/226

番外編④(後編)主義刹那の波理論


 確変に入ったのだから楽しむもの……? いや、そんなはずないだろう。だって波だぜ?


 回転数は77、88、99、110……と何の動きもなく消化される。

 

「頼む、こい、来いっ!」


 111回転目、赤い演出。信頼度は足りないが、魔王の魔法が本当ならラストチャンスだ。


「来いやぁっ」


 ボタンプッシュで数字が揃う。

 いつもより心拍数が高い。左打ちのリーチよりドキドキしている。


「た、助かった……」

「だぁーはっはっは! ギリギリじゃったのう?」

「誰のせいでこんなヒヤヒヤしてると思ってんだ⁉︎」


 確変はリセット。もう一度、時の航海だ。え? なんでこんな焦ってんのかって?



 黒髪の魔王は確変突入後に魔法を開示した。



『この魔法のキモは回転を上げるごとに運命力がアップするんじゃよ。じゃから100回以内じゃ大して当たらん』

『そこもお前の仕業だったんかい』

『ヒキは個人差があるからの。まぁ代わりに確変に入ればゾロ目の低い方から幸運値が高くて終わりに近づけば……』

『……激寒?』

『そゆこと。さぁ波に乗り続けるぞぃ!』


 ……本来の幸運ツキをゾロ目に集中させる。しかもそれにも波があるときたもんだ。だから確変130回転なら111回が実質最後なのである……ふざけろ!


「確変で波に乗れなければもう一回左で波に乗る必要があるぞぃ…………あ、もちろん左打ちも波理論は適用あるからの」


 要するに確変駆け抜けたらゾロ目回転数で当たるまでダメってことで……波理論による縛りの究極魔法、やっぱ碌なもんじゃねぇ!


「これが我の《《はいぱ〜なみりろん》》による縛りを課した秘術、『同胞よ、時の波を征け(タイダル・ウェイブ)』じゃ」

「ドヤ顔で言いますよこの子はァ……」


 首の皮一枚で繋がる俺、悠々と波に乗り続ける魔王。

 周囲では波に乗り爆連する者、振り落とされてゾロ目の波を待つ者。


 いくら魔法とはいえ、()ひとつでこうも差が出るとはな。絶対に負けられない。だからこそ、早め早めに引きたいのだが……


「お願いしますお願いしますお願いしますっ」


 11、22、33……と、魔王の言うところの波の熱い回転数で当たらないと、聖女よろしく神に祈るばかり。


 半分を超える頃にはもうダメだ、と白目を剥き、少しでも前兆があればビクっと反応する身体に。そしてテンパイすれば先バレ以上の脳内物質が解放される。


「なんとかなれーっ!」


 数字が揃おうものなら何かいけない汁でも出ているような快感が押し寄せる。


「ンヒィ〜ッ!」

「さすが兄弟子ィ!」


 こうなりゃ波に乗ってるうちに爆連して捲ってやるぜぃ!!



 ◇ ◇ ◇



 場面転換の入った瞬間、勘の良い方々はお気づきだろう。

 『波』というものは、得てして収束するものだ。それが魔法だとしても……いや、魔法だからこそ、だ。


 1回目の確変は15連ほど重ね、その後は130回転からのやり直し。

 ある程度捲り余裕が出ていたのも束の間、真実に気付く。


 確変終了後は130回転からなのだ。


 つまり魔法の影響こそ少ないが11~99回転の恩恵がない。そして次にチャンスがあるのは222回転…………もし当たらなければ333回転。


 そして今、その333回転目である。

 チャンスアップなし、当否ボタン通常…………激寒! 祈りながらゆっくりとボタンに体重を乗せる、が。


 5 4 5


「落ちろよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

「そりゃ聖戦士じゃて」


 果てしなき回転数の航海。まさに波に乗れなければこの様だ。次は444回転??


「出玉だけが削れるぅ」

「だーっはっはっは! 暗礁に乗り上げとるな!」

「444回転過ぎた人が言うかぁ?」

「我のはいぱ~なみりろんは完璧じゃからな。必ず収束する」

「周りの阿鼻叫喚から目を逸らすなよ」


 もはや100回転先まで暇なので雑談。そしてもう一度周囲を見渡す。

 赤保留だろうが金保留だろうがチャンスアップ盛り盛りだろうがゾロ目でなければ当たることはない。なんとも無慈悲、無情か。こいつは鬼か悪魔か……あ、魔王だった。


 一部、魔法の影響を突破して全回転を出してる猛者もいるが。


「あれどうなん?」

「波の先を征くものじゃな。勇者になれるぞぃ」

「勇者の条件は全回転っすか……」


 勇者にならなくていいんで波来てください。

 微妙にプラスくらいじゃ帰れないんだッ!!


 欲望に呼応するように、台は脳を刺激する。


 ピィーキュルルルルルルル──

 

「んぉっ⁉」

「来た来た来たぁ~!」


 俺333、魔王555回転。

 引いていた波が、もう一度押し寄せるのだった…………



 ◇ ◇ ◇



 寄せては返す、確率の波。

 普通なら撤退も考えるが、むしろゾロ目で熱いなら打つのが我々の性…………むしろ本能。


 波は自分で引き寄せる。

 それが、俺……主義刹那おもよしせつなの波理論。

 え? 引き寄せたか?


「財布の厚みは変わらない」

「すごいの、あれだけやってお互いプラマイゼロじゃ」


 吐き出させては飲みこませ、出玉を確保しては吸い込まれ。爆連してはドはまりし…………何が言いたいかというと、


「これが…………確率の収束…………ッ!」

「初の秘術だったからのぅ、想定外じゃった…………」


 確変で連荘しても微妙なところで終わるせいで帰るに帰れず時刻は閉店前。終日打ち切ってプラスマイナスゼロ。いつもよりドキドキしながら打った影響か、疲労感がハンパではない。


「もうちょっと改良してくれよな~」

「うむぅ、イケると思ったんじゃが」

「オスイチ魔法でも作ってくれ」

「出オチ魔法じゃろそれ…………」

「くそ! 結構出ただけに納得できねぇ! 魔王ッ、明日も打つぞ!」

「望むところよ!」


 プラマイゼロなら実質勝ち。

 明日の勝負金が残ったと考えればいいだけだ!


 夏の戦いは始まったばかりである。



 ちなみに、クソ暑い真夏に別の国の魔王がやってきて、まーたパチンコ勝負をすることになるのだが……それはまた、別の話。



 ◇ ◇ ◇



 これにて番外編の更新も一旦終了です。

 スロットの比率が少ないのでスロットで何か書ければなと思いつつ。

 また更新してたら寄ってもらえると嬉しいです。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ