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異世界の魔女、現代でパチンカスになる  作者: ムタムッタ
打て。諭吉の続く限り

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Round 20 魔人戦②(中編)墨乃スミレによる真・スロット攻略法『世界より一歩先へ』(期待度☆☆)



「俺は今やつをほんのちょっぴりだが体験した。い……いや……体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……あ……ありのまま今起こった事を話すぜ!

 魔人は今日、対決のためスロットを打っていてビタ押しの合図が来たと思ったらいつのまにかビタ押しが決まっていた……

 な……何を言ってるのかわからねーと思うが俺も何をされたのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった……

 催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ……もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」






「馬鹿なことを言ってないでボーナスを揃えなさい」

「はいはい」


 シルバちゃんはボケすら汲んでくれない。

 完璧なビタ押しの隣で黒バー揃いのボーナスを引き当てながらの解説は不要だったらしい。


 左と中リールで右肩上がりに揃う黒バー、しかし……


「あっ」


 右リールでミス。ボーナスを揃えられない。


 ◯滑ってて草

 ◯初心者かwww

 ◯ビwギwナーw

 ◯ヘッッッッタ!


「うるせぇっ!」


 だから苦手なんだ。

 なんかこう、長縄跳びのタイミングを計るような感覚は慣れない。決してできないわけじゃないんだが……


 1回転ミスの後、無事に成立。その間にも魔人はビタ押しを決め効果音を響かせる。また、ほんのわずかに違和感。


「ボーナス図柄も止められない奴が対等に渡り合えるのかな?」

「くっそ、見てろ……!」


 ドゥドゥドゥドゥン――――♪


 俺と魔人、同時のことだった。

 レバーオン直後、まるで台も撮影を察しているかのように台はビタ押しを要求してくる。高鳴る鼓動、震える指先――そして、一押しする瞬間……またもや『何か』違和感が身体を包む。


 回胴は見事に滑り、リールは無様な停止図柄。



 〇よっ、期待通り!

 〇案の定下手くそで草

 〇お疲れさまでした

 〇終わったら教えて



 散々な言われようである。

 対照的に魔人はまたもやビタ押しを成功させている。なんだ……なんなんだこの違和感。


 そういやさっき、魔女の奴はなにか気づいてたらしいが……


「時を止めるとは、考えましたね」

「はっ⁉」

「さすがは銀髪の魔女、もう見抜いていたか」

「じ、時間停止ぃ~⁉」

「時を操ることができるのは魔女だけではないということだ。時を止める魔法……それが『静止する世界(タイムスタグネイト)』だ!」


 そうか……ビタ押しの瞬間に時間を止める魔法! タイミングを計るんじゃなくて、自分のタイミングで押してやがるのか。たかがスロットになんて事しやがる……


 こうなりゃ対抗して俺も……


「よし、なら早速――」

「やめておきなさい」


 銀髪の魔女に頬をぶにゅっと突かれる。


「時間を操るのは超高度な魔法です。当たりを引く魔法しかり、己の領分を越えた魔法は死に直結します」

「ス、スロットの話だよなこれ……?」


 仕方なくそのまま何度かビタ押しに挑むも、無策の目押しが成功するはずもなく……


「だったらどうすりゃいいんだよ⁉」

「短期間ながら、修行で培ったものがあるでしょう? それが今です。聖女との修行、思い出しなさい」

「ハハハハハハ、無駄無駄ァ! 超絶ビタ押しにひれ伏すがいいッ!」


 ええと……何したっけかなぁ。

 魔人の背後でカメラを回す聖女。柔和な表情で心配しているかと思いきや……眉間にシワを寄せ、鋭い眼光がこちらへ飛んでくる。


「ビ、ビタ押しを、これ以上ミスるな……ァッ!」

「ひっ」


 めっちゃ睨んでる。

 絶対聖女とか呼ばれてる奴がしちゃいけない顔してるぞ! ミスるなって言われても……あ、



『スイカをこぼすなぁっ!』

『無茶言うな! 適当打ちしかできないんだよ俺は』

『キエェェェェェェェ!』


 

 そうだった……いくつか考えてたけど、「スイカをこぼさない魔法」……あれを応用すれば!


「聖女様、あんがとよ! あのスロットの魔法使うぞ!」

「こぼすなァ……ふぇ? あ、あれですかぁ~?」


 素に戻ってくれた橙髪の聖女。呆気に取られている間に、懐から杖を取り出す。時は戻さないし、止めもしない。けれどビタ押しに必要なのは、時を操る事じゃねぇ!


「巡るは万象、過ぎるは我が利、引き留めることは叶わずともその先を征くことを我は望む。世界は我が背に回る――!」


 詠唱は思いつき……それっぽいことを言ってるだけだが間違いではない。輝く杖。2度目に解き放たれるそれは、オレンジの閃光。


「――『世界より一歩先へビヨンド・ザ・ワールド』!」

「貴様の矮小な魔法など、わたしの前では――!」


 ドゥドゥドゥドゥン――――♪


 世界は静止する。そして魔人は悠々と目押しを成功させ、こちらは失敗するはずだった……


 だが俺の魔法はそれを超え、静止した時の中をぶち破る。

 眼前のリールは緩慢に、スローの流れに移り変わり魔人がボタンを押すよりも速く、左、右リールを止め、そして――


「これが俺のビタ押しだぁぁぁぁぁぁぁ」


 中リール枠下に「青7」が停止する。と同時に、魔人もビタ押しに成功。出遅れたが、これでビタ押しは問題ない。


「静止した時に介入しただと……⁉」

「はっ、静止した時なんて関係ないな。お前よりも早く動いてやるよ!」


 世界に刻まれる時よりも、一歩先へ。

 第2の魔法、展開。


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