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異世界の魔女、現代でパチンカスになる  作者: ムタムッタ
神(パチ)よ、聖女を救いたまえ

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207/237

休憩 異世界教団パチ化計画


 外食の焼肉と家の焼肉は別物……なんて、誰かが言った気がする。炭火で焼いてないからとか、ホットプレートだからとか色々理由はあるが、何だったか…………


 目の前の鉄板で焼かれる肉の焼ける音が脳を刺激する。例えるならVフラッシュの電子音くらい。


 そして卓を囲むは俺と魔女ともうひとり。


「さぁ祈りましょう、すべての食材に」

「…………なんで普通にいるの?」

「祈りには魔力が伴います。長時間の祈りとはすなわち、魔法展開と同義」

「要するに?」

「空腹です」

「まぁまぁ、聖女として振る舞ったとしても元は彼女のままなのですから」


 目の前ではこんがり焼かれた肉を魔女が聖女の皿へ載せていく。今日の奉行は魔女らしい。


「それに、この肉はすべて聖女の奢りですよ」

「それはありがたいんだけどさぁ、その後光調整できねぇの?」

「わたくしから溢れる魔力のようなものですので……」


 どっかにボタンはないものか……眩しくて仕方ない。

 それはともかく普段食う肉より、幾分美味い気がする。勝負こそ負けてしまったが、奢りで肉が食えるのであれば実質勝ちみたいなもんだ。


「わはひょうはんひひふほーは…………」

「食ってから話せよ……」

「…………我が教団に必要なモノがわかりました。2人には感謝しています」

「教団?」

「聖女が務める教会組織です」


 それ以上聞くまい。碌なことにならない。

 スロットの実機を運ぶ教会組織など聞いたことがない。

 

「民を救うべく実践────コホン、邁進していましたがひとつの結論に行き着きました」

「……これ聞かなきゃダメ?」

「聞かないと彼女に全部食べられますよ」

「じゃあ聞く」


 肉を喰らい、酒を飲み、『聖職者とは』と疑問を抱かずにはいられない間に、聖女は続ける。


「信ずる対象が女神様だけでは信仰心には限りがあります。だからパチンコとスロットなのです」

「接続詞が役に立ってねぇぞ」


 脂身の多い肉を聖女の陣地へ誘導しつつ、高い肉を囲もうとするも魔女に阻まれ奪われる。なんと強かな。


「わたくしの言葉を信じて動いても、いずれわたくしがいなくなった時、民は迷うでしょう。神の言葉を受け取ることができる聖女も、そう都合良く現れるわけではありません」

「現聖女がパチ狂いの時点でどうよ?」

「それは置いておきましょう」

  

 置くな! 大事なところだろ。

 

「そこで神の啓示がありました。圧倒的信頼度と共に神託はわたくしに! それはみなパチを神とすれば救われるということ」

「俺か? 俺の理解力が足らないのか?」

「五分五分でしょうか」


 んなわけあるかっ! お前も分かってねぇだろ。いや、こんな話理解したくもないけど!


「ということで刹那さん、教団へ入ってください」

「うぃ〜肉うまし…………あ?」

「やはり信仰を広めるなら詳しい方がいたほうが心強いですし」

「ちょっと待て! なぜそうなる」

「そうです。刹那は我が弟子です」

「あぁそれなら大丈夫。シルバちゃんも我が教団へ入ってください」

「はい?」

「国から言われていたのです。銀髪の魔女も教団へ入れば少しは大人しくなるだろうと。みんな仲良く神を信じましょう、祈りましょう」


 曇りなきまなこで鉄板の上の肉を全て奪い去り、聖女は喰らう。


「わたくしの教団パチ化計画は誰にも止められません。ふふ、ふふふ…………ふふふふふふ!」


 瞳孔開きっぱなしの金色の目が輝きつつ、肉を焼く。暴走した聖女はもう止まらない、止められない。


 ついでに焼肉奉行の権利も聖女に渡ってしまった。もう俺たちの肉もない。


「これもお前の想定内か?」

()が効きすぎてしまいましたね。異世界パチ教団、入信しては?」

「断固拒否!」

「さすが我が弟子。いいでしょう、私も信ずるは私のみ。過ぎた信仰には魔法で対抗するのみです」

「この流れ、もしかして…………」

「えぇ、配信です」

「えぇ…………」


 負ければパチ教団への入信のパチバトル!

 配信を待て!!


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