Round 20 転落確率の方が低いのに当たるんだよね……
とはいえ、今の聖女(男)に勝つには何かしらでお祈りパワーを止めてもらうしかない。
現れた先読み保留は白いレバブルを引き連れてバトルリーチへ発展、聖女と同様にシスターが現れた。
「よしっ、しっ! これは当つる!」
「さぁ刹那さん、祈るのです」
「イケボで言うんじゃねぇ!」
そしてラー◯ム。
スロットで溜まっていた鬱憤がレバーの振動で消えていく。虹色の光とこの刺激こそ、俺の中の神。投資3000円で当てさせてくれる神に感謝。
◯はやーい
◯お見事!
◯通常と予想
低投資の当たりは大抵通常当たりなんてことが多いけど…………
「ラー◯ム!」
難なく確変に突入。燃え盛る炎のようにグラフも伸びてほしい。しかし思い出してほしい、現在この台は迷惑な魔女(男)の魔法によって大当たり確率と転落確率が逆転している。
「……………………」
1/2.0を引く前に1/5.3を引け…………
いや〜…………無理ゲーでは? ただでさえ普通の大当たり確率をすり抜けて転落が来るんだぜ?
なんで1/2よりも1/5が来るんだってな!
「怖気付いてはいけません。神は全て見ています」
そう言いながら、聖女は早めの確変2回目に突入しやがった。ちなみに魔女は未だ通常時である。
「誰がビビるかよ」
「その意気です刹那」
「お前はどうした、早く当てろよ」
「ふっ……」
魔女は意味深な微笑みと共に、貸玉ボタンをプッシュした。いちいちイケメンなのが腹立たしい。
「ええぃ、考えても仕方ねぇ!」
ハンドルをギュッと捻って銀玉を打ち出す。どうせ1/10もないのだ、さっさと打った方がいい!
すると覚悟に応えるように、レバーが虹色に煌めく。
────フィーバァー!
言わずもがな、Vフラッシュである。この時点で次回継続、4500発以上の大当たり確定濃厚だ!
「んほぉ〜」
◯やりやがったッ!
◯1/5通した〜
◯転落の方が来やすいってあるよなー
1撃4500発あざす…………!
くぅ〜、スロットで大して勝てなかった分ドーパミンがドバドバ出るぜぇ〜!
「いかに奈落へ落ちやすかろうと、細い希望の道筋はあります。祈り辿れば、慈悲は訪れます」
転落確率なんのその、聖女も4500発大炎上。一度点いた火は、燃え上がるのみだ!
「燃え尽きろォッ──!」
祈りなど、魔法など必要なし。
確率など、己のヒキでどうとでもなる。
グラフは爆炎の如く盛り上がる。魔女を挟んだ2台の炎上は、天翔る龍が如く…………
…………2台?
◇ ◇ ◇
「うっし、結果発表ぉっ!」
「此度も良い試練でした」
◯おつー
◯すげぇラッシュだったな
◯グラフが◯起してたぞ
ようやく魔法の効力が切れて、魔女も聖女も女の姿に戻った。まぁ聖女の方は相変わらず後光が差してんだけど。
一撃の確変を終え、程よい配信時間となったので締めの時間。みんな大好き収支報告である。約1人を除いて。
「………………ぁぁ」
火すら点かず、燃えることなく、されど灰のように真っ白な魔女が白目を向いて立っていた。
「えっと、とりあえず俺が33000発で」
「わたくしが31500発です。神は簡単に勝利を与えてくれませんね」
個人の収支なら大勝利だろうがッ!
「あとは…………そこの灰人が0発」
なんとノーヒット。チャージすら当たらずノーマネーでフィニッシュです。
◯シルバの負け久々じゃね?
◯途中男なのにシルバの負けなん?
◯そういう設定なんじゃねーの?
「入れ替わった私がヒキ弱だったとは…………」
「知らんがな」
研究途中の魔法なんて使うからだ。おかげでこっちは儲かったけど。結局魔女だけ聖女に負けてしまったわけだ。
「では、敗北者には神の慈悲を与えましょう」
「ぁ――――――」
「え、うわっ⁉」
聖女の後光が周囲を照らし、魔女を包み込んでいく。例の如く眩しい光は、配信などお構いなしに視界をホワイトアウトさせた。
〇フラッシュは予告しろ!
〇終わったら教えて
〇不意打ちだぁっ
ひとしきりの閃光が終わると、目の前にいたのは修道服を身に纏った銀髪の魔女だった。
「信者のできあがりです」
「えぇ………………」
死んだ魚のような目はどこへやら、キラッキラに輝く瞳で聖女と同じようにシルバは祈りの構えを見せた。
「祈れば救われる、刹那も祈りましょう!」
「噓でしょ……」




